Review Article
次世代幹細胞:細胞療法の新時代の到来を告げる
Nature Reviews Drug Discovery 19, 7 doi: 10.1038/s41573-020-0064-x
ヒトから単離される天然の幹細胞は、何十年にもわたって治療に用いられてきた。幹細胞療法では主に、造血幹細胞と間葉系幹細胞などの初代細胞の移植、さらに最近では、多能性幹細胞に由来する幹細胞の移植が行われてきた。しかし、細胞工学的アプローチの登場が新世代の幹細胞療法の到来を告げており、それらの治療的有用性は大幅に拡大している。こうした次世代幹細胞は、「トロイの木馬」として使用されて難治性腫瘍への薬剤や腫瘍溶解性ウイルスの送達が改善している他、血管新生分子、神経栄養分子、抗炎症性分子を用いて操作されて損傷組織や病的組織の修復を促進している。さらに、遺伝子治療や遺伝子編集技術を使って、対応する天然の幹細胞よりも、機能性、特異性、応答性が向上した幹細胞由来の幹細胞がつくり出されている。本総説では、こうした工学的アプローチ、そしてこれらが幹細胞の有用性および臨床応用の幅を広げるのに役立つであろう領域について概説する。