Review Article

糖鎖生物学の臨床的影響:セレクチン、シグレックおよび哺乳類のグリカンを標的とする

Nature Reviews Drug Discovery 20, 3 doi: 10.1038/s41573-020-00093-1

ヒトの体内の全ての細胞とほとんどの分泌型タンパク質の表面は、炭水化物(すなわち、グリカン)に覆われている。ゲノミクスの進歩、糖鎖プロテオミクスの進歩、化学生物学のツールの進歩により、糖鎖生物学は、より扱いやすく、理解しやすいものとなった。糖鎖付加の調節不全は、免疫回避から認知に至るまで、さまざまな疾患過程において大きな役割を果たしており、グリカンを標的にして治療効果を上げることを目指した研究が行われるようになっている。この分野は今、医薬品開発のブームを迎えようとしている。この兆しとして、糖鎖生物学によって、ヒトの健康を向上させる薬剤や、臨床へと移されようとしている薬剤など、いくつかの薬剤が生み出されている。本総説は、セレクチン、シグレック、グリカンを標的とする抗体、という3つの領域に焦点を合わせて、グリカンに着想を得た治療法の背景事情を紹介するとともに、こうしたアプローチから得られた教訓が、糖鎖生物学に焦点を合わせた将来の治療法への道をどのように切り開くかについて概説することを目的としている。

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