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自律的な実験デザインと自動化ラボによる効率的なスマートセル開発

微生物の力を生かして有用な物質を作る「スマートセル」。AIと先端的なバイオテクノロジーを組み合わせることで、産業応用のためのスマートセルの設計・開発を最適化するのが自律型バイオファウンドリーだ。今、バイオモノづくりとして注目されるスマートセルとバイオファウンドリーの研究を紹介する。

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合成生物学の技術を用いて微生物などの生物を人工的に改変したスマートセルは、他の方法では実現が難しい再生可能エネルギーや機能性食品の原料を大量生産するためのツールとして大きな期待が寄せられている。

「医薬品、食品、新素材、環境修復、石油化学製品の代替材料など、さまざまな分野で技術革命を引き起こす可能性があります」と、神戸大学 先端バイオ工学研究センターのセンター長である蓮沼誠久は話す。

しかしながら、バイオファウンドリーにおける「スマートセル」の設計と最適化から、商業規模の産業応用へと移行するためには、信頼性の高いデータ収集・分析・スピードなど、実験デザインプロセスにおいて克服しなければならない大きな課題がある。2016年、蓮沼はこうした課題を解決するために、精密機器メーカーの島津製作所(京都府)の技術者たちと提携を開始した。

蓮沼誠久(左)。神戸大学の自律型実験システム(Autonomous Lab)にて。

「分析装置の安定性と堅牢性は、バイオファウンドリーにおけるスマートセル開発のDesign(代謝設計/遺伝子設計)→Build(宿主構築)→Test(生産性評価/メタボローム解析)→ Learn(実験結果の解析)という『DBTLサイクル』の『テスト』段階において重要です」と、島津製作所の主任研究員である伴野太一は言う。

実験デザインの効率化

微生物などのスマートセルを利用して工業的に重要な化合物を生産するには、遺伝子を微調整して代謝を改変する必要がある。このプロセスは、通常は手間がかかる。このプロセスを自動化して人工知能(AI)の力を取り入れるシステムを考案することは、この技術を商業的に実現可能にするために不可欠なステップだ。

神戸大学の微生物学者たちは、島津製作所と共同で、全てのパラメーターを最適化する自動実験システムを開発した。このシステムは、DBTLサイクルに基づいており、4つのステップそれぞれが自動化されている。「コンピューター上で微生物を設計し、ロボットを使って微生物を作り、さらにロボットを使って微生物の性能をテストするのです」と伴野は話す。「そして最後に、微生物をテストした結果が機械学習へと入力され、これを使ってオリジナルのデザインが改良されることになります」。

これによって、バイオファウンドリーの研究開発を大幅に加速することができる。「コンピューターを使って代謝経路を設計し、生産量を増やす技術を開発しました」と蓮沼は言う。「1回の実験で1000株から2000株の微生物を作り出すことができます」。

島津製作所のDBTL(Design〔代謝設計/遺伝子設計〕→Build〔宿主構築〕→Test〔生産性評価/メタボローム解析〕→ Learn〔実験結果の解析〕)システムを使ってテストを行っている様子。

他の研究グループがDBTLシステムを開発している中で、神戸大学は微生物に長いDNA断片を組み込むことができると蓮沼は指摘する。「これによって、膨大な微生物株のライブラリーをすばやく作成できるのです」。

一方で、島津製作所の強みは最先端の分析システムだ。「このシステムには世界最高クラスの質量分析計が搭載されており、バイオファウンドリー内の微生物を正確に評価することができます」と蓮沼は言う。「微生物の細胞内で酵素が正しく機能しているかどうか、代謝経路が正しく使われているかどうかを評価することは非常に重要です」。

特筆すべきは、液体クロマトグラフィーにロボットが使われていることである。「島津製作所と神戸大学が共同開発した世界初の前処理ロボットは、バイオリアクターから細胞を自動的に取り出して、細胞から代謝物を抽出して質量分析計に送り、解析を行います」と蓮沼は言う。

自動化による実験プロセスの加速

代謝物抽出システムはメタボローム解析と組み合わせることで186の代謝物を同時に分析でき、ハイスループット評価システムは有望なスマートセル候補を迅速に発見できる。これら2つのシステムを組み合わせることで、従来の技術では不可能だった高機能物質の大量生産が、これまでよりもはるかに速い時間スケールで可能になる。

このシステムには、実験の提案から結果の管理までの全てのプロセスが完全に統合されている。島津製作所の技術者たちが開発した専用のプロセス管理アプリは、実験プロセス全体の流れを視覚的に表現して、プロセスのさまざまな段階を、クラウド経由で、直感的かつ簡便な操作で指定することができる。

島津製作所の自律型実験システムのプロトタイプ。

「複雑なプログラミング言語を学ばなくても、実験プロトコルを誰でも簡単に作成して理解することができます」と伴野は言う。使用した容器・装置・試薬・分析手法などの情報を保存し、実験結果とともにデータベースで管理することで、高いトレーサビリティーを実現している。実験に関連する全データは、アプリを使用して解析・閲覧できる。

このシステムは、AIを用いて、過去の実験結果を基に新しい実験条件を提案する。さらに、ビジュアルプログラミングと機能モジュールによって、実験プロトコルを簡単にデザインできる。「質量分析計などの我々のシステムは、レゴブロックを組み立てるように、ビジュアルプログラミングによって簡単に構成することができます」と伴野は言う。「例えば、バイオファウンドリーでさまざまな微生物株を調べたいと思ったら、検査用の装置をすぐに再構成できます」。

こうした特徴的な側面によって、有用な微生物株の開発を大幅に加速する能力を持つ強力なシステムがもたらされた。「我々のDBTLシステムは、世界の他のシステムと比べてもユニークなものです」と蓮沼は言う。「顧客から依頼された組換え微生物の開発に要する時間を大幅に短縮し、微生物を用いた化合物の製造を商業化するための非常に強力なツールとなります」。

自律型実験システムの可能性

スマートセルシステムを使って新しい材料を生み出すことは、応用のほんの一例にすぎない。「ロボット技術、デジタル技術、AI技術などを組み合わせることで、スマートセルを開発する自律型実験システムを開発しました」と伴野。

島津製作所の研究員である池上将弘もその可能性に期待している。「このスマートセル技術をさらに発展させることで、医療や農業などの分野で使われるようになるかもしれません」と言う。「この技術を使うことで、例えば、遺伝子治療に使用するための新しい細胞を培養したり、サプリメントやバイオ燃料、さらにはさまざまな材料を生産したりすることができます」。

過去に成功した共同研究が全てそうであったように、この提携は双方の強みを活かしている。「神戸大学は、さまざまな種類の組換え微生物を作り出すことができるのが強みです。我々は有用な微生物を作る豊富な経験を有しています」と蓮沼。「島津製作所からは、システム開発、自動化、データ管理、データ解析など、優れた分析技術が提供されています。これらを使って微生物を評価しています」。

究極的には、この取り組みは、島津製作所の壮大なビジョンである「ロボットとAIが自律的に科学的な発見をするプラットフォーム」に沿ったものである。島津製作所は、研究者が最初にクラウドサービスを介してプロトコル(実験手順)を入力するシステムを想定している。その後、ロボットが実験を行い、実験結果を研究者に返す。「ロボットやAIが自律的に科学的発見を行う未来のラボビジョンに向けて、研究開発を進めていきたいと考えています」と伴野は語る。

現在、島津製作所・神戸大学のチームは自律型実験システム(Autonomous Lab)のプロトタイプの実用性を検証することに注力しており、スマートセルの開発、さらには早期の社会実装を期待していると伴野は言う。産学の強みを活かしたパートナーシップによって、神戸大学のDBTLサイクルとバイオファウンドリーがユニークなものとなっている。「スマートセルを活用したバイオファウンドリーは、非常に大きな可能性を秘めています」と蓮沼は言う。

バイオファウンドリー開発の詳細については、島津製作所のWEBサイトをご覧ください。

原文:Elevating experimental design through automation

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