Article 成体マウス膵臓に由来し神経および膵細胞となる多能性前駆細胞のクローンの同定 2004年9月1日 Nature Biotechnology 22, 9 doi: 10.1038/nbt1004 成体の膵前駆細胞と目される細胞クローンの単離は、糖尿病の細胞置換療法の開発を目指す研究者にとって達成困難な目標であった。本論文で示すのは、成体マウス膵臓に由来する多能性前駆細胞のクローンの同定である。膵細胞に関して実施した無血清でのコロニー形成試験で同定された前駆細胞は、膵島および膵管の細胞集団に由来する。この細胞集団はin vitroで増殖し、神経および膵前駆細胞のマーカーを共発現するクローンのコロニーを形成した。コロニーはそれぞれ別々の細胞集団に分化し、ニューロンおよびグリア細胞、膵内分泌β、α、およびδ細胞、それに膵外分泌および星細胞が形成された。また、新たに形成されたβ様細胞には、グルコース依存性Ca2+反応性およびインスリン放出が認められた。膵細胞コロニーには、胚性幹細胞マーカーも、中胚葉性および神経堤起源を示唆する遺伝子も発現が認められなかった。今回同定した細胞は、成体がもつ従来未同定の膵前駆細胞集団であり、細胞を利用した治療法への応用が期待される。 Full text PDF 目次へ戻る