Review Article

アルツハイマー病の治療薬開発のために前臨床モデルを活用する

Nature Reviews Drug Discovery 19, 7 doi: 10.1038/s41573-020-0065-9

これまでに多数のマウスモデルが作製され、特性解析が行われ、それらのモデルを用いることで、アルツハイマー病(AD)の生物医学研究が前進してきた。初期のマウスモデルは、単に毒性物質や病変によってマウスの脳を損傷したものだった。その後、遺伝子工学技術が普及し、アミロイド前駆体タンパク質(APP)やプレセニリン(PSEN1またはPSEN2)をコードする遺伝子の中で早期発症型ADに関連する変異のあるものを過剰発現させることにより、家族性ADのモデルを開発できるようになった。最近、さらに複雑なマウスモデルが作製され、さまざまな生物学的課題との関連で複数の遺伝的リスク因子の影響を探究することが目指されている。こうしたモデルはいずれも、ヒトの疾患を十分に忠実に再現できてはいないが、ADの生物学的性質の解明を進め、詳細な薬物動態解析と薬力学的解析を行い、臨床の橋渡しにつながる可能性のあるバイオマーカーを発見し、特定の治療薬を評価するために必須のツールであることに変わりはない。新しい技術や知識を利用できるようになった時に動物モデルの持つ可能性を最大限に引き出すためには、最適なモデル活用戦略を構築することが極めて重要である。本論文では、ADマウスモデルの活用における進歩と課題を概説し、新たに登場したモデル開発の科学的革新と取り上げ、治療薬開発を目的とした前臨床モデルの活用のための概念的枠組みを紹介する。

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