遺伝学:ヒトパンゲノムの概要参照配列が初めて発表される
First draft of a human pangenome
doi: 10.1038/s41586-023-05896-x
doi: 10.1038/s41586-023-05896-x
doi: 10.1038/s41587-021-01195-w
多くの臓器系では、構成タンパク質が生殖系列のDNA配列にコードされており、その組成は環境に変動があっても比較的安定している。これに対し、免疫系の細胞が発現する受容体は、生殖系列のDNA領域の無作為で予測不能な体細胞組換えによって組み立てられる上、病原体に遭遇するとこの受容体にはさらに変異が生じ、それを発現する免疫細胞は増殖または消失することもある。その結果、免疫の「レパートリー」には個体差が生じ、同じ個体でも免疫系は感染や加齢、疾患によって経時的に大きく変化する。
この大規模な個体内および個体間の多様性が、ヒト免疫系の詳細な解明と操作を阻む大きな技術的障害となっている。今月号の特集には、こうした技術的課題を克服する研究の最近の進展に関する一連の記事と論文を掲載した。ただし、この分野の進歩を阻む要因は技術だけではない[Editorial, p. 145]。
それぞれの個体には数百万通りのBリンパ球とTリンパ球が存在し、それぞれが固有の受容体を発現している。こうした受容体の重要性は侮れない。分泌されたB細胞受容体は病原体を中和する抗体になり、T細胞受容体(TCR)は微生物に感染した細胞を認識してその細胞死を引き起こす。この受容体を個別に同定して目録作りを行うために、DNA塩基配列の解読が行われている。これは、数百万個の変数を明らかにするのに十分な処理能力を有する数少ない既存技術の1つである。
George GeorgiouとGregory Ippolito、John Beausang、Christian Busse、Hedda Wardemann、Stephen Quakeは、急速に進化する「抗体レパートリー配列解読」の分野を検討し、さまざまな方法論の長短を概説するとともに、その方法によってすでに解決された、あるいは将来的に解決が期待される基礎的および臨床橋渡し的問題を明らかにしている[Review, p. 158]。
Evan NewellとMark Davisの総説では、TCRレパートリーの配列解読法を概説している[Review, p. 149]。ただし、配列を解読して終わりという話ではなく、ここでは、新たなディスプレイ技術とサイトメトリー技術を用いて、対象とする抗原に特異的な受容体を発現するT細胞を同定する方法も示されている。
免疫学の高処理能データセットを生成するには多額の費用と長い時間を要するため、複数の研究室でデータセットの共有を図ることが重要な目標となっている。HIPC(Human Immunology Project Consortium)は、免疫学研究でこうしたデータ共有を一般的なものとするために必要な基準とリポジトリー、解析方法の設計に取り組んでいる[Correspondence, p. 146]。
今回の特集の大きな目標の1つは、そうした新しい技術と解析方法を開発する科学者と、免疫学の基礎的および臨床橋渡し的問題を研究する免疫学者および臨床医とが、相互に対話を進められるようにすることである。そのため今回の特集では、姉妹誌Nature Immunologyとの共同制作を行った。この2つの研究コミュニティーの間で議論を進めることにより、健康時と疾患時のヒト免疫系の働きが明らかにされるとともに、免疫系の操作によって治療効果を得るための方法が設計されるものと期待される。
doi: 10.1038/nbt.2795
doi: 10.1038/nbt.2777
doi: 10.1038/nbt.2783
doi: 10.1038/nbt.2782
doi: 10.1038/nbt.2832
doi: 10.1038/nbt0214-111
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doi: 10.1038/nbt0214-115a
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doi: 10.1038/nbt0214-116a
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doi: 10.1038/nbt.2811
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doi: 10.1038/nbt.2826
doi: 10.1038/nbt.2807
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doi: 10.1038/nbt.2824
doi: 10.1038/nbt.2810
doi: 10.1038/nbt.2813
doi: 10.1038/nbt.2799
doi: 10.1038/nbt.2806
doi: 10.1038/nbt.2797
doi: 10.1038/nbt.2798