Review Article
自己免疫疾患とがんにおける代謝の標的化による免疫応答の調節
Nature Reviews Drug Discovery 18, 9 doi: 10.1038/s41573-019-0032-5
代謝プログラム化は、免疫細胞の活性化、分化、機能を改変する重要な機構として認識され始めている。代謝を標的にするということは、免疫系を完全に抑制、あるいは活性化するのではなく、免疫応答を選択的に調節することである。免疫応答に関わる多様な細胞の代謝要件はさまざまであるため、エフェクター機能を調節機能から分離するというまたとない機会がもたらされている。これと同じように細胞を代謝的に再プログラム化して、短期的なエフェクター機能、長期的な記憶能力のいずれかを促進することができる。成長分野である免疫代謝の数々の研究で「要求に基づく細胞選択性(cellular selectivity based on demand)」というパラダイムが支持されている。これは、広範に見られる代謝過程の一般的な阻害剤が、代謝要求の最も高い細胞に選択的に影響を及ぼし、体内の他の細胞にはほとんど影響を与えないというパラダイムである。自己免疫、移植片拒絶、がん、制御不能な炎症などの代謝要求の高い過程で、特定の細胞種やサイトカインではなく、代謝を標的にすることは、こうした複雑な疾患の発症を制御するための有効な戦略につながる可能性がある。