Review Article
うつ病の治療法開発のための免疫疾患の標的:プレシジョン・メディシンに向けて
Nature Reviews Drug Discovery 21, 3 doi: 10.1038/s41573-021-00368-1
過去20年の間に、免疫機構が大うつ病性障害(MDD)の発生病理に関与し、原発性免疫疾患を標的とする薬剤が抑うつ症状を改善することを示す説得力のある証拠が得られた。MDD患者は、症状、治療応答性と生物学的相関に関して不均一である。生物学に基づいて患者群を狭く定義すると、特定のサブグループの治療応答率が上昇する可能性があり、臨床精神医学における大きな前進となる。例えば、MDD患者と炎症誘発性バイオマーカーの値が高い患者は、従来の抗うつ薬に応答する可能性が低いが、新たな免疫療法には、こうした患者のアンメット・クリニカル・ニーズに対処できる可能性がある。本論文では、MDD患者の新しいサブタイプを標的とする薬剤開発の枠組みを概説し、気分障害に対する神経免疫剤の開発の現状を総説する。そして、うつ病の発生病理における免疫機構の因果的役割の証拠を無作為化比較試験で検討中の数々の標的、神経機構との関連を解明するバイオマーカーの証拠、生物学的な患者選択戦略と表現型による患者選択戦略とMDD患者のアンメット・クリニカル・ニーズにと共に考察する。