環境:長い距離を移動するマイクロプラスチック
Nature Communications
2021年12月22日
フランス南部で検出されたマイクロプラスチックについて、発生源から大陸や海洋を越えて4500キロメートル以上輸送されてきたものである可能性を示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究によって得られた知見は、マイクロプラスチック汚染が発生源から遠く離れた地域へと世界中に広がる可能性があることを示唆している。
プラスチック汚染は、高地や高緯度域を始め、プラスチックがほとんど使用されていない地域においても報告されている。大気中のマイクロプラスチックの輸送が地域規模で起こっているとする学説が提起されているが、この現象が、どの程度広がっているのか、マイクロプラスチックも水銀や他の汚染物質のように、制約を受けずに大気中を輸送され、大陸横断も可能になっているのかどうかは分かっていない。
今回、Steve Allenたちの研究チームは、フランス南部のフランス領ピレネーの高地にあるピクデュミディ天文台で、マイクロプラスチック粒子の発生源と経路と考えられるものを理解するため、大気中のマイクロプラスチックを収集し、大気輸送モデル化を行った。その結果、マイクロプラスチック粒子を含んだ複数の気団が、ピクデュミディ天文台に到達する前の1週間に平均約4550キロメートル移動したことが判明し、主に西方から大西洋を越えて到達し、南方から地中海を超えて到達したと推定された。Allenたちは、マイクロプラスチックの発生源として、北米、西ヨーロッパ、北アフリカが考えられるとし、これは、自由対流圏(雲の上の大気層)で大陸や海洋を横断するマイクロプラスチックの輸送が起こっていることを示している。
以上の知見は、プラスチックがほとんど使用されていない地域が、遠くに位置するマイクロプラスチック発生源の地域の影響を受ける可能性があることを示唆している。
doi:10.1038/s41467-021-27454-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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