Nature Reviews Earth & Environment に掲載されたReview ArticleまたPerspectiveについて、その概要を日本語で紹介しています。
Climate change impacts on wind power generation
doi:10.1038/s43017-020-0101-7
風力発電は、気候変動を低減するために近年増加している。しかしながら、気候変動そのものが風力のエネルギー源を変化させる可能性がある。この報告では、予測される応答の空間変動を見いだし、現在および将来の風力エネルギー生産に影響を及ぼす気候メカニズムと支配的な内部変動について議論している。
Radionuclides from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant in terrestrial systems
doi:10.1038/s43017-020-0099-x
2011年の福島原子力発電所の事故は、10PBqの比較的長寿命の放射性セシウムを含む大量の放射性核種を大気中に放出した。この報告では、その後の年に陸上環境に降下した放射性核種の分布、移動および影響について詳しく述べている。
The shaping of erosional landscapes by internal dynamics
doi:10.1038/s43017-020-0096-0
浸食性の景観の形態は、気候およびまたはテクトニクスにより設定されていると考えられることが多いが、同じような地形の特徴は内部過程とフィードバックにより生じることがある。この報告では、内部及び外部過程がどのように景観の進化をもたらすか、またそのような過程は地形と層序学的な記録でどのようにして区別できるかを考察している。
An ice–climate oscillatory framework for Dansgaard–Oeschger cycles
doi:10.1038/s43017-020-00106-y
グリーンランドと北アメリカの温度の大きな変動は、ダンスガード・エシガー・サイクルと名付けられているが、大西洋子午線循環の強度変動と関連付けられてきた。しかしながら、そのメカニズムは議論となっている。この報告では、大気―海洋―氷の相互作用を含む、ダンスガールド・エシガー振動を説明する振動的枠組みを提案する。
Environmental impacts and decarbonization strategies in the cement and concrete industries
doi:10.1038/s43017-020-0093-3
コンクリートは最も広く使われている人工の物質の一つであり、世界人口の都市化の進行に対して重要である。しかしながら、広範に使用されているために、コンクリートは環境に負の影響を及ぼし得る。この報告では、コンクリ-生産を取り巻く環境的な懸念事項に取り組むための中期的及び長期的解決策を提供する。
Subduction erosion and arc volcanism
doi:10.1038/s43017-020-0095-1
沈み込みによる浸食は、沈み込み帯において上側のプレートからマントルへ地殻物質を輸送し、島弧のマグマ組成に寄与していると思われる。この報告では、全球の沈み込みによる浸食の証拠について論じ、テクトニクス的に侵食された地殻の寄与が島弧のマグマでどのように同定されるかを概観する。
Deforestation and reforestation impacts on soils in the tropics
doi:10.1038/s43017-020-0091-5
森林伐採と森林再生は、その下の土壌の性質と対応する生態系サービスを含む熱帯生態系に劇的な変化をもたらす。この報告では、このような土地利用変化の土壌への影響とその機能について論じる。
Internal wave-driven mixing: governing processes and consequences for climate
doi:10.1038/s43017-020-0097-z
内部波が駆動する混合は海洋の物理化学的性質に影響を及ぼす。この報告では、潮汐、風および地衡流により生じる内部波の生成、伝播および減衰を概観し、その気候への影響を探求する。
Vegetation fires in the Anthropocene
doi:10.1038/s43017-020-0085-3
植物火災はある生態系には不可欠だが、経済的および環境的には破壊的影響を及ぼし得る。この報告では、現代および将来の火災の領域、人新世における火災への適応、および、より良く火災を管理するために増大する学際的な研究の必要性について論じている。
Burning embers: towards more transparent and robust climate-change risk assessments
doi:10.1038/s43017-020-0088-0
燃えさし図は、気候変動による危機とその変化を示すために用いられている。この報告では、燃えさし図の概念について、その歴史と変遷を、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書で、透明性を増し、より系統的な過程を引き出すための方法論的な変化に焦点を置いて概説している。
South Pacific Convergence Zone dynamics, variability and impacts in a changing climate
doi:10.1038/s43017-020-0078-2
南太平洋収束帯は、南から東向きにソロモン諸島からフレンチポリネシアまで広がる豪雨帯で特徴づけられる。この報告では、南太平洋収束帯の対角的な方向、その変動度および、人為的な温暖化における予測される変化を説明する機構について論じている。
The concept and future prospects of soil health
doi:10.1038/s43017-020-0080-8
土壌の健康は作物の生産に必須だが、多くの生態系の活動にも重要である。この展望では、土壌の健康の定義、影響および定量化について検証し、土壌の健康に関する研究の必要性を概観している。
Climate change, tropical fisheries and prospects for sustainable development
doi:10.1038/s43017-020-0071-9
人類起源の気候変動がもたらすストレス要因は熱帯魚業を脅かし、それに依存した熱帯外の国々を脅かしている。この報告では、気候変動が熱帯の漁業資源と漁獲可能高、対応するテレカップリング、およびその後の適応度の指標に及ぼす影響について論じている。
Experimental elasticity of Earth’s deep mantle
doi:10.1038/s43017-020-0077-3
地震学は地球の深部マントルの構造と組成に対する情報を提供する。しかしながら、深部マントル鉱物の弾性的性質に対する正確な拘束条件なしでは、地震学的データセットを完全に解釈することは出来ない。この技術報告では、典型的なマントル鉱物の弾性率を調べるために用いられる現在の技術的手法について概観している。
The COVID-19 lockdowns: a window into the Earth System
doi:10.1038/s43017-020-0079-1
COVID-19の世界的大流行は大きな全球規模の影響を及ぼしている。この展望では、世界的流行が環境にもたらす影響に対する見通しを提供し、そのことが地球システムをよりよく理解する機会をどのようにして提供するかについて述べている。
Keeping pace with marine heatwaves
doi:10.1038/s43017-020-0068-4
海洋熱波として知られる、長期間にわたり海水の極端な高温が続く事象は、海洋生態系に破滅的な影響を及ぼす可能性がある。この展望では、物理的駆動力、監視及び予測手法を考慮した海洋熱波の予測可能性と利害関係者の関心を探っている。
Global lake responses to climate change
doi:10.1038/s43017-020-0067-5
気候変動は世界中の湖に影響を及ぼし、湖の氷の被覆、表面温度、蒸発率、水位および混合層に継続して変化を及ぼすと予測されている。この報告では、湖の気候変動に対する最近および予想される応答について議論し、湖の監視とモデル化についての今後の研究の機会について展望する。
Life and death of slow-moving landslides
doi:10.1038/s43017-020-0072-8
地滑りの中には、降雨、融雪、地震あるいは人為的な強制力等の外力により、年間数ミリメートルからメートルという低速度ですべるものがある。この報告では、ゆっくりと動く地滑りに対する最近の理解の進捗について論じ、ゆっくりと動く地滑りが加速したり、大きく動いて破壊されたりする状況について検証する。
Nitrous oxide emissions from permafrost-affected soils
doi:10.1038/s43017-020-0063-9
永久凍土により影響を受けた土壌は、現在は評価されていないが強力な温室効果ガスである亜酸化窒素の重要な発生源となる可能性がある。この報告では、永久凍土による影響を受けた土壌における亜酸化窒素の変動の全球的な重要性を概観し、何が亜酸化窒素の流量を支配するか検証し、気候変動がこのような温室効果ガスの放出に及ぼす影響について論じる。
A typology of compound weather and climate events
doi:10.1038/s43017-020-0060-z
過去数年にわたり、複合的な事象についての研究は深化したが、類型論は存在しなかった。この報告では、あらかじめ条件が設定された多変量の、時間的および空間的に複合的な事象を取り込む包括的な分類手法を提案する。
Multiphase flow behaviour and hazard prediction of pyroclastic density currents
doi:10.1038/s43017-020-0064-8
火砕性密度流は、火山噴火から生成される複雑な多相流であり、全球の火山犠牲者のほぼ3分の1の原因となっている。この報告では、火砕性密度流中の複雑な内部過程と、それらがどのように流れの力学と災害の範囲に対して影響を及ぼすかについての最近の進捗を議論する。
Metal contamination and bioremediation of agricultural soils for food safety and sustainability
doi:10.1038/s43017-020-0061-y
農業用土壌の重金属とメタロイドによる汚染は、人間と生態系の健康に重大な結果をもたらす。この報告では、重金属とメタロイドの汚染源、これらの汚染が生物および地球化学的土壌元素と相互作用するメカニズム、および植物および微生物に基づいた修復の戦略について議論する。
Mountains, erosion and the carbon cycle
doi:10.1038/s43017-020-0058-6
侵食が増大することで、山脈の形成は大気中の二酸化炭素(CO2)の進化と全球の気候を操作することが出来る。この報告は、珪酸塩の風化に関する標準的な焦点を拡大して、CO2の吸収源(珪酸塩の風化と有機物炭素の埋設)とCO2生成源(酸化的風化)の両方を含む侵食による炭素の総収支を考察する。
The formation, character and changing nature of mesoscale convective systems
doi:10.1038/s43017-020-0057-7
メソスケールの対流システムは、多くの熱帯および中緯度地域における重要な降水の生成源であるが、極端な降雨、デレーチョおよび竜巻などの危険な気象現象も生成しうる。この報告では、メソスケールの対流システムの形成、その危険な気象現象、予測可能性および人為的な温暖化に伴って予想される変化を論じる。
Monitoring ocean biogeochemistry with autonomous platforms
doi:10.1038/s43017-020-0053-y
これまでの海洋観測手法は、大規模な生物地球化学的過程を検出するためには不向きなことがあった。この視点では、これまでの観測手法を補い全球の生物地球化学的データセットを生成するために、自律的な観測プラットフォームを実装する利点について論じる。
The first decade of scientific insights from the Deepwater Horizon oil release
doi:10.1038/s43017-020-0046-x
ディープウォーター・ホライズン事故は、最大の偶発的な環境への原油流出事故であり、事故の最中と後に懸命に調査がなされた。この報告では、その後に石油化学、分散剤の応用および微生物学でなされた進展について論じる。
Renewed and emerging concerns over the production and emission of ozone-depleting substances
doi:10.1038/s43017-020-0048-8
オゾン層破壊物質の規則に従わない新たな放出と超短寿命の物質は、モントリオール議定書の継続した成功と、それによるオゾン層の回復の時間スケールに問題を投げかけている。この報告では、人工的および天然のオゾン層破壊物質と超短寿命物質の放出の最近の傾向を議論し、大気オゾン濃度に対するそれらの潜在的影響を検証する。
Developments in understanding seismicity triggered by hydraulic fracturing
doi:10.1038/s43017-020-0049-7
水圧破砕は、さまざま直接的及び間接的なメカニズムによって地震の引き金となり、傷害や死者をもたらし、重要なインフラに損害を与えうる。この報告では、誘発地震を予測し災害を軽減するための6個の基本的な問題について考察する。
The environmental price of fast fashion
doi:10.1038/s43017-020-0039-9
衣料品の消費増大は、ファストファッションが良い例だが、環境には重大な結果をもたらす。この報告では、ファッションの天然資源と環境に及ぼす影響について議論し、技術、政策および消費者の行動が、どのようにしてファッション産業の負の効果を低減しうるかを検証する。
Diffusion chronometry and the timescales of magmatic processes
doi:10.1038/s43017-020-0038-x
噴火準備段階におけるマグマ過程の時間スケールに拘束条件を与えることは、災害評価と火山監視ネットワークに情報を与える上で重要である。この報告では、結晶内化学組成ゾーニングの再平衡を用いて時間の情報を抽出する拡散時間測定法の、マグマ過程の時間スケール理解のための応用について議論する。
Climate impacts of the El Niño–Southern Oscillation on South America
doi:10.1038/s43017-020-0040-3
エルニーニョ南方振動は、この現象の理解が初めて現れた南アメリカを含む全球の気候に強い影響を及ぼす。この報告では、南アメリカに対するエルニーニョ南方振動の影響について概説し、その結果となるテレコネクションのメカニズムと多様性に焦点を当てる。
Responses and impacts of atmospheric rivers to climate change
doi:10.1038/s43017-020-0030-5
強力な水蒸気の輸送により、大気の川は極端な降雨や洪水などの水文学的災害と関連している。この報告では、大気の川の特徴と影響が、どのように温暖化、物理法則の統合、観測およびモデル化に変化を及ぼしうるかを議論する。
Deep-ocean polymetallic nodules as a resource for critical materials
doi:10.1038/s43017-020-0027-0
深海の多金属団塊は、グリーンエネルギー技術と乗り物に極めて重要な天然資源となる大量の必須金属を含んでいる。この報告では、このような団塊の生成過程に焦点を当て、この発展途上にある産業を前進させることによる長所と短所を概観する。
Probing space to understand Earth
doi:10.1038/s43017-020-0029-y
地球から得られた教訓は、しばしば他の惑星に当てはまることがあるが、太陽系とその遠方から我々の惑星について学ぶこともたくさんある。この視点では、他の惑星が地球科学に対する類似物、実験対象および記録保管庫となる、地質学的および大気科学的な例に焦点を当てる。
Carbon dioxide storage through mineral carbonation
doi:10.1038/s43017-019-0011-8
炭素の捕獲と貯蔵は人為的な温暖化を1.5-2℃に抑えるために重要な役割を果たす。この報告では、炭素捕獲と貯蔵の戦略における、その場での鉱物炭酸塩化の基礎、可能性及び限界について論じる。
River dam impacts on biogeochemical cycling
doi:10.1038/s43017-019-0019-0
河川のダムは水力を動力化し、洪水を制御して水を貯蔵するが、貯水湖や下流の環境における生物地球化学を変化させる可能性がある。この報告では、栄養素の循環と温室効果の生成に関する影響について議論し、ダムの寿命のすべての段階において生物地球化学的循環を考慮する必要性を強調する。
The geological history and evolution of West Antarctica
doi:10.1038/s43017-019-0013-6
西南極の複雑な地質史を理解することは、地球全体で大陸縁辺域の形成に対する洞察を提供する。この報告では、過去5億年にわたる西南極の火山活動、大陸の成長および分裂について詳述する。
The emergence and evolution of Earth System Science
doi:10.1038/s43017-019-0005-6
地球システム科学(ESS)は地球変動を調べ理解するための強力な道具として現れた。この「視点」では、ESSの歴史を概観し、真に統合されたESSの成果を構築するために必要な人間と生物地球物理学的ダイナミクスの完全な統合を主張する。
Uncertainty and the basis for confidence in solar geoengineering research
doi:10.1038/s43017-019-0004-7
気候変動の論説において成層圏エアロゾルの地球工学を取り巻く議論が増加しているが、その影響に対する理解は比較的限定されている。この「視点」では、成層圏エアロゾルの地球工学に関する不確実性と危険を論じ、優先すべき研究の問題に対する示唆を提供する。
Seismic wavefield imaging of Earth’s interior across scales
doi:10.1038/s43017-019-0003-8
数値手法と高性能計算機の進歩は、地震波伝播の物理的性質を用いた複数スケールにわたる地球内部の可視化を可能としている。この技術報告では、制御震源と自然地震学における全波形インバージョンの利用について概観する。
Sea-level rise and human migration
doi:10.1038/s43017-019-0002-9
海水面上昇は、直接的な氾濫と関連する災害にさらされる危険の増加により数百万の人々に移住の脅威を与えている。この報告では、海水面上昇に関連した移住の危機にある人口に焦点をあて、移住の決断に影響を及ぼす個人および制度上の要因を論じる。
Characteristics, drivers and feedbacks of global greening
doi:10.1038/s43017-019-0001-x
地球の植生は増加しており、陸上の炭素吸収量を増加させる可能性をもっている。この報告では、この全球緑化現象の発生と駆動力、および炭素循環と陸地-大気間の熱および水流量にどのような影響を与える可能性があるかを論じる。