Nature Catalysis に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。
A spatially orthogonal hierarchically porous acid–base catalyst for cascade and antagonistic reactions
doi: 10.1038/s41929-020-00526-5
同じ材料内で異なる触媒機能を空間的に分離することは、カスケード反応や拮抗反応にかなり有望であるが、いまだ困難である。本論文では、硫酸化ジルコニアと酸化マグネシウムが空間的に隔てられていることを特徴とする高効率階層多孔性シリカ触媒で、このアプローチの実現に成功したことが報告されている。
Chiral paddle-wheel diruthenium complexes for asymmetric catalysis
doi: 10.1038/s41929-020-00513-w
キラル触媒の開発は、不斉触媒反応において根本的に重要である。本論文では、酸化条件下で安定であり、不斉C–CおよびC–N結合形成反応に効果的であり、最高1,880,000の回転数を示すキラル外輪型二核ルテニウム錯体が報告されている。
Structure dependency of the atomic-scale mechanisms of platinum electro-oxidation and dissolution
doi: 10.1038/s41929-020-0497-y
表面酸化による白金の溶解と再構造化は、白金系電極触媒の主要劣化機構である。本論文では、(111)単結晶上と(100)単結晶上の白金原子の酸化抽出機構に明確な違いがあることが報告されており、(100)単結晶表面における溶解促進が詳細に説明されている。
19F- and 18F-arene deoxyfluorination via organic photoredox-catalysed polarity-reversed nucleophilic aromatic substitution
doi: 10.1038/s41929-020-0495-0
芳香族分子にフッ素(19F)やその放射性同位体(18F)をサイト選択的に導入することで高価値生成物が得られる可能性があるが、そのための方法に制約がないわけではない。本論文では、光化学を用いて従来のアプローチを補完する19F-および18F-標識化戦略が報告されている。
Plasmon-driven carbon–fluorine (C(sp3)–F) bond activation with mechanistic insights into hot-carrier-mediated pathways
doi: 10.1038/s41929-020-0466-5
脱フッ素水素化によるC–F結合の開裂は困難であり、以前から不飽和フルオロカーボンに限られていた。本論文では、アルミニウムナノ結晶担持パラジウムナノ粒子の使用に基づくプラズモン技術による単純な手法を導入して、可視光の下で効果的にフルオロメタンをアップグレード化している。
Heterochiral coupling in non-ribosomal peptide macrolactamization
doi: 10.1038/s41929-020-0456-7
ペニシリン結合タンパク質型チオエステラーゼは、最近発見されたトランス作用性酵素であり、非リボソームペプチド生合成時にマクロ環を構築する。本論文では、その合成能が調べられており、タンパク質結晶構造から、その特異な立体化学的要求に関する知見が得られている。
Electrocatalytic reduction of CO2 to ethylene and ethanol through hydrogen-assisted C–C coupling over fluorine-modified copper
doi: 10.1038/s41929-020-0450-0
CO2の電極触媒還元による多炭素(C2+)生成物の生成は、非常に魅力的なCO2活用方法である。本論文では、フッ素で修飾した銅触媒を用いることで、フローセルにおけるCO2電極触媒還元について1.6 A cm−2の電流密度と80% のC2+ファラデー効率が達成されたことが示されている。
Real-time fluorescence imaging of a heterogeneously catalysed Suzuki–Miyaura reaction
doi: 10.1038/s41929-020-0442-0
不均一触媒による鈴木クロスカップリングは金属の浸出によって均一に起こりうるのかどうかが、長年議論の的になっている。本論文では、ナノ粒子触媒のパラジウムは反応中に移動するが、活性サイトは本質的に不均一のままであることが示されている。
Synergistic catalysis in an artificial enzyme by simultaneous action of two abiological catalytic sites
doi: 10.1038/s41929-019-0420-6
非生物的学的触媒成分は、酵素の潜在的合成能力を高める可能性がある。本論文では、相乗的に作用して高エナンチオ選択的マイケル付加反応を達成する2つの異なる非生物学的触媒部分(有機触媒的非天然型アミノ酸と金属錯体)を持つ酵素が報告されている。
Organocatalytic nitrogen transfer to unactivated olefins via transient oxaziridines
doi: 10.1038/s41929-020-0430-4
活性化されていないオレフィンを有機触媒的にアジリジン化する方法は非常に数少ない。本論文では、優れた基質範囲と高い収率で孤立炭素–炭素二重結合に窒素を移動させる単純なケトン触媒が報告されている。
Photocatalytic uphill conversion of natural gas beyond the limitation of thermal reaction systems
doi: 10.1038/s41929-019-0419-z
メタンの触媒的ドライリフォーミングは、将来性があるにもかかわらず、熱エネルギーを多く必要とするため、まだ実用化に至っていない。本論文では、光照射のみでシンガスを生成できるチタン酸ストロンチウム担持ロジウムナノ粒子を用いた光触媒的方法が提示されている。
Multidimensional engineering of Saccharomyces cerevisiae for efficient synthesis of medium-chain fatty acids
doi: 10.1038/s41929-019-0409-1
中鎖脂肪酸(MCFA; C6–C12)は油脂化学産業やバイオ燃料産業において有用な分子であるが、MCFAには細胞毒性があるため、微生物によるMCFAの高効率生産は困難である。本論文では、酵母を複数レベルで系統的に操作することによって、細胞外MCFAの生産量を1 g l−1を超えるまでに増大させている。
Carbon monoxide electroreduction as an emerging platform for carbon utilization
doi: 10.1038/s41929-019-0388-2
電気化学的手法によって一酸化炭素を高速かつ選択的に多炭素生成物に変換できるため、CO2を付加価値化学品に変換する二段階経路の可能性が高まっている。本Perspectiveでは、この分野の最近の進歩に光を当てるとともに、二段階変換過程の技術経済的分析と、原料入手から製品出荷までのライフサイクル評価を行っている。
Practical synthesis of C1 deuterated aldehydes enabled by NHC catalysis
doi: 10.1038/s41929-019-0370-z
重水素化された分子は、標識プローブとして重要であるほか、それ自体が標的として重要である。本論文では、D2Oの存在下でN-ヘテロ環カルベン触媒を用いることによる、非常に簡便かつ一般的なアルデヒド重水素化が報告されている。
Molecular nitrogen promotes catalytic hydrodeoxygenation
doi: 10.1038/s41929-019-0368-6
窒素は安定なので、触媒反応中に不活性ガスとして用いられることが多い。本論文では、プロトン性水素源として働く水素化窒素種の形成を通して、N2が、担持ルテニウム触媒上におけるp-クレゾールの触媒的水素化脱酸素反応の促進剤として機能し得ることが示されている。
Development of heterogeneous catalyst systems for the continuous synthesis of chiral amines via asymmetric hydrogenation
doi: 10.1038/s41929-019-0371-y
キラルアミンの合成は、医薬品産業に極めて重要であるが、依然として難しい課題であり、効率が低いことが多い。本論文では、連続フローにおける高収率かつエナンチオ選択的なイミンの不斉水素化とカルボニル化合物の還元的不斉アミノ化のために、不均一系イリジウム錯体が開発されている。
Iridium-catalysed enantioselective formal deoxygenation of racemic alcohols via asymmetric hydrogenation
doi: 10.1038/s41929-019-0375-7
アルケンの不斉水素化は、光学活性化合物を合成する一般的な手法である。しかし、アルケン合成は、原子効率が低いことが多く、異性体の形成によって手順がさらに複雑化する。本論文では、Ir触媒を用いるラセミアルコールの脱酸素化が、エナンチオリッチな生成物を得る単純な手法であることが示されている。
Direct catalytic transformation of white phosphorus into arylphosphines and phosphonium salts
doi: 10.1038/s41929-019-0378-4
単体リンからの有機リン化合物の合成は、複数ステップ、化学量論量の金属錯体、有害試薬(塩素ガスなど)を用いる非効率的な過程である。本論文では、光触媒を用いて白リン(P4)をホスフィンとホスホニウム塩に直接変換する方法が報告されている。
A silver catalyst activated by stacking faults for the hydrogen evolution reaction
doi: 10.1038/s41929-019-0365-9
水の電気分解装置の大規模応用を実現するには、最適なカソード触媒とアノード触媒を見いだす必要がある。本論文では、高密度の積層欠陥を持つよう加工された銀触媒が、水素生成反応において、市販の炭素担持白金を上回る高い活性と安定性を示すことが報告されている。
Deciphering the enzymatic mechanism of sugar ring contraction in UDP-apiose biosynthesis
doi: 10.1038/s41929-019-0382-8
D-アピオースは、植物の細胞壁多糖に含まれる重要な糖である。本論文では、酵素の結晶構造とコンピューターによる解析を利用して、D-アピオースの複雑な多段階生合成経路を解明している。
Constraining CO coverage on copper promotes high-efficiency ethylene electroproduction
doi: 10.1038/s41929-019-0380-x
COの電極触媒的アップグレーディングによる、より価値の高い工業用原料の生成は、多炭素生成物を合成する有望な手段である。本論文では、銅表面のCOの可用性を抑制することによって高いエチレン選択性を達成でき、エチレンのファラデー効率が72%になり、部分電流密度が800 mA cm−2を超えることが示されている。
Control of metal-support interactions in heterogeneous catalysts to enhance activity and selectivity
doi: 10.1038/s41929-019-0364-x
不均一系触媒の性能を制御する方法は、工業プロセスの成功に極めて大きな関連がある。本Reviewでは、金属-担体相互作用がさまざまな触媒系の反応性に及ぼす影響が合理的に説明されており、そうした影響を調整する戦略が強調されている。
Strategies to break linear scaling relationships
doi: 10.1038/s41929-019-0376-6
特定の反応ネットワークにおける種のエネルギーは、線形スケーリング関係によって関連付けられるため、活性と選択性の高い触媒の設計が制限されている。本Perspectiveでは、LópezとPérez-Ramírezがそうしたスケーリング関係を回避する戦略について検討している。
Non-proteinaceous hydrolase comprised of a phenylalanine metallo-supramolecular amyloid-like structure
doi: 10.1038/s41929-019-0348-x
単純な酵素模倣体は、高い触媒安定性と低い生産コストをもたらし、工業環境向けに非常に望ましい。本論文では、フェニルアラニンと亜鉛イオンの自己集合によって形成された超分子構造体が、炭酸脱水酵素という天然酵素に似た触媒特性を示すことが報告されている。
Operando monitoring of temperature and active species at the single catalyst particle level
doi: 10.1038/s41929-019-0352-1
反応のさまざまな特徴をin situで同時に評価する多モードアプローチの実現は、容易ではない。本論文では、発光温度計測機能とラマン分光機能を備えた押出し成形触媒を導入して、担持ロジウム触媒上の合成ガス変換に関する詳細な描像を得ている。
Tetrasubstituted allenes via the palladium-catalysed kinetic resolution of propargylic alcohols using a supporting ligand
doi: 10.1038/s41929-019-0346-z
四置換アレンの不斉合成方法は少なく、対象範囲が限られている。本論文では、容易に得られるプロパギルアルコールから四置換アレンを合成する触媒的不斉プロセスと、アキラルな支持配位子の潜在的な役割が報告されている。
Engineered enzymes that retain and regenerate their cofactors enable continuous-flow biocatalysis
doi: 10.1038/s41929-019-0353-0
連続フロー生体触媒反応における重要な課題の1つは、高価な補因子の損失に取り組むことである。本論文では、リサイクルモジュールと触媒反応モジュールの間に補因子がつながれた構造の固定化酵素が報告されている。今回の生体触媒フローシステムでは、NAD+とATPの総回転数が向上し、10,000を超えている。
Photocatalytic regio- and stereoselective C(sp3)–H functionalization of benzylic and allylic hydrocarbons as well as unactivated alkanes
doi: 10.1038/s41929-019-0357-9
アルカンなどの炭化水素におけるC(sp3)–H結合の選択的官能基化は難しく、エナンチオ選択的反応は特に困難である。本論文では、イミンへのアルキル基、アリル基、ベンジル基の不斉ラジカル付加を可能にする光触媒とキラル金属触媒が報告されている。
The active sites of a working Fischer–Tropsch catalyst revealed by operando scanning tunnelling microscopy
doi: 10.1038/s41929-019-0360-1
反応中の触媒を可視化することは、重要な実験的課題である。本論文では、コバルト触媒によるフィッシャー・トロプシュ合成のオペランド走査型トンネル顕微鏡研究が報告され、現実的な条件下での活性とステップ密度を相関付けることによってこのプロセスの活性部位がステップであることが確認されている。
A high-energy-density and long-life lithium-ion battery via reversible oxide–peroxide conversion
doi: 10.1038/s41929-019-0362-z
Li-O2電池は、高い理論重量エネルギー密度を示すが、オープンセル構造に起因する一連の課題がある。今回Zhouたちは、イリジウム–グラフェン触媒ホストにLi2Oナノ粒子を事前に組み込むことによって、可逆的Li2O/Li2O2相互変換を密閉セル内に閉じ込めている。
Unexpected enzyme-catalysed [4+2] cycloaddition and rearrangement in polyether antibiotic biosynthesis
doi: 10.1038/s41929-019-0351-2
本論文では、ポリエーテル系テトロナシンの生合成において、酵素触媒による見かけの逆電子要請型ヘテロ・ディールス・アルダー反応が起こり、予想外のオキサデカリン中間体が形成されることが示されている。次に、別の酵素によってオキサデカリンの転位が起こり、4環性テトロナシンが形成される。
The emergence of Pd-mediated reversible oxidative addition in cross coupling, carbohalogenation and carbonylation reactions
doi: 10.1038/s41929-019-0361-0
炭素–ハロゲン化物結合へのPdの酸化的付加は、本質的に不可逆的とみなされることが多いが、これが当てはまらない場合もある。本Perspectiveでは、炭素–ハロゲン化物結合からのPdの還元的脱離につながる条件を調べ、これがもたらす合成機会を検討している。
Transition state and product diffusion control by polymer–nanocrystal hybrid catalysts
doi: 10.1038/s41929-019-0322-7
封入は、金属触媒反応を調節する効果的な戦略であるが、その可能性は十分に調べられていない。本論文では、基準反応としてCO酸化を用いて、さまざまなポリマーに封入されたPdナノ結晶の反応性に関する設計原理と理解の向上が報告されている。
Cancer-derived exosomes loaded with ultrathin palladium nanosheets for targeted bioorthogonal catalysis
doi: 10.1038/s41929-019-0333-4
標的療法は、医薬品の副作用を減らす重要な方法である。本論文では、がん細胞を選択的に標的化するエクソソームの中で触媒活性Pdナノ構造体を合成し、バイオオルソゴナル化学を用いて薬物を活性化したことを報告している。
Tuning of catalytic sites in Pt/TiO2 catalysts for the chemoselective hydrogenation of 3-nitrostyrene
doi: 10.1038/s41929-019-0334-3
触媒合成のわずかな変化が活性に大きな影響を及ぼす可能性があるが、そうした影響はよくわかっていないことが多い。本論文では、合成後の熱処理の変化と金属担持量の変化を組み合わせることで、最高効率の触媒を得る方法や最も可能性の高い活性部位を特定する方法が示されている。
Regiodivergent enantioselective C–H functionalization of Boc-1,3-oxazinanes for the synthesis of β2- and β3-amino acids
doi: 10.1038/s41929-019-0336-1
本論文では、Boc-1,3-オキサジンアンのエナンチオ選択的リチオ化が報告されている。亜鉛へとトランスメタル化させると、配位子制御された根岸カップリングを経てC4位またはC5位における位置発散的官能基化が可能になり、その後の酸化的開裂によってβ2-アミノ酸やβ3-アミノ酸が容易に得られる。
Cu2O nanocubes with mixed oxidation-state facets for (photo)catalytic hydrogenation of carbon dioxide
doi: 10.1038/s41929-019-0338-z
Cu2Oは有望な光触媒であるが、CuとCuOが形成される不均化反応によって安定性が損なわれる。本論文では、光触媒的逆水性ガスシフト反応のために、Cu2Oナノキューブを安定化させて活性と安定性を高める方法が報告されている。
Tunable catalyst-controlled syntheses of β- and γ-amino alcohols enabled by silver-catalysed nitrene transfer
doi: 10.1038/s41929-019-0339-y
C–H官能基化における大きな課題の1つは、同等の反応性を有する複数の結合が存在する場合に選択性を実現することである。本論文では、異なる銀触媒を利用して立体的・電子的に類似したβ-またはγ-C–H結合を選択的にアミド化する方法が報告され、有用な1,2-および1,3-アミノアルコールが得られている。
Chiral synthesis of LSD1 inhibitor GSK2879552 enabled by directed evolution of an imine reductase
doi: 10.1038/s41929-019-0341-4
イミン還元酵素は、製薬業界では最も有望な酵素の1つとみなされているが、工業規模ではまだ応用されていない。本論文では、指向性進化によってイミン還元酵素の工業規模の応用に成功したことが報告されている。
Carboxyl intermediate formation via an in situ-generated metastable active site during water-gas shift catalysis
doi: 10.1038/s41929-019-0343-2
水性ガスシフト反応は、重要性であるため、多くの研究の対象となっている。しかし、統一的な機構概念はまだ得られていない。今回、分光法、速度論的方法、コンピューターによる方法を組み合わせることによって、この数百年前から存在する過程ではカルボキシル中間体が重要な役割を果たしていることが明らかになっている。
Atroposelective synthesis of tetra-ortho-substituted biaryls by catalyst-controlled non-canonical polyketide cyclizations
doi: 10.1038/s41929-019-0345-0
アトロプ異性体ビアリールは、配位子や触媒として有用であるため、そのエナンチオ選択的合成が非常に望まれている。本論文では、有機触媒的ポリケチド環化によって、ポリ-β-カルボニル化合物が優れたエナンチオ選択性でビナフタレン誘導体に変換されることが示されている。
Efficient reductive desymmetrization of bulky 1,3-cyclodiketones enabled by structure-guided directed evolution of a carbonyl reductase
doi: 10.1038/s41929-019-0347-y
2,2-二置換シクロジケトンの還元的非対称化によって、複数のキラル中心を持つ有用な複雑分子が得られる可能性があるが、単一の立体異性体の生成は困難である。本論文では、カルボニル還元酵素の活性と立体選択性を改変することによってこの合成課題に取り組んでいる。
Ultrahigh-throughput screening enables efficient single-round oxidase remodelling
doi: 10.1038/s41929-019-0340-5
指向性進化法は、一般的に大がかりなスクリーニングを必要とする。本論文では、共役反応と蛍光活性化液滴ソーティングに基づく超高スループット・マイクロ流体アッセイによって、非天然基質についてシングルラウンドでアミンオキシダーゼの960倍の活性向上が可能になることが報告されている。
Catalyst deactivation via decomposition into single atoms and the role of metal loading
doi: 10.1038/s41929-019-0328-1
オストヴァルト熟成や粒子の移動と合体などの従来の触媒失活モードは、最終的には、焼結や粒子成長につながる。今回Cargnelloたちは、Pdコロイドナノ粒子上でのメタン燃焼時の重要な失活機構として、担持量に依存する単一原子への粒子分解を確認している。
α-Branched amines by catalytic 1,1-addition of C–H bonds and aminating agents to terminal alkenes
doi: 10.1038/s41929-019-0330-7
α-分岐アミンは 、医薬品によく見られる。本論文では、1,1-アルケン付加経路と容易に入手できる3つの出発物質の利用を通して、単一触媒サイクルで、sp3炭素枝分かれ部位においてC–C結合とC–N結合を同時に形成することによってα-分岐アミンを合成できることが報告されている。
Iron-facilitated dynamic active-site generation on spinel CoAl2O4 with self-termination of surface reconstruction for water oxidation
doi: 10.1038/s41929-019-0325-4
酸素生成反応用の効率が高く安価な電極触媒の開発は、水の電気分解の効率を向上するのに不可欠である。本論文では、鉄置換によって不活性なスピネル型CoAl2O4が活性化され、水の酸化について高い活性と安定性が実現されている。
Rational design of selective metal catalysts for alcohol amination with ammonia
doi: 10.1038/s41929-019-0327-2
アンモニアによるアルコールの直接アミノ化は、現代的でクリーンなアミン合成経路である。今回、理論と実験を組み合わせた研究によって、金属表面で第一級アミンに対する活性と選択性を支配する主要な要因が明らかになり、次にこれを利用してバイメタリック触媒が合理的に設計されている。
Biocompatibility and therapeutic potential of glycosylated albumin artificial metalloenzymes
doi: 10.1038/s41929-019-0317-4
生体適合性は、治療用の人工金属酵素(ArM)の開発に重要な役割を担っている。本論文では、ルテニウム触媒を導入したArMが生理学的グルタチオンから保護されるとともに、がん細胞株に蓄積され、メタセシスを介してプロドラッグを活性化することが報告されている。
Palladium-catalysed C−H glycosylation for synthesis of C-aryl glycosides
doi: 10.1038/s41929-019-0324-5
C-アリールグリコシドは多くの天然物に存在しており、薬物設計において興味深いが、その化学合成は困難である。本論文では、パラジウム触媒を用いる塩化グリコシルによるアレーンとヘテロアレーンの高効率ジアステレオ選択的オルト指向性C−Hグリコシル化が報告されている。
Selectivity control of CO versus HCOO− production in the visible-light-driven catalytic reduction of CO2 with two cooperative metal sites
doi: 10.1038/s41929-019-0331-6
分子触媒を用いて光触媒的CO2還元を選択的に行うことは、かなりの難題である。本論文では、反応媒質の酸性度を選択することによって一酸化炭素かホルメートのいずれかを選択的に生成できる、ビクアテルピリジン配位子を特徴とする二核コバルト錯体が開発されている。
Elucidating structure–performance relationships in whole-cell cooperative enzyme catalysis
doi: 10.1038/s41929-019-0321-8
酵素集合体のセルロース分解活性を利用する取り組みは、定量化手段が欠けていたため、主に経験的なものであった。本論文では、酵素集合体を定量化する実験的方法と理論的方法が報告され、セルロース分解活性に重要なパラメーターが明らかになっている。
Selecting between two transition states by which water oxidation intermediates decay on an oxide surface
doi: 10.1038/s41929-019-0332-5
電極表面での反応機構の解明は、極めて重要である。今回Cukたちは、標準的な遷移状態理論を用いて、n-SrTiO3表面における水の酸化反応の電荷捕捉中間体が次の反応ステップに向けて崩壊する競争的経路を示している。
Designing materials for electrochemical carbon dioxide recycling
doi: 10.1038/s41929-019-0306-7
電気化学的二酸化炭素還元は、再生可能エネルギーを用いて燃料や化学工業原料を得る魅力的な方法である。本Reviewでは、これまでの進展を説明するとともに、機構的な疑問や性能指標を特定し、活性と選択性を向上させるための設計原理が論じられている。
First-principles-based multiscale modelling of heterogeneous catalysis
doi: 10.1038/s41929-019-0298-3
第一原理に基づくマルチスケールモデルによって、機構的知見が得られ、大きな材料空間のスクリーニングによる有望な新触媒の発見が可能になる。本ReviewにおいてReuterたちは、既存の方法の方法論的基盤について論じるとともに、この分野における成功例と現在進められている開発例にスポットを当てている。
Dynamic coordination of cations and catalytic selectivity on zinc–chromium oxide alloys during syngas conversion
doi: 10.1038/s41929-019-0293-8
金属酸化物合金は重要な工業用触媒であるが、その構造と活性の関係はよくわかっていない。本論文では、計算ツールと機械学習法を組み合わせて用いた研究によって、合成ガス変換時における亜鉛–クロム酸化物の活性と選択性を明らかにしている。
A multicomponent synthesis of stereodefined olefins via nickel catalysis and single electron/triplet energy transfer
doi: 10.1038/s41929-019-0311-x
立体構造の明確なアルケンの合成は困難であり、置換基の立体的偏りに頼ることが多い。本論文では、光酸化還元/ニッケル触媒を用いるアルキンの二官能基化によって、使用した光触媒に応じてE-三置換アルケンまたはZ-三置換アルケンが得られることが報告されている。
Identification of active sites for acidic oxygen reduction on carbon catalysts with and without nitrogen doping
doi: 10.1038/s41929-019-0297-4
酸素還元反応の金属フリー炭素触媒の活性部位は、まだはっきりわかっていない。今回YaoとDaiたちは、高配向熱分解グラファイト上で仕事関数解析とマクロ/マイクロ電気化学的測定を組み合わせて行い、酸性下での酸素還元反応の主な活性部位は五員環欠陥であると結論付けている。
S-adenosylhomocysteine as a methyl transfer catalyst in biocatalytic methylation reactions
doi: 10.1038/s41929-019-0300-0
in vitro酵素反応における高価なS-アデノシルメチオニン(SAM)の再生は、困難ではあるが、SAM依存性酵素の商業的機会を開くために重要である。本論文では、さまざまな基質の酵素的メチル化に向けた、単純な二酵素カスケードによるSAMのin vitro再生が報告されている。
Electrochemically converting carbon monoxide to liquid fuels by directing selectivity with electrode surface area
doi: 10.1038/s41929-019-0301-z
電極の粗さ係数は、総生成速度を増大させるために一般的に利用されるが、選択性向上の手段として用いられることはまれである。今回JaramilloとHahnたちは、ナノ構造Cu電極の粗さ係数を増大させることによって、低過電圧において、CO還元の選択性を多炭素酸素化物に向けて誘導している。
Cooperative copper centres in a metal–organic framework for selective conversion of CO2 to ethanol
doi: 10.1038/s41929-019-0308-5
CO2の水素化によるエタノール合成は、難しいプロセスであり、選択性が低いためうまく進行しないことが多い。本論文では、Zr12クラスター系金属有機構造体が協働的Cu(I)部位の担体となり、セシウムによる助触媒機能を付与すると、CO2水素化によるエタノール合成をこのCu(I)部位が優れた選択性で触媒することが報告されている。クレジット: 雲の背景画像、CC0 1.0 全世界パブリック・ドメイン提供。
Highly active enzyme–metal nanohybrids synthesized in protein–polymer conjugates
doi: 10.1038/s41929-019-0305-8
酵素触媒と不均一系触媒を組み合わせることは、反応の必要条件が異なるため困難である。本論文では、高活性酵素–金属ナノハイブリッドを周囲条件でin situ合成するナノ反応器として、単一のタンパク質–ポリマーナノ複合体を構築する方法が提示されている。
Probing the transition state in enzyme catalysis by high-pressure NMR dynamics
doi: 10.1038/s41929-019-0307-6
タンパク質運動の遷移状態アンサンブルは、一過性であるため、実験的に観察できなかった。本研究では、高圧NMRと分子動力学シミュレーションによって、触媒反応中のアデニル酸キナーゼの律速構造遷移に関する原子論的知見が得られている。
Progress and outlook for solid oxide fuel cells for transportation applications
doi: 10.1038/s41929-019-0310-y
固体酸化物燃料電池は、交通輸送分野を脱炭素化する有望な技術とみなされている。本Perspectiveでは、この分野の最近の進展について述べるとともに、この技術の実用化を有利にするためにまだ開発が必要な重要要素を特定している。
Achievements, challenges and perspectives on cathode catalysts in proton exchange membrane fuel cells for transportation
doi: 10.1038/s41929-019-0304-9
プロトン交換膜燃料電池は、電気自動車にクリーン電力を効率よく供給できるが、さらに効率がよく経済的なカソード触媒が依然として求められている。本Reviewは、Pt族金属(PGM)とPGMフリーの酸素還元触媒に関する最近の飛躍的進歩、課題、今後の研究の方向性に光を当てている。
Towards dense single-atom catalysts for future automotive applications
doi: 10.1038/s41929-019-0282-y
CO酸化は自動車用触媒反応において重要な反応であり、1970年代から広く研究されている。本Reviewでは、東相吾と紅谷篤史が、特に単原子触媒反応と数原子クラスター触媒反応のCO酸化経路に重点を置いて、最先端の触媒の開発について検討している。
Gasoline automobile catalysis and its historical journey to cleaner air
doi: 10.1038/s41929-019-0312-9
触媒技術は、変化する環境規制に沿った自動車排ガス処理を長年にわたって可能にしており、交通輸送分野に不可欠な技術になっている。本reviewでは、自動車用触媒技術における最も重要なマイルストーンについて詳述するとともに、この分野の将来を展望している。
Remarkable improvement in low temperature performance of model three-way catalysts through solution atomic layer deposition
doi: 10.1038/s41929-019-0283-x
アルミナ担持ロジウムのような市販の三元触媒は、そうした系で設計空間が限られていることを考慮すると、性能向上が大きな難題となっている。今回、原子層溶液成長法を用いてこの触媒にチタニア助触媒やジルコニア助触媒を組み込むことで、全体的な性能が著しく向上している。
A robust and precious metal-free high performance cobalt Fischer–Tropsch catalyst
doi: 10.1038/s41929-019-0288-5
フィッシャー・トロプシュ反応は、合成燃料を製造する重要な方法の1つである。本論文では、α-アルミナ担体にコバルトナノ粒子を分散析出させる方法によって、優れた活性を示すとともに厳しい条件に耐える非常に安定な触媒系が生成されることが示されている。
Methanol to high-octane gasoline within a market-responsive biorefinery concept enabled by catalysis
doi: 10.1038/s41929-019-0319-2
バイオメタノールからの高価値燃料の製造は、経済的に採算がとれるよう改良する必要がある。本論文では、高オクタン価ガソリンの製造プロセスの進歩が報告されている。また、こうした進歩が、化石燃料の市場価格に対するこのプロセスの価格競争力に及ぼす影響が分析されている。
Misconceptions and challenges in methane-to-methanol over transition-metal-exchanged zeolites
doi: 10.1038/s41929-019-0273-z
メタンからメタノールへの変換は魅力的なプロセスであるが、商業的に実現可能な触媒的変換方法の開発は非常に困難である。今回Van Bokhovenたちは、ゼオライト上での酸素分子との反応に重点を置いて、この分野における成功例、問題点、誤解について論じている。
Single-atom tailoring of platinum nanocatalysts for high-performance multifunctional electrocatalysis
doi: 10.1038/s41929-019-0279-6
白金はさまざまな電極触媒系において重要な役割を果たしているが、その希少性と価格によって実用化が制限されている。本論文では、単一原子テーラリング戦略を白金ナノワイヤーに適用することによって、水素生成反応、メタノール酸化反応、エタノール酸化反応についての比活性と質量活性が最大化されている。
Rational design, enantioselective synthesis and catalytic applications of axially chiral EBINOLs
doi: 10.1038/s41929-019-0278-7
軸不斉化合物は、不斉合成用に特化された触媒/配位子となることがわかっており、BINOL、SPNIOL、それらの誘導体が特に成功を収めている。本論文では、軸不斉アルケン群が報告されており、それらを不斉触媒反応に利用できることが実証されている。
Reprogramming the enzymatic assembly line for site-specific fucosylation
doi: 10.1038/s41929-019-0281-z
ルイス抗原が利用できることでその重要な生物学的機能の研究が可能になるが、ルイス抗原合成における部位特異的なフコシル化は困難である。本論文では、複雑なルイス抗原を合成するための酵素的プラットフォームが報告されており、ルイス抗原に関連するグライコームを研究する機会が得られている。
Iron-catalysed regioselective hydrogenation of terminal epoxides to alcohols under mild conditions
doi: 10.1038/s41929-019-0286-7
第一級アルコールは、生命科学や化学工業に広く応用されることで知られている。今回Bellerたちは、温和な条件下で第一級アルコールを合成する一般的な手段として、鉄触媒を用いる脂肪族エポキシドと芳香族エポキシドの位置選択的水素化について報告している。
Catalyst as colour indicator for endpoint detection to enable selective alkyne trans-hydrogenation with ethanol
doi: 10.1038/s41929-019-0299-2
アルキンからアルケンへの還元は、アルカンへの過還元の可能性があるため困難である。本論文では、イリジウム触媒によるアルキンの半水素化において、このイリジウム錯体の色変化によって反応の終点が明確に特定されている。
The atomic-resolution crystal structure of activated [Fe]-hydrogenase
doi: 10.1038/s41929-019-0289-4
技術的な目的で[Fe]-ヒドロゲナーゼ(H2を開裂・生成する酵素)を利用するには、触媒過程に関する詳細な知識が重要になる。本論文では、基質と結合した閉じた活性型酵素の原子分解能の結晶構造���正確な触媒回路が報告されている。
An artificial DNAzyme RNA ligase shows a reaction mechanism resembling that of cellular polymerases
doi: 10.1038/s41929-019-0290-y
DNAザイムは生物医学や生物工学への応用に魅力的な触媒であるが、その触媒機構はよくわかっていなかった。本論文では、9DB1 DNAザイムに触媒されるRNAライゲーションの詳細な反応機構が調べられ、この機構が天然タンパク質酵素の機構と似ていることが明らかになっている。
Net reduction of CO2 via its thermocatalytic and electrocatalytic transformation reactions in standard and hybrid processes
doi: 10.1038/s41929-019-0266-y
CO2水素化は温室効果ガス削減策として高く評価されることが多いが、それに伴う電気触媒的プロセスや熱触媒的プロセスのカーボンフットプリントは無視されがちである。本Perspectiveでは、さまざまな触媒プロセスやハイブリッド触媒プロセスについて、メタノール生産時に生成されるCO2の量を分析している。
Reaction systems for solar hydrogen production via water splitting with particulate semiconductor photocatalysts
doi: 10.1038/s41929-019-0242-6
微粒子半導体を用いる光触媒水分解は、ソーラー燃料としての水素を生成する有望な戦略である。本Reviewでは、この技術のスケールアップに向けた反応システムと光触媒の開発における最近の進展を取り上げるとともに、克服すべき課題を浮き彫りにする。
Homocoupling-free iron-catalysed twofold C–H activation/cross-couplings of aromatics via transient connection of reactants
doi: 10.1038/s41929-019-0245-3
二つのC–H活性化/クロスカップリングに共通の問題は、ホモカップリング生成物が形成されることである。本論文では、Fe触媒クロスカップリング時に片方の試薬のイオン基がC–H活性化の順序を明確に決めるため、ホモカップリング副生成物の生成が回避されることが示されている。
Perfluorocarbon nanoemulsion promotes the delivery of reducing equivalents for electricity-driven microbial CO2 reduction
doi: 10.1038/s41929-019-0264-0
H2は、CO2からの化学品生産において電極から微生物に電子を運ぶ有望な電子伝達体である。しかし、水素は溶解度が低いため、生産性が制限される。本論文では、H2キャリアとしてのナノエマルションが、H2の溶解度と移動速度を向上させ、系の生産性を高めることが報告されている。
Ethylene glycol as an efficient and reversible liquid-organic hydrogen carrier
doi: 10.1038/s41929-019-0265-z
水素を直接的なポータブル燃料源にするには、水素の貯蔵とその後の放出に伴う困難に対処しなければならない。本論文では、エチレングリコールが効率のよい可逆的な液体-液体水素キャリアとしての役割を果たし、その理論H2容量が6.5 wt%なので特に魅力的であることを示す。
Two-dimensional copper nanosheets for electrochemical reduction of carbon monoxide to acetate
doi: 10.1038/s41929-019-0269-8
COを高価値多炭素生成物にグレードアップすることは、燃料や化学工業原料を生産する有望な手段である。本論文では、(111)面が選択的に露出した三角形Cuナノシートを用いることで、CO電解還元において高いアセテート部分電流密度(131 mA cm–2)とファラデー効率(48%)が示されている。
Solvent-mediated charge separation drives alternative hydrogenation path of furanics in liquid water
doi: 10.1038/s41929-019-0257-z
不均一系触媒反応では、溶媒や、溶媒と金属担体の相互作用が反応性に複雑な影響を及ぼす。本論文では、Pd触媒を用いるフルフラールの水素化において、純粋な表面結合機構よりもプロトン移動が有利になることによって、水が速度と選択性に影響を及ぼすことが示されている。
Making quantitative sense of electromicrobial production
doi: 10.1038/s41929-019-0272-0
電気微生物的合成は、化学品製造の原料としての化石炭素をCO2と電気に置き換える可能性がある。本研究は、さまざまな電気微生物的合成方法を分析し、比較して、この手法の持続可能かつ効率的な実施に向けてデータ駆動型ロードマップをもたらすものである。
Promoting nitrogen electroreduction to ammonia with bismuth nanocrystals and potassium cations in water
doi: 10.1038/s41929-019-0241-7
窒素の電気化学的還元によるアンモニア生成は、エネルギー消費の多いハーバー・ボッシュ法の負担を大幅に軽減する非常に興味深い課題となっている。今回、Yin、Yan、Zhang、Siたちは、アルカリカチオンによって増強されるビスマスナノ触媒を用いて高いアンモニア収率と66%を超えるファラデー効率を実現している。
Intrinsically stable in situ generated electrocatalyst for long-term oxidation of acidic water at up to 80 °C
doi: 10.1038/s41929-019-0277-8
酸性条件における電気化学的水分解は、安価で安定なアノード触媒がないため制限されている。今回、Simonovたちは、in situで形成される非貴金属系酸素生成触媒が、自己修復機構を持つため酸性水の酸化に対して高い安定性を示すことを報告している。
Challenges and prospects in the catalysis of electroreduction of nitrogen to ammonia
doi: 10.1038/41929-019-0252-4
窒素の電気化学的還元は、将来のアンモニア製造基盤として集中的に研究されている。本Perspectiveは、この目標に向けた現在の進歩と躓きについて実験方法と触媒選択の観点から論じ、厳密な実験のためのプロトコルを提案している。
Organosodium compounds for catalytic cross-coupling
doi: 10.1038/s41929-019-0250-6
有機リチウム化合物や有機マグネシウム化合物は有機化学において十分確立された手段であるが、有機ナトリウム化合物はそれほど広く用いられていない。本論文では、塩化アリールや(ヘテロ)アレーンから有機ナトリウム化合物を合成する手法が報告され、クロスカップリング反応における有機ナトリウム化合物の使用例が示されている。
Engineering the electronic structure of single atom Ru sites via compressive strain boosts acidic water oxidation electrocatalysis
doi: 10.1038/s41929-019-0246-2
Ru系電解触媒は、酸性下の水の酸化において最も活性の高い触媒の1つであるが、著しい失活が起こるという欠点がある。今回、Y WuとW-X Liたちは、表面にRu原子を分散させたコア–シェル型Ru1–Pt3Cu触媒による酸性電解液中の高活性かつ安定な酸素生成反応を報告している。
Asymmetric construction of atropisomeric biaryls via a redox neutral cross-coupling strategy
doi: 10.1038/s41929-019-0247-1
軸不斉ビアリールにはさまざまな用途があることがわかっている。おそらく最も重要なのは不斉触媒反応における配位子としての用途と思われるが、軸不斉ビアリールの合成は困難である。今回、B Tanたちは、レドックスニュートラルなアリール–アリールカップリングが、高い収率とエナンチオ選択性でN,NおよびN,O軸不斉ビアリールを直接合成する方法となることを報告している。
A family of native amine dehydrogenases for the asymmetric reductive amination of ketones
doi: 10.1038/s41929-019-0249-z
高効率で立体選択的なキラルアミン合成用の新しい酵素は、製薬業界にとって大変興味深い。今回、GroganとVergne-Vaxelaireたちは、ケトンからのキラルアミンの合成に使用できる天然アミンデヒドロゲナーゼファミリーの発見、特性評価、結晶構造、操作について報告している。
Structure of the catalytically active copper–ceria interfacial perimeter
doi: 10.1038/s41929-019-0226-6
セリア表面の銅は、低温水性ガスシフト反応用の優れた触媒である。本論文では、活性部位を電子顕微鏡法で直接画像化し、in situ分光法で調べることによって、Cu+が化学的にCOを吸着する一方で、隣接するOv–Ce3+部位がH2Oを解離活性化する協同機構によって反応が進行することが示されている。
Biological conversion of methane to methanol through genetic reassembly of native catalytic domains
doi: 10.1038/s41929-019-0255-1
メタンモノオキシゲナーゼ(MMO)は、メタンからメタノールへの温和な選択的変換で生物工学的関心が高いタンパク質であるが、スループットの高い生成システムがほとんどない。本論文では、溶液中やヒドロゲル中での触媒反応に向けた微粒子状MMO模倣体の高効率生成が報告されている。
Solar-driven reduction of aqueous CO2 with a cobalt bis(terpyridine)-based photocathode
doi: 10.1038/s41929-019-0254-2
固定化分子触媒はCO2の電解還元を効率的に進める可能性があるが、レアメタルを継続的に使用するため実用化が阻まれている。本論文では、豊富に存在する分子触媒に基づくCO2還元能高い光電極が報告されている。
Photoelectrocatalytic arene C–H amination
doi: 10.1038/s41929-019-0231-9
光電気化学セルは、ソーラー燃料の生成に広く用いられているが、有機合成への応用は限定されている。本論文では、光アノードとしてヘマタイトを用いる光電極触媒的な芳香族化合物のC–Hアミノ化が実証されている。
The renaissance of the Sabatier reaction and its applications on Earth and in space
doi: 10.1038/s41929-019-0244-4
CO2の水素化によるメタン生成(サバティエ反応)は100年以上前から知られている。しかし、エネルギー貯蔵に向けた小分子活性化への関心の高まり、触媒の改良、触媒プロセスの理解の向上を考えると、この反応は再考する価値がある。本Perspectiveでは、サバティエ反応の基礎に関する最近の研究とともに、大規模な応用の可能性が論じられている。
Rational catalyst and electrolyte design for CO2 electroreduction towards multicarbon products
doi: 10.1038/s41929-019-0235-5
ここ数年、二酸化炭素の電気化学的還元による燃料や原料の合成にますます関心が集まっている。本ReviewではR Cuenyaたちが、多炭素生成物の合成向けに、触媒と電解質の合理的設計によって高い選択性を実現する戦略を論じている。
SmI2-catalysed cyclization cascades by radical relay
doi: 10.1038/s41929-018-0219-x
ヨウ化サマリウムは、有機合成に非常に役立つ穏やかな還元剤であるが、化学量論量以上の量を必要とするためその使用が問題になることがある。今回、化学量論量の共還元剤を必要とせず、触媒としてヨウ化サマリウムを用いる方法が報告されている。5%という少量のヨウ化サマリウムがラジカル環化カスケードを触媒することが示されている。
Asymmetric formation of γ-lactams via C–H amidation enabled by chiral hydrogen-bond-donor catalysts
doi: 10.1038/s41929-019-0230-x
キラルγ-ラクタムは、多くの医薬品中に存在しており非常に興味深い。しかし、その化学合成は複雑であり、事前に官能基化された出発物質を必要とする。今回、ParkとChangはイリジウム触媒系を用いて、豊富に存在する原料から分子内不斉sp3C-Hアミド化を経てキラル γ-ラクタムを生成したことを報告している。
Intrinsic cleavage of RNA polymerase II adopts a nucleobase-independent mechanism assisted by transcript phosphate
doi: 10.1038/s41929-019-0227-5
細胞の生存率は転写の忠実度に依存するが、真核生物RNAポリメラーゼII(Pol II)の校正機構はまだよくわかっていない。今回、Cheung、Wang、Zhang、Huangたちは、Pol IIがRNA転写物の下流のリン酸の酸素を利用して、誤って取り込まれたヌクレオチドの内因性開裂を活性化することを示している。
Highly branched polyethylene oligomers via group IV-catalysed polymerization in very nonpolar media
doi: 10.1038/s41929-018-0224-0
低分子量の高分岐ポリエチレンは魅力的な合成潤滑剤候補であるが、触媒を用いる効果的な合成方法がないため効率的な製造が制限されている。従来のIV族遷移金属触媒によって種々のポリエチレンを大量生産できるが、そうした方法では高分岐ポリエチレンを合成できない。今回、炭化水素に可溶な有機ジルコニウムプレ触媒とボレート共触媒によって、優れた活性と分岐選択性で目的のポリエチレンが合成された。
Structural principles to steer the selectivity of the electrocatalytic reduction of aliphatic ketones on platinum
doi: 10.1038/s41929-019-0229-3
カルボニル基の電極触媒還元は、バイオリファイナリーとの関連で注目を集めている。しかし、そうした過程に関する基礎知識はまだ限られている。本論文では、白金単結晶表面におけるアセトンの電極還元の選択性が調べられ、著しい構造感受性が明らかになっている。
Efficient electrocatalytic conversion of carbon monoxide to propanol using fragmented copper
doi: 10.1038/s41929-019-0225-7
一酸化炭素を高級アルコールに改質することによって、再生可能燃料を得る手段が得られる。今回SintonとSargentたちは、(111)面と(100)面の間の人工界面によって高度にフラグメント化した銅系触媒によって、C1種とC2種の結合が促進され、n-プロパノールの合成が増強されることを報告している。
Fe–N–C electrocatalyst with dense active sites and efficient mass transport for high-performance proton exchange membrane fuel cells
doi: 10.1038/s41929-019-0237-3
鉄単原子触媒は、酸電解液中で用いる最も有望な燃料電池カソード材料の1つである。今回、ShuiとXuたちは、活性部位の有効性と質量輸送特性が向上した凹型Fe–N–Cナノ粒子を報告している。このナノ粒子触媒は、2018年米国エネルギー省の白金族金属フリー燃料電池触媒の目標を達成した。
Fundamentals of C–O bond activation on metal oxide catalysts
doi: 10.1038/s41929-019-0234-6
金属酸化物は、バイオマス高付加価値化の観点から炭素–酸素結合開裂に有望な触媒群として認められているが、その反応性はまだ系統的に理解されていない。本論文では、触媒スクリーニングと第一原理計算を組み合わせて、この触媒群に関する重要な知見を得ている。
Direct electrosynthesis of sodium hydroxide and hydrochloric acid from brine streams
doi: 10.1038/s41929-018-0218-y
脱塩プロセスでは、一般的に副産物としてブライン(高濃度の塩水)が残り、環境へ排出される。本Perspectiveでは、ブラインを排出する代わりに資源として用いて、直接電解合成で塩酸と水酸化ナトリウムを製造する最近の方法を検討している。
Dual-catalytic transition metal systems for functionalization of unreactive sites of molecules
doi: 10.1038/s41929-018-0207-1
通常なら非反応性の分子部位を官能基化できれば、多段階や高反応性試薬の必要性が減るのに加えて、合成設計や構造修飾に多大な柔軟性がもたらされる。本論文では、脂肪族アルコールのβ-アリール化方法とアリルアルコールのエナンチオ選択的γ-ヒドロアリール化方法について二元触媒戦略が実証されており、この戦略が非反応性部位の官能基化反応に適していることが報告されている。
The highly surprising behaviour of diphosphine ligands in iron-catalysed Negishi cross-coupling
doi: 10.1038/s41929-018-0197-z
最近、鉄触媒を用いるクロスカップリングに多くの進展が見られたにもかかわらず、この反応の機構的理解は、より研究が進んでいるパラジウム触媒やニッケル触媒を用いるクロスカップリングと比べて不十分である。本論文では、鉄触媒による根岸反応において、ジホスフィン配位子が鉄中心ではなく主に亜鉛中心と結合することが見いだされている。
Identification of single-atom active sites in carbon-based cobalt catalysts during electrocatalytic hydrogen evolution
doi: 10.1038/s41929-018-0203-5
炭素系単原子触媒では、窒素の共ドーピングによって、金属単原子を金属–N4部として安定化することが多い。今回WeiとYaoたちは、オペランド手法を用いて、アルカリ性の水素発生反応条件下でCo–N4活性部位が構造的に歪んでHO–Co–N2構造になることを示している。
Sustaining metal–organic frameworks for water–gas shift catalysis by non-thermal plasma
doi: 10.1038/s41929-018-0206-2
MOFは、熱的安定性や加水分解安定性が低いため、これまで触媒反応への応用は少なかった。本論文では��水が存在しても、水性ガスシフト反応に対するHKUST-1などのMOFの活性を非熱プラズマによって促進し持続できることが示されている。
Identification of the active complex for CO oxidation over single-atom Ir-on-MgAl2O4 catalysts
doi: 10.1038/s41929-018-0192-4
単原子触媒は多くの注目を集めているが、その活性部位に関する知見や従来のナノ粒子との反応性の差異は、依然として議論の的になっている。本論文では、Ir/MgAl2O4によるCO酸化に関するオペランド研究とコンピューターによる研究の結果から、このタイプの触媒の重要な特徴が明らかにされている。
Structural selectivity of supported Pd nanoparticles for catalytic NH3 oxidation resolved using combined operando spectroscopy
doi: 10.1038/s41929-018-0213-3
パラジウム触媒を用いるアンモニアの選択的酸化は、NOx低減という観点から重要な反応であるが、反応条件下の触媒に関して限られた構造的情報しか得られていない。本論文では、オペランド研究によって、パラジウムの化学形態が明らかになり、極めて重要なパラジウム–窒化物種が特定されている。
Catalytic hydrogen atom transfer from hydrosilanes to vinylarenes for hydrosilylation and polymerization
doi: 10.1038/s41929-018-0217-z
水素原子移動過程は、化学系や生物系においてよく見られる。本論文では、ルイス塩基によるヒドロシランの活性化を経るレドックスニュートラルな水素原子移動が報告されている。さらに、触媒選択に依存して、この初期ステップをヒドロシリル化や重合に向けて進められることが実証されている。
A green chemistry perspective on catalytic amide bond formation
doi: 10.1038/s41929-018-0211-5
アミド結合形成は、有機合成において非常に重要な反応である。本Perspectiveでは、広く用いられている化学量論試薬と触媒を比較し、この過程の反応条件の選択に影響を及ぼす要因を検討している。著者たちは、学術界と産業界の両方のデータを利用し、さまざまな方法の効率、適用範囲、持続可能性に注目している。
A comprehensive metabolic map for production of bio-based chemicals
doi: 10.1038/s41929-018-0212-4
限りある化石燃料資源、気候変動、環境問題に取り組む際、再生可能バイオマス原料からの工業化学品の製造が重要な役割を果たす。本Reviewでは、中心炭素代謝経路の主要な前駆体代謝産物に由来する工業化学品の生物学的合成経路と化学的合成経路を概観するとともに、その結果を包括的なバイオ化学品マップで可視化している。
Electricity-driven asymmetric Lewis acid catalysis
doi: 10.1038/s41929-018-0198-y
不斉触媒反応における電気化学の利用は、特に化学選択性と立体選択性の実現が難しいことに加え、電気化学的に生成した中間体の反応性が非常に高いため、難しい課題といえる。本論文では、全炭素四級立体中心を持つ化合物を含む1,4-ジカルボニル化合物を高い鏡像体過剰率で合成するための触媒的不斉電解合成反応が報告されている。chiral-at-metal(金属中心が立体中心となる)触媒は、基質をアノード酸化に向けて活性化するとともに、プロセスのエナンチオ選択性を制御している。
Rapid virtual screening of enantioselective catalysts using CatVS
doi: 10.1038/s41929-018-0193-3
特定の不斉触媒反応について高エナンチオ選択的配位子を予測することは非常に難しいが、こうした予測ができれば、試行錯誤のハイスループット実験の必要性を大幅に減らせる可能性がある。本論文では、不斉触媒反応における特定の基質に対して適切なキラル配位子を特定するための無料で利用できる自動ツールが報告されている。
Catalytic CO2 reduction by palladium-decorated silicon–hydride nanosheets
doi: 10.1038/s41929-018-0199-x
シリコン–水素化物材料は、二酸化炭素の光還元による燃料合成用として魅力的な候補であるが、これまで化学量論的にしか作用しなった。今回Ozinたちは、シリコンナノシートをパラジウムナノ粒子で修飾することによってこの過程を触媒的にする方法を示している。
Theory-guided Sn/Cu alloying for efficient CO2 electroreduction at low overpotentials
doi: 10.1038/s41929-018-0200-8
二酸化炭素の電解還元によるホルメートの合成は、燃料や汎用化学品の製造に好ましい戦略である。今回Cuiたちは、密度汎関数理論に基づいて、−0.5 V(vs. RHE)という低い電位でのCO2電解還元によるホルメート生成においてCuSn3合金が高い活性と選択性を示すことを報告している。
Deciphering key intermediates in the transformation of carbon dioxide into heterocyclic products
doi: 10.1038/s41929-018-0189-z
化学品合成においてCO2を利用する主要な経路の1つに、CO2の環化付加によるエポキシド生成を経るカーボネートの形成がある。本研究では、一連の実験手法と計算手法を用いて、この過程において不明であった主要中間体を明らかにしている。
General synthesis of primary amines via reductive amination employing a reusable nickel catalyst
doi: 10.1038/s41929-018-0202-6
地球上に豊富に存在する金属に基づく再利用可能な触媒は、有機合成に安価で持続可能な手法をもたらす可能性がある。本論文では、γ-Al2O3担体上でニッケル錯体を熱分解することによって形成されたニッケル触媒が、還元的アミノ化による第一級アミンの合成に対して活性が高いことが示されている。このニッケル触媒は、アンモニア水溶液とアルデヒドかケトンのどちらかと作用し、さまざまな官能基に対して耐性がある。
Bimetallic synergy in cobalt–palladium nanocatalysts for CO oxidation
doi: 10.1038/s41929-018-0190-6
触媒は動的な化学種であり、その構造は反応中に変化し得る。本論文では、CO酸化中のコバルト–パラジウムナノ粒子の構造変化が明らかになり、パラジウム表面でのCoOxの再構成が示されている。さらに、組成に依存する再構成は、触媒活性の傾向と相関付けることができる。
Evidence for product-specific active sites on oxide-derived Cu catalysts for electrochemical CO2 reduction
doi: 10.1038/s41929-018-0201-7
銅系触媒、特にいわゆる酸化物由来銅は、電気化学的CO2還元によって多炭素化学種を生成できる。しかし、集中的な研究努力にもかかわらず、その活性部位についてはほとんどわかっていない。今回LumとAgerは、生成物特異的部位の証拠を示さない多結晶銅や(111)および(100)配向銅膜とは違って、酸化物由来銅触媒にはC2+化学物質の形成について異なる3つの生成物特異的部位があることを示している。
Characteristics and performance of two-dimensional materials for electrocatalysis
doi: 10.1038/s41929-018-0181-7
二次元材料はグラフェンの発見以来注目を浴び続け、グラフェン以外の極薄層状構造の広範なライブラリーが徐々に現れている。本Reviewでは、PumeraとChiaがこの種の材料の特徴を集めて論じ、最近の電極触媒反応への応用について概説している。
Understanding heterogeneous electrocatalytic carbon dioxide reduction through operando techniques
doi: 10.1038/s41929-018-0182-6
二酸化炭素を電気化学的に還元することで、この温室効果ガスを再生利用して化学品や燃料を製造することが可能になる。本Reviewでは、Sehたちが不均一系二酸化炭素電極還元に適用されるオペランド手法の進歩について論じるとともに、こうした手法によってもたらされた機構的知見に重点を置いて解説している。
Atomically dispersed manganese catalysts for oxygen reduction in proton-exchange membrane fuel cells
doi: 10.1038/s41929-018-0164-8
プロトン交換膜燃料電池の酸素還元反応には、白金族金属と鉄を含まない触媒が非常に望ましい。今回Wuたちは、酸性媒体において安定性の高い高効率触媒として、原子レベルで分散した単一Mn部位を有するカーボン触媒を示している。
Copper nanocavities confine intermediates for efficient electrosynthesis of C3 alcohol fuels from carbon monoxide
doi: 10.1038/s41929-018-0168-4
高級アルコールは体積エネルギー密度が高いため、その製造は非常に有用である。今回SargentとSintonたちは、目的に合ったナノ空洞を有する銅ナノ粒子を設計し、空洞内部でC2中間体とC1中間体がカップリングすることによってn-プロパノールの形成が促進されることを報告している。
Detection of catalytic intermediates at an electrode surface during carbon dioxide reduction by an earth-abundant catalyst
doi: 10.1038/s41929-018-0169-3
マンガンカルボニル錯体は有望なCO2還元電極触媒であるが、その複雑な機構を調べるのは困難である。本論文では、振動和周波発生分光法を用いて過渡的な触媒中間体を検出し、機構に関する実験的証拠を得るとともに、分子電極触媒過程全般についてこの解析法が有用であることを実証している。
Operando NAP-XPS unveils differences in MoO3 and Mo2C during hydrodeoxygenation
doi: 10.1038/s41929-018-0171-9
水素化脱酸素反応用に大きな可能性がある2つの関連する触媒、すなわち三酸化モリブデンと炭化モリブデンは、その活性部位の性質が以前から議論の的になっている。本論文では、アニソールの水素化脱酸素中にオペランド準大気圧XPSを用いて比較研究を行うことによって、この2つの材料に重要な違いがあることを明らかにしている。
A Rieske oxygenase/epoxide hydrolase-catalysed reaction cascade creates oxygen heterocycles in mupirocin biosynthesis
doi: 10.1038/s41929-018-0183-5
ムピロシンは臨床的に重要な抗生物質であるが、テトラヒドロピラン部分(生物活性に不可欠な酸素ヘテロ環)の生合成はまだ解明されていない。今回WillisとCrumpたちは、活性化されていないC–H結合からのこの環の形成を触媒する酵素反応カスケードを報告している。
A vitamin K-dependent carboxylase orthologue is involved in antibiotic biosynthesis
doi: 10.1038/s41929-018-0178-2
推定上の細菌ビタミンK依存性カルボキシラーゼ(VKDC)の機能は、これまでよくわかっていなかった。今回Micklefieldたちは、生物活性に欠かせない独特なマロン酸部分を生成する抗生物質マロノマイシンの生合成に、細菌VKDCオルソログが関与していることを示している。
Single platinum atoms immobilized on an MXene as an efficient catalyst for the hydrogen evolution reaction
doi: 10.1038/s41929-018-0195-1
単原子触媒は、可能な最低限の貴金属担持で高い活性を維持できるので非常に魅力的である。本論文では、単一Pt原子を効果的に固定する二重遷移金属MXeneが報告され、水素生成反応向けに優れた性能と安定性が示されている。
Versatile and robust C–C activation by chelation-assisted manganese catalysis
doi: 10.1038/s41929-018-0187-1
より一般的なC–H官能基化と異なり、C–C結合を官能基化する方法は少ない。今回Ackermannたちは、安価なマンガン触媒がC–C結合を選択的に活性化して、水中でアルキル化、アルケニル化、アリル化を可能にすることを示している。
Impact of nanoparticle size and lattice oxygen on water oxidation on NiFeOxHy
doi: 10.1038/s41929-018-0162-x
アルカリ性電解質中でNi(Fe)OxHy触媒の水の酸化活性が高い理由は、まだよくわかっていない。今回、Chorkendorffたちは、質量選別したNiFeナノ粒子の活性傾向を測定することによって、酸素生成が表面近傍領域に制限されることを報告している。
Mapping out the key carbon–carbon bond-forming steps in Mn-catalysed C–H functionalization
doi: 10.1038/s41929-018-0145-y
機構的理解によって新しい反応性の開発が促進される可能性があるが、触媒サイクルにおける主要な結合形成段階や結合切断段階は速すぎて観察できないことが多い。今回著者たちは、Mn触媒を用いるC–H官能基化における主要中間体を光化学的に生成し、時間分解赤外分光法を用いてその後の反応段階を7桁の時間スケールにわたって追跡している。
A unique oxygen ligand environment facilitates water oxidation in hole-doped IrNiOx core–shell electrocatalysts
doi: 10.1038/s41929-018-0153-y
反応条件下の活性相を分子レベルで正確に理解することは、改良型触媒の設計に不可欠である。今回StrasserとJonesたちは、IrNi@IrOxコア・シェル型ナノ粒子の高い活性と、水の酸化前と酸化中に起こるニッケル浸出過程によって生じる格子空孔の量を相関付け、基礎となる構造的・電子的効果を明らかにしている。
Crossing the great divide between single-crystal reactivity and actual catalyst selectivity with pressure transients
doi: 10.1038/s41929-018-0167-5
単結晶に関する触媒研究は非常に本質を突くものであるが、その結論を実際の触媒過程に拡張して適用することは、実験条件に差があるため困難である場合が多い。今回Madixたちは、例として金表面におけるメタノールの酸化的カップリングを用いて、このギャップを埋める方法を報告している。
Highly tunable multi-borylation of gem-difluoroalkenes via copper catalysis
doi: 10.1038/s41929-018-0147-9
有機ホウ素化合物は有機化学における汎用中間体であるため、複数のホウ素を含む基を選択的に導入することは非常に興味深い。今回Shiたちは、単に反応条件を少し変えることによって、2つ、3つ、または4つのボロン酸基を一般的な出発物質に選択的に導入できる、銅触媒を用いた方法を報告している。
Water oxidation on a mononuclear manganese heterogeneous catalyst
doi: 10.1038/s41929-018-0158-6
自然界の光化学系IIの酸素生成錯体は多核マンガンクラスターであり、単核マンガンでも水の酸化を効率よく触媒できるかどうかが長年の疑問となっている。今回Liたちは、単一マンガン原子を窒素ドープグラフェン上に固定することで酸素生成反応を触媒できることを示している。
Engineering highly functional thermostable proteins using ancestral sequence reconstruction
doi: 10.1038/s41929-018-0159-5
生物工学的応用のためのタンパク質の安定性向上は、難しい課題である。今回Gillamたちは、酵素の熱的安定性と寿命を、温和な条件で存在した原始脊椎動物の近い祖先の配列から、単一段階で著しく向上させ得ることを示している。
Highly selective oxidation of methane to methanol at ambient conditions by titanium dioxide-supported iron species
doi: 10.1038/s41929-018-0170-x
メタンからのメタノール合成は、この豊富な天然ガスを高価値化する有望な経路であるが、既存の熱処理工程には、過酷な反応条件が必要である。本論文では、TiO2に担持された酸化鉄種を用いてメタノールを周囲条件で高収率かつ高選択的に合成する、光触媒的手法が報告されている。
Tandem copper hydride–Lewis pair catalysed reduction of carbon dioxide into formate with dihydrogen
doi: 10.1038/s41929-018-0140-3
銅は、入手しやすく安価であるため、均一系触媒を用いるCO2還元によるホルメート生成に魅力的な金属である。しかし、CO2は容易に銅ヒドリドに割り込んで金属と結合したホルメートを生成しうるが、その後、H2を用いて触媒種を再生することは困難である。本論文では、銅ヒドリドがCO2を活性化し、ルイスペアが不均等にH2を開裂するという二重戦略を用いて、劇的に性能を向上させている。
High-rate electroreduction of carbon monoxide to multi-carbon products
doi: 10.1038/s41929-018-0133-2
COの電解還元によってかなり高いファラデー効率で多炭素生成物が得られるという事実にもかかわらず、COは水性電解質に溶けにくく、電流密度が低くなることが多いため、CO電解装置の実現が制限されている。今回Jiaoたちは、電極と電解質の界面を十分制御することで、91%の多炭素ファラデー効率と630 mA cm–2の部分電流密度を達成できるCOフロー電解装置を報告している。
Overall water splitting by Ta3N5 nanorod single crystals grown on the edges of KTaO3 particles
doi: 10.1038/s41929-018-0134-1
Ta3N5は、非常に有望な光触媒特性を持つ半導体である。しかし、この材料を用いた水の完全分解はまだ実現されていない。今回、堂免たちは、助触媒の存在下で水を水素と酸素に分解できる無欠陥単結晶Ta3N5ナノロッドを合成する方法を報告している。
Improved CO2 reduction activity towards C2+ alcohols on a tandem gold on copper electrocatalyst
doi: 10.1038/s41929-018-0139-9
CO2を電気化学的に変換して液体燃料を作ることは、大きな課題である。今回JaramilloとHahnたちは、Au表面でCO2が還元されてCOになり、付近のCu表面でさらに還元されてC2+が生成されるというタンデム機構の結果として、C2+アルコールに対するAu/Cu触媒の活性が低過電圧において非常に高くなることを報告している。
Solar energy-driven lignin-first approach to full utilization of lignocellulosic biomass under mild conditions
doi: 10.1038/s41929-018-0148-8
セルロースよりもリグニンの品質向上を優先させる「リグニンファースト」アプローチは、バイオマスの十分な高付加価値化に向けて道を開く可能性があるが、いまだに過酷な反応条件の必要性や触媒回収の難しさによって阻まれている。本論文では、こうした限界を克服する、硫化カドミウム量子ドットの使用に基づく光触媒戦略が報告されている。
Direct transformation of bulk copper into copper single sites via emitting and trapping of atoms
doi: 10.1038/s41929-018-0146-x
単一原子触媒は、多くの触媒応用で成功を収めている。今回、LiとWuたちは、アンモニア雰囲気を用いるとバルク金属から揮発性金属–アンモニア種が形成され、その種が窒素豊富な炭素担体によって捕捉されるため、単一原子触媒を直接作製できることを示している。
Integrated tuneable synthesis of liquid fuels via Fischer–Tropsch technology
doi: 10.1038/s41929-018-0144-z
フィッシャー・トロプシュ生成物の合成後精製は、費用がかかるが、特定の燃料向けにプロセスの選択性を調節する必要なステップである。本論文では、合成ガスからガソリン、ジェット燃料、ディーゼル燃料を選択的に直接合成するよう調節できる、コバルトを担持したY型ゼオライト系触媒システムが報告されている。
Highly efficient organic photocatalysts discovered via a computer-aided-design strategy for visible-light-driven atom transfer radical polymerization
doi: 10.1038/s41929-018-0156-8
有機触媒による光酸化還元反応を介する原子移動ラジカル重合は、まだ多くの課題が残っているものの、非常に有望な方法である。今回、Kwon、Gierschner、Kimたちは、この重合プロセス用の有機光酸化還元触媒を特定するコンピューター支援設計戦略について報告している。メタクリル酸メチルとスチレンの重合によって、今回の設計戦略の成功が実証されている。
Computational optimization of electric fields for better catalysis design
doi: 10.1038/s41929-018-0109-2
触媒反応に対する静電効果の一般的重要性は十分認められているが、静電効果を触媒設計に利用することは有望だが困難でもある。本Perspectiveでは、コンピューターによる生物学的触媒反応や化学的触媒反応の最適化への最近の進歩と今後の方向性について、電場および電場と実験触媒系の関連性の観点から論じている。
Catalytic conversion of solar to chemical energy on plasmonic metal nanostructures
doi: 10.1038/s41929-018-0138-x
最近、プラズモニック触媒作用によって、触媒分野が大きく進歩し、特定の電子励起を狙うことによって触媒反応の制御性向上を実現できる見込みがある。本ReviewではLinicたちが、基礎となる物理的機構と触媒反応への応用、欠点と今後の展望に重点を置いて、この分野の最近の進展について論じている。
Lifetime improvement in methanol-to-olefins catalysis over chabazite materials by high-pressure H2 co-feeds
doi: 10.1038/s41929-018-0125-2
メタノールからオレフィンへの変換において軽質オレフィンに対する選択性が高い小細孔ゼオライトは、非反応性炭素質析出物が蓄積するため急速に不活性化する。今回、供給メタノールに高圧水素を加えることで、選択性を損なわずに触媒寿命を大幅に延長できることが実験によって示されている。
Selective and synergistic cobalt(III)-catalysed three-component C–H bond addition to dienes and aldehydes
doi: 10.1038/s41929-018-0123-4
多成分カップリングによって、単純な出発物質から複雑分子の高速形成が可能になる。今回Ellmanたちは、ジエンとアルデヒドへのアリールまたはビニルC–H付加を経て進行する3成分カップリングについて報告し、触媒に結合した中間体を単離することによってその機構を解明している。このC–H付加は、3成分すべてが揃わないと起こらない。
Redox-switchable siderophore anchor enables reversible artificial metalloenzyme assembly
doi: 10.1038/s41929-018-0124-3
人工金属酵素は、合成触媒の適用範囲とタンパク質骨格によってもたらされる選択性を兼ね備える可能性があるが、単一成分のリサイクルは困難である。本研究では、人工金属酵素の組み立てと解体を制御する方法が提示されている。
Biocatalytic cascades driven by enzymes encapsulated in metal–organic framework nanoparticles
doi: 10.1038/s41929-018-0117-2
酵素カスケードの高い活性と安定性は、その生物工学的応用の要となる。今回Willnerたちは、2酵素カスケード、3酵素カスケード、NAD+依存性カスケードでは、金属有機構造体ナノ粒子に酵素を封入することで、活性と安定性を向上できることを実証している。
Active learning across intermetallics to guide discovery of electrocatalysts for CO2 reduction and H2 evolution
doi: 10.1038/s41929-018-0142-1
電気化学的エネルギー貯蔵を目的とした新触媒の設計は、極めて重要である。本論文では、自動計算スクリーニング法を用いて、CO2還元およびH2生成用の高効率電極触媒として100種以上の金属間化合物表面を特定している。
A photochromic composite with enhanced carrier separation for the photocatalytic activation of benzylic C–H bonds in toluene
doi: 10.1038/s41929-018-0128-z
可視光によるトルエンの光触媒的酸化は、可能性があるにもかかわらず、効率が高くスケーラブルな触媒戦略が欠けているため困難である。今回、優れた速度と量子効率でトルエンを酸化してベンズアルデヒドや安息香酸に変換できるフォトクロミックBi2WO6–x/アモルファスBiOCl複合材料が報告されている。
Unified structural motifs of the catalytically active state of Co(oxyhydr)oxides during the electrochemical oxygen evolution reaction
doi: 10.1038/s41929-018-0141-2
触媒の活性部位(動作条件下で形成される部位を含めて)に関する知識は、今後の設計と開発に不可欠である。本論文では、一連の明確なコバルト系酸化物電極触媒の原子スケールの変化が追跡され、構造的に異なる触媒が、触媒活性状態に変換されるにつれて類似した構造モチーフを発現することが示されている。
Metabolic engineering of Escherichia coli for secretory production of free haem
doi: 10.1038/s41929-018-0126-1
医療産業や栄養補助食品産業向けの微生物によるヘム生産には、高性能株が必要である。今回Leeたちは、代謝工学的に改変した大腸菌株による遊離ヘム分泌生産を行い、総ヘムで最高239 mg l−1生産させたことを報告している。
Bracing copper for the catalytic oxidation of C–H bonds
doi: 10.1038/s41929-018-0110-9
特定の銅オキシダーゼに見られるヒスチジンブレースは、有機基質中の強いC–H結合の酸化を可能にする。本Perspectiveでは、このモチーフの考えられる構造的特徴や電子的特徴と、難しい酸化的触媒反応においてこうした特徴がどのような役割を担っているのかに注目して考察する。
Capture and characterization of a reactive haem–carbenoid complex in an artificial metalloenzyme
doi: 10.1038/s41929-018-0105-6
ヘム–カルベノイドは非生物学的酵素反応に関与するとの説が提唱されている。今回Hilvertたちは、人工金属酵素に触媒されるオレフィンシクロプロパン化反応において、ヘム–カルベノイド中間体が反応種であるという結晶学的な証拠を提示している。
Pentamethylcyclopentadienyl rhodium(III)–chiral disulfonate hybrid catalysis for enantioselective C–H bond functionalization
doi: 10.1038/s41929-018-0106-5
ペンタメチルシクロペンタジエニルロジウム(III)錯体を用いるC–H官能基化は既に成功例があるが、この錯体の金属中心に空の配位部位がないため、立体制御が困難である。今回、吉野と松永たちは、アキラルなロジウム錯体とキラルアニオンを併用して、C–H活性化とこれに続く不斉共役付加を触媒できることを示している。
Efficient electrocatalytic CO2 reduction on a three-phase interface
doi: 10.1038/s41929-018-0108-3
電気化学的CO2還元触媒を効率よく設計するには、触媒表面に高濃度のCO2が必要である。今回Cuiたちは、ガスをよく透過する柔軟な疎水性ナノ多孔質ポリエチレン膜を利用して、哺乳類の肺胞構造を模倣した触媒システムを設計し、高い活性とCO選択性を得ている。
Enantioselective dearomative prenylation of indole derivatives
doi: 10.1038/s41929-018-0111-8
プレニル化は、多くの天然物合成によく用いられるステップであり、エナンチオ選択的なプレニル化には、酵素触媒を利用する必要がある。今回Youたちは、さまざまな出発物質のエナンチオ選択的な脱芳香族的プレニル化を可能にするパラジウムホスホロアミダイト触媒を報告し、複数の天然物合成においてその能力を実証している。
Sesquiterpene cyclizations catalysed inside the resorcinarene capsule and application in the short synthesis of isolongifolene and isolongifolenone
doi: 10.1038/s41929-018-0115-4
実験室での人工触媒を用いた複雑テルペン化合物の合成は、自然界での合成よりはるかに複雑になることがわかっている。今回Tiefenbacherたちは、三環系セスキテルペンの高効率短工程合成に酵素を模倣した超分子触媒を用いたことを報告している。
Prebiotic iron–sulfur peptide catalysts generate a pH gradient across model membranes of late protocells
doi: 10.1038/s41929-018-0116-3
現在の生物はすべて、生体エネルギー代謝をプロトン勾配に依存している。しかし、そうした勾配がどのようにして初期の生命体に発現したのかまだわかっていない。今回Mansyたちは、鉄硫黄ペプチド酸化還元ネットワークが膜貫通pH勾配を生じさせる前生物的機構の候補を確立している。
Extending the limits of Pt/C catalysts with passivation-gas-incorporated atomic layer deposition
doi: 10.1038/s41929-018-0118-1
触媒費用を下げ、サイズ効果による触媒性能の向上を活用するには、寸法が小さく表面積対体積比が大きいナノ触媒の合成が大変興味深い。今回Prinzたちは、不活性化ガスを混ぜた原子層堆積法によって、白金ナノ粒子の厚さを抑えた二次元成長が促進されることを示している。
Complete electron economy by pairing electrolysis with hydrogenation
doi: 10.1038/s41929-018-0083-8
電気分解はクリーンな電気を用いて化学品を合成する反応であるが、一般的な水の電気分解の場合、貯蔵困難な水素と排ガスである酸素が生成される。本論文では、パラジウム膜反応器を用いて一対の電解反応を行い、2つの有機化学反応を同時に進行させている。高密度パラジウム膜によって2つの反応を異なる溶媒中で進行させることが可能になり、反応速度と選択性を別々に制御できる。
The stability number as a metric for electrocatalyst stability benchmarking
doi: 10.1038/s41929-018-0085-6
酸電解質中での水の電気分解用の金属酸化物触媒の安定性の適切な検証は、未解決の課題である。今回、「安定数」を導入して各種イリジウム系酸化物の溶解機構が評価され、担持量、表面積、関与する活性部位とは無関係に、触媒評価が容易になった。
A photoswitchable catalyst system for remote-controlled (co)polymerization in situ
doi: 10.1038/s41929-018-0091-8
ポリマーの特性はモノマー組成と鎖の長さに依存するが、ポリマーの合成中にこうした構造的特徴を調節することは困難である。今回Hechtたちは、オン状態とオフ状態を繰り返し切り替えて重合過程の遠隔制御を可能にする、光で切り替えられる触媒系を報告している。さらに、モノマーの導入を制御した共重合が実証されている。
Branched aldehydes as linchpins for the enantioselective and stereodivergent synthesis of 1,3-aminoalcohols featuring a quaternary stereocentre
doi: 10.1038/s41929-018-0093-6
有機合成は、単純な出発物質を複雑な分子化合物に変換する能力に依存している。今回Trostたちは、枝分かれアルデヒドを不斉マンニッヒ反応の求核剤として用い、この反応の生成物をさまざまな炭素求核剤の付加反応の求電子剤として用いている。これによって、1,3-アミノアルコールを合成する単純な立体分岐的手法が得られる。
Interaction trends between single metal atoms and oxide supports identified with density functional theory and statistical learning
doi: 10.1038/s41929-018-0094-5
安定な単一原子触媒をもたらしうる金属と担体の組合せを予測することは、複雑な課題である。今回、金属と担体の相互作用の強さをスクリーニングし、強く吸着した単一原子触媒をつくる金属-担体ペアを特定するのに利用できる計算方法が報告されている。
Sinter-resistant metal nanoparticle catalysts achieved by immobilization within zeolite crystals via seed-directed growth
doi: 10.1038/s41929-018-0098-1
担持された金属ナノ粒子は工業に不可欠な触媒であるが、厳しい焼結環境にさらされることが多い。今回、さまざまな工業関連プロセス向けに耐焼結性の高い触媒を合成するために、ゼオライト内への金属固定化に基づく一般的な方法が報告されている。
Synthesis of reaction‐adapted zeolites as methanol-to-olefins catalysts with mimics of reaction intermediates as organic structure‐directing agents
doi: 10.1038/s41929-018-0104-7
ゼオライト上でのメタノールからオレフィンへの(MTO)変換は、有望な低級オレフィン合成法である。今回Cormaたちは、反応中間体を模倣した構造規定剤を用いて高選択性ゼオライトMTO触媒を合成できることを示している。
Fixation of gaseous CO2by reversing a decarboxylase for the biocatalytic synthesis of the essential amino acid L-methionine
doi: 10.1038/s41929-018-0107-4
官能基化されたアミノ酸を安価なアルデヒドから合成することは困難である。今回、CO2ガス圧を印加するとともに、逆向きのカルボキシル化反応という不利な平衡を駆動するアミノ化ステップを組み合わせて適用することによって、L-メチオニンを生体触媒的に合成したことが報告されている。
Bridging homogeneous and heterogeneous catalysis by heterogeneous single-metal-site catalysts
doi: 10.1038/s41929-018-0090-9
単一原子触媒の合成方法や特性評価方法が改善されるにつれ、単一原子触媒への関心がますます高まっている。今回Bellerたちは、単一金属部位触媒の分野における最近の進展について論じ、このタイプの触媒がどのように不均一系触媒反応と均一系触媒反応の橋渡しをするのか検討し、この分野がどのように進展し続けるのか展望を述べている。
Recent trends and fundamental insights in the methanol-to-hydrocarbons process
doi: 10.1038/s41929-018-0078-5
非化石資源からも生成できるメタノールをオレフィンや芳香族化合物などの重要な化学品に変換することによって、石油化学品の域を越える有機原料の多様化が可能になる。本Reviewでは、この変換過程の機構に関する発見を取り上げ、こうした知見を反応工学の実用面につなげる方法を検討している。
Boosting the performance of Cu2O photocathodes for unassisted solar water splitting devices
doi: 10.1038/s41929-018-0077-6
水と可視光から水素燃料を生成するには、安価で安定かつ活性の高い光電極が必要である。今回LuoとGrätzelたちは、この目標を達成するCu2Oフォトカソードを報告している。これを自立型太陽光水分解装置に組み込むことによって、約3%の太陽光水素変換効率が得られている。
Steering post-C–C coupling selectivity enables high efficiency electroreduction of carbon dioxide to multi-carbon alcohols
doi: 10.1038/s41929-018-0084-7
二酸化炭素を多炭素アルコールに変換することによって、エネルギー密度の高い持続可能な液体燃料の合成が可能になると思われる。今回、空孔操作されたコア–シェル構造の銅系触媒を用いることで、電気化学的CO2還元の選択性を変化させ、アルケン(むきだしの銅触媒を用いて得られる)ではなくアルコールを生成することができた。
Iron-catalysed substrate-directed Suzuki biaryl cross-coupling
doi: 10.1038/s41929-018-0081-x
アリール化合物のクロスカップリングは、利用可能な炭素–炭素結合形成反応の中で最も有効な反応の1つであるが、この反応には高価かつ希少なパラジウム塩が用いられることが多い。今回Bedfordたちは、鉄が鈴木ビアリールカップリングの効果的な触媒となり得ることを示している。
Iridium-catalysed asymmetric hydrogenation of allylic alcohols via dynamic kinetic resolution
doi: 10.1038/s41929-018-0070-0
動的速度論的光学分割(DKR)は、両方のエナンチオマーのラセミ混合物を単一のエナンチオマーの生成物に変換でき、立体選択的反応と出発物質を迅速にラセミ化する手段の両方を必要とする。今回、イリジウム触媒を用いる第二級アリルアルコールの高立体選択的なDKRが報告され、機構的研究から炭素–酸素結合開裂を通して基質のラセミ化が起こることが示唆されている。
Ambient conversion of CO2 to hydrocarbons by biogenic and synthetic [Fe4S4] clusters
doi: 10.1038/s41929-018-0079-4
ニトロゲナーゼのFeタンパク質は、電子伝達と基質還元において重要な役割を果たすレドックス活性[Fe4S4] クラスターを持っている。今回Huたちは、メタン生成古細菌Methanosarcina acetivoransのFeタンパク質が周囲条件下でCO2とCOを炭化水素に還元できることを示している。
Self-sustaining closed-loop multienzyme-mediated conversion of amines into alcohols in continuous reactions
doi: 10.1038/s41929-018-0082-9
アルコールは、医薬品などの有用化合物の合成の汎用中間体として働く。今回、ContenteとParadisiは、アミンをさまざまな市販されていない高価値アルコールに変換するための自己持続型生体触媒フローシステムを開発した。
Lithiation-induced amorphization of Pd3P2S8 for highly efficient hydrogen evolution
doi: 10.1038/s41929-018-0072-y
不活性材料の構造を改変して活性触媒を効果的に設計し作り出すことは、非常に魅力的である。今回、電気化学的リチウム化によって層状結晶Pd3P2S8がLiを組み込んだアモルファスナノドットに変換された。この過程では、不活性母材が安定な高活性水素生成触媒に変換されている。
Ligand-enabled site-selectivity in a versatile rhodium(II)-catalysed aryl C–H carboxylation with CO2
doi: 10.1038/s41929-018-0080-y
CO2によるアレーンの触媒的カルボキシル化は難しい反応であり、基質範囲と選択性が限られている。今回、配位子支援Rh触媒C–H活性化に基づくレドックス中性な方法が示されている。この方法は、適用範囲が広いことを特徴とし、生物関連の重要な構造モチーフの合成を可能にする。
Foundations and strategies of the construction of hybrid catalysts for optimized performances
doi: 10.1038/s41929-018-0052-2
均一系触媒、不均一系触媒、酵素触媒には、それぞれ異なる長所と短所がある。本Perspectiveでは、ハイブリッド触媒を構築する重要な手法、利点、課題について論じるとともに、ハイブリッド触媒でさまざまな触媒過程が改善される可能性を明らかにする。
Growing highly pure semiconducting carbon nanotubes by electrotwisting the helicity
doi: 10.1038/s41929-018-0057-x
エレクトロニクス産業におけるカーボンナノチューブの事業展開の主な障害は、純粋な半導体ナノチューブの水平アレイの作製が要求されることである。今回、合成中に印加電場の向きを切り替えることによって高純度半導体ナノチューブを作製する方法が報告されている。
Streamlined hydrogen production from biomass
doi: 10.1038/s41929-018-0062-0
水素経済を成功させるための重要な目標は、再生可能水素の製造である。今回、セルロース系バイオマスを、中間体としてギ酸を介してワンポットで水素に変換した後、その水素を燃料電池に利用する方法が報告されている。
A universal principle for a rational design of single-atom electrocatalysts
doi: 10.1038/s41929-018-0063-z
エネルギーベースの記述子は、実験の観点から見ると非実用的であるにもかかわらず、非常に有効であることが近年明らかになった。今回、電気陰性度と配位数のみに基づく普遍的な記述子が提示され、最も重要な3つの電極触媒反応について炭素ベースの金属単原子触媒の活性が予測されている。この記述子は、同様の配位環境の金属–大環状錯体に拡張できる。
Reactive metal–support interactions at moderate temperature in two-dimensional niobium-carbide-supported platinum catalysts
doi: 10.1038/s41929-018-0067-8
反応性金属–担体相互作用によって不均一系触媒の活性を調節できるが、これまで主に酸化物担体に関してそうした相互作用が報告されてきた。今回、代表的な触媒の特性を示す例として水性ガスシフト反応を用いて、中程度の温度での白金とMXeneの金属–担体相互作用が報告されている。
Catalytic chemoselective functionalization of methane in a metal−organic framework
doi: 10.1038/s41929-018-0069-6
メタンのホウ素化によって非反応性化合物の官能基化が可能になり、これを一炭素構成要素として用いることが可能になる。しかし、競合して二ホウ素化が起こるため、選択性の問題が生じる。今回、一ホウ素化に対する選択性の高い金属有機構造体系触媒が報告されている。この選択性は触媒細孔内で起こる反応に起因するため、一ホウ素化生成物より大きい二ホウ素化生成物は形成されにくい。
Evidence of radical chemistry in catalytic methane oxybromination
doi: 10.1038/s41929-018-0071-z
触媒的オキシ臭素化は、メタンをアップグレードする重要な戦略である。今回、Pérez-Ramírezたちは、オペランド光電子光イオン同時計測分光法、速度論的解析、分子シミュレーションを用いて、複雑な反応機構を解明している。
Chemically and electrochemically catalysed conversion of CO2 to CO with follow-up utilization to value-added chemicals
doi: 10.1038/s41929-018-0051-3
COは、有機合成に不可欠な構成要素であるが、毒性があるため、貯蔵や輸送が問題となることがある。本reviewでは、in situでCO2からCOを生成する化学的方法や電気化学的方法と、それに続く触媒的手法による化学品へのCOの組み込みに重点を置いて概説している。
Electrocatalytic transformation of HF impurity to H2 and LiF in lithium-ion batteries
doi: 10.1038/s41929-018-0047-z
固体電解質界面は、Liイオン電池の効率に中心的役割を果たしているにもかかわらず、その形成機構はあまりよくわかっていない。今回、電解質中に存在するHF不純物の電極触媒変換の結果として、グラファイトアノード表面にLiFが形成されることが示されている。
How strain can break the scaling relations of catalysis
doi: 10.1038/s41929-018-0054-0
スケーリング関係は、触媒反応を予測する強力な機会をもたらすが、新しい触媒系の設計に関係する限界も同時に反映している。今回理論研究によって、触媒表面の機械的ひずみを操作してスケーリング関係を破る方法が示されている。
Overcoming ammonia synthesis scaling relations with plasma-enabled catalysis
doi: 10.1038/s41929-018-0045-1
プラズマ触媒反応は、従来の触媒反応の限界を克服するのに有望である。今回、アンモニア合成の反応速度モデルが報告され、プラズマと併用するのに最適な触媒が予測されている。周囲条件付近での反応装置の測定によって、予測される触媒反応速度が裏付けられており、ハーバー・ボッシュ法で得られる反応速度と同程度であった。
Complex dynamics in a two-enzyme reaction network with substrate competition
doi: 10.1038/s41929-018-0053-1
ダイナミクスのプログラムと予測が可能な人工反応ネットワークを生み出すことは、合成生物学における主要な目標である。本研究では、遅延型・自己適応型基質競合に基づいて調節可能な複雑なダイナミクスが生じる酵素反応ネットワークが報告されている。
Efficient hydrogen peroxide generation using reduced graphene oxide-based oxygen reduction electrocatalysts
doi: 10.1038/s41929-018-0044-2
過酸化水素を生成する電気化学的な方法によって、現行のアントラキノン法に特有の廃棄物が削減され、分散型現地生産の実現可能性が高まると思われる。今回、安価な還元型酸化グラフェンが、著しく過電圧の低い、安定かつ選択的な酸素還元触媒となることがわかった。
Identifying the key obstacle in photocatalytic oxygen evolution on rutile TiO2
doi: 10.1038/s41929-018-0055-z
二酸化チタン表面での光触媒的酸素生成反応では、高い反応障壁が制限要因とみなされることが多い。今回、触媒効率を決める実際のボトルネックとなっているのは、二酸化チタン半導体表面の正孔濃度であることが示されている。
Atomic-scale insights into surface species of electrocatalysts in three dimensions
doi: 10.1038/s41929-018-0043-3
電極触媒反応中に触媒構造の形態変化が生じることが知られており、そうした変化の解明が触媒過程の知見を得るのに重要である。今回、酸化イリジウムの場合について、酸素発生反応中のこうした表面変化が、原子スケールの詳細さで調べられ、活性や安定性と相関付けられている。
Ternary intermetallic LaCoSi as a catalyst for N2 activation
doi: 10.1038/s41929-017-0022-0
アンモニア合成は、N2解離の活性化障壁が高いため、エネルギーを大量に消費する過程である。今回、細野たちは、金属間化合物LaCoSiによって、N2の活性化に必要なエネルギーが低くなり、この過程の律速段階が温和な条件下のNHX形成に移行しうることを示している。
Chemoenzymatic asymmetric synthesis of the metallo-β-lactamase inhibitor aspergillomarasmine A and related aminocarboxylic acids
doi: 10.1038/s41929-018-0029-1
アミノカルボン酸は、さまざまな家庭用品のほか工業用途にも使用されている。今回Poelarendsたちは、エチレンジアミン-N、N′-ジコハク酸(EDDS)リアーゼの広い基質許容性を利用することによって、抗生物質共薬剤候補であるアスペルギロマラスミンA(aspergillomarasmine A)と関連アミノカルボン酸を化学酵素的に不斉合成する方法を報告している。
An atomic-scale view of single-site Pt catalysis for low-temperature CO oxidation
doi: 10.1038/s41929-018-0028-2
単一原子触媒は重要性が増しているが、その構造と反応の性質は依然として議論の的となっている。今回Sykesたちは、明確なCu2O表面の単一Pt原子に低温でCOを酸化する能力があることを示し、Pt原子の結合部位と電子構造に関するデータを提示している。
Solvent-enabled control of reactivity for liquid-phase reactions of biomass-derived compounds
doi: 10.1038/s41929-018-0027-3
溶媒系の選択は、糖類含有バイオマスの触媒的アップグレードに大きな影響を及ぼす。今回Dumesicたちは、有機溶媒/水混合物における溶媒和効果を調べ、得られた情報を用いて酸触媒によるフルクトース脱水反応の速度と選択性を制御している。
Redox tuning the Weakley-type polyoxometalate archetype for the oxygen evolution reaction
doi: 10.1038/s41929-018-0037-1
水の酸化触媒は、実用化のためには安価で活性が高く安定でなければならない。今回Croninたちは、Weakleyサンドイッチ型ポリ酸にモリブデンをドープすると、酸化に対する安定性が維持されるとともに酸素生成反応の過電圧が劇的に下がることを示している。
Encapsulating highly catalytically active metal nanoclusters inside porous organic cages
doi: 10.1038/s41929-018-0030-8
微小金属ナノクラスターは、高い触媒活性を示すことが多いが、凝集するため安定性が低くなることも多い。今回Xuたちは、サブナノメートルのPdクラスターを多孔性有機ケージ内に封入できることを示している。ケージ内のクラスター粒子は、高い触媒活性を維持するだけでなく、優れた溶解性と安定性も示す。
Time-resolved copper speciation during selective catalytic reduction of NO on Cu-SSZ-13
doi: 10.1038/s41929-018-0032-6
ディーゼル車の窒素酸化物排出を抑制するため、排ガスの選択的触媒還元が用いられている。今回著者たちは、時間分解X線吸収分光法と触媒としてCu-SSZ-13を用いる過渡実験に基づいて、触媒性能の向上を可能にする反応機構の重要な特徴を明らかにしている。
Catalyst electro-redeposition controls morphology and oxidation state for selective carbon dioxide reduction
doi: 10.1038/s41929-017-0018-9
選択的に二酸化炭素を還元してC2+生成物を合成する触媒は、より複雑で有用な化学物質の合成において魅力的である。今回、再電析させた銅触媒が、エチレン生成において優れた選択性と高い電流密度をもたらすことが示されている。詳細な特性評価と理論によって性能と触媒形態が関連付けられている。
Metal ion cycling of Cu foil for selective C–C coupling in electrochemical CO2 reduction
doi: 10.1038/s41929-017-0009-x
CO2の電極触媒的還元による炭素原子を複数含む生成物の合成は、価値の高い化学物質や燃料の生産に有用である。本研究では、理論を用いてC–Cカップリングに望ましい銅表面を予測し、次に金属イオンサイクリングで望ましいファセットを形成してC2+生成物に対して選択性の高い触媒を得ている。
Decarboxylative C(sp3)–N cross-coupling via synergetic photoredox and copper catalysis
doi: 10.1038/s41929-017-0023-z
アミンのアリール化方法は十分確立されているのに対し、アルキル化過程はそれほど開発が進んでいない。今回Huたちは、活性求電子剤を生成する光酸化還元触媒反応と銅触媒クロスカップリング反応を組み合わせて、酸化還元活性エステルを用いるアミンのアルキル化について報告している。
Unravelling structure sensitivity in CO2 hydrogenation over nickel
doi: 10.1038/s41929-017-0016-y
構造敏感性、つまり表面の構造形態が触媒反応にどのような影響を与えるかを理解することは、合理的な触媒設計を行う上で重要である。今回、サイズが明確なさまざまなニッケルクラスターの合成と詳細な特性評価によって、CO2水素化の構造敏感性が示されるとともに、2つのサイズ依存性反応経路が特定されている。
In situ quantitative single-molecule study of dynamic catalytic processes in nanoconfinement
doi: 10.1038/s41929-017-0021-1
ナノ閉じ込め効果は、多孔質材料が関与するあらゆる過程において重要である。本論文では、単一分子レベルや単一粒子レベルのナノ閉じ込め効果のin situ研究をターンオーバー分解能で可能にするナノ多孔質触媒プラットフォームが報告されている。
Solvent-determined mechanistic pathways in zeolite-H-BEA-catalysed phenol alkylation
doi: 10.1038/s41929-017-0015-z
ゼオライト触媒によるフェノール化合物のアルキル化は、再生可能芳香族を置換アレーンに変換して付加価値化する独特な可能性をもたらす。今回、機構的研究から、溶媒の極性を変えることによって反応経路が劇的に変化し、溶媒が表面種の性質とアルキル化求電子剤の生成経路に影響を与えることが明らかになっている。
Control of interfacial acid–metal catalysis with organic monolayers
doi: 10.1038/s41929-017-0019-8
二機能性不均一系触媒は、酸性担体または塩基性担体の上に金属を分散させることによって作製されることが多い。今回、担体を有機酸層でコーティングすることによって触媒をポスト機能化して酸性度を調節する方法が開発され、これによる特定の水素化脱酸素反応の性能向上が例示されている。
High-efficiency oxygen reduction to hydrogen peroxide catalysed by oxidized carbon materials
doi: 10.1038/s41929-017-0017-x
酸素の還元による過酸化水素の直接合成は、アントラキノン法に代わる魅力的な代替法である。今回、カーボン表面の酸素化と過酸化物合成における電極触媒性能を関連付ける一般的傾向が示されるとともに、計算科学的研究によって活性部位の性質に関する知見がさらに得られている。
Opportunities and challenges for combining chemo- and biocatalysis
doi: 10.1038/s41929-017-0010-4
化学触媒と生体触媒には、合成化学において異なる長所と短所がある。本Reviewでは、化学触媒と生体触媒を組み合わせる取り組みに注目し、この方法で実現可能な機会と、異なる系の間の不適合性を克服する取り組みについて概説する。
Electrophilic aromatic substitution over zeolites generates Wheland-type reaction intermediates
doi: 10.1038/s41929-017-0002-4
バイオエタノールによるベンゼンのアルキル化は、汎用化学品を合成する持続可能な方法となる可能性があるが、その反応機構に関する知見はほとんどない。今回Weckhuysenたちは、ゼオライト触媒を用いたエタノールによるベンゼンのアルキル化を調べ、活性アルキル化剤を特定するとともに、σ錯体中間体の存在を実験的に示している。
Technical photosynthesis involving CO2 electrolysis and fermentation
doi: 10.1038/s41929-017-0005-1
CO2と再生可能エネルギーから有用な化学物質を合成することは、魅力的だが難しい取り組みである。今回、市販の高効率CO2還元用電極を用いて長期間電気分解を行った後、得られた合成ガス生成物を発酵させることによってアルコールの工業的光合成を完結させたことが報告されている。
Imine hydrogenation with simple alkaline earth metal catalysts
doi: 10.1038/s41929-017-0006-0
水素化は、実験室スケールと工業スケールのいずれにおいても最も一般的な触媒プロセスの1つであり、貴金属触媒を用いて行われることが多い。今回、アルカリ土類金属アミドが温和な条件下でイミンを水素化できることが示されている。
A bioinspired soluble manganese cluster as a water oxidation electrocatalyst with low overpotential
doi: 10.1038/s41929-017-0004-2
自然界では、光合成の際、マンガン・カルシウムコアを有する酵素によって水が酸化される。今回、水を酸化する均一電極触媒として働く安定した水溶性マンガンクラスターを合成し、この触媒が低い過電圧と高いファラデー効率を示すことが報告されている。
Selective aerobic oxidation reactions using a combination of photocatalytic water oxidation and enzymatic oxyfunctionalizations
doi: 10.1038/s41929-017-0001-5
ペルオキシゲナーゼは、有機化合物を選択的に官能基化できるが、補助基質であるH2O2に対して敏感である。今回Hollmannたちは、可視光の存在下では、水の酸化触媒によって酵素へのH2O2の供給を制御できるため、化学量論的還元剤を用いなくても効率的な含酸素官能基化が可能になることを示している。
General synthesis and definitive structural identification of MN4C4 single-atom catalysts with tunable electrocatalytic activities
doi: 10.1038/s41929-017-0008-y
原子レベルで分散した金属触媒は、多くの触媒過程において重要性が増しているが、明確な構造同定が困難である。今回、窒素ドープグラフェン上の金属(ニッケル、鉄、コバルト)単原子触媒の一般的合成によって共通構造の同定が可能になり、さらに構造と電極触媒活性を関連づけることができた。
Magnetic field remotely controlled selective biocatalysis
doi: 10.1038/s41929-017-0003-3
生体触媒反応は、選択性があれば、薬物などのペイロードを適切に制御して放出できる大きな可能性を秘めている。今回、Minkoたちは、酵素と基質を別々のポリマーコートナノ粒子に結合させることで隔離し、磁場をかけてポリマーコート同士を融合させることによって触媒活性が発現することを示している。
Complete lignocellulose conversion with integrated catalyst recycling yielding valuable aromatics and fuels
doi: 10.1038/s41929-017-0007-z
リグノセルロースは廃棄物として大量に生み出されるが、安価で再生可能な有機化合物資源になる可能性がある。今回、リグノセルロースの全主要成分から有用生成物を得る過程によって完全変換が実現され、統合型触媒リサイクルが可能になることが示されている。
Magnetic field remotely controlled selective biocatalysis
doi: 10.1038/s41929-017-0003-3
生体触媒反応は、選択性があれば、薬物などのペイロードを適切に制御して放出できる大きな可能性を秘めている。今回、Minkoたちは、酵素と基質を別々のポリマーコートナノ粒子に結合させることで隔離し、磁場をかけてポリマーコート同士を融合させることによって触媒活性が発現することを示している。
Selective aerobic oxidation reactions using a combination of photocatalytic water oxidation and enzymatic oxyfunctionalizations
doi: 10.1038/s41929-017-0001-5
ペルオキシゲナーゼは、有機化合物を選択的に官能基化できるが、補助基質であるH2O2に対して敏感である。Hollmannたちは、可視光の存在下では、水の酸化触媒によって酵素へのH2O2の供給を制御できるため、化学量論的還元剤を用いなくても効率的な含酸素官能基化が可能になることを示している。
A bioinspired soluble manganese cluster as a water oxidation electrocatalyst with low overpotential
doi: 10.1038/s41929-017-0004-2
自然界では、光合成の際、マンガン・カルシウムコアを有する酵素によって水が酸化される。今回、著者たちは、水を酸化する均一電極触媒として機能する安定な水溶性マンガンクラスターを合成し、この触媒が低い過電圧と高いファラデー効率を示すことを報告している。
Electrophilic aromatic substitution over zeolites generates Wheland-type reaction intermediates
doi: 10.1038/s41929-017-0002-4
バイオエタノールによるベンゼンのアルキル化は、汎用化学品を合成する持続可能な方法となる可能性があるが、その反応機構に関する知見はほとんどない。今回Weckhuysenたちは、ゼオライト触媒を用いたエタノールによるベンゼンのアルキル化を調べ、活性アルキル化剤を特定するとともに、σ錯体中間体の存在を実験的に示している。