Perspective
Smac擬似体および自然免疫刺激は相乗的に腫瘍の死を促進する
Nature Biotechnology 32, 2 doi: 10.1038/nbt.2806
Smac擬似物質(SMC)はアポトーシス阻害(IAP)タンパク質の活性に対抗することでアポトーシスに対する細胞の感受性を高める薬物群であり、がん患者の第I相臨床試験で安全性が証明されている。しかし、SMCはアポトーシス誘発シグナルの伝達を可能にすることによって作用するため、SMCの単独投与は、腫瘍が炎症性サイトカインなどの細胞死誘発性タンパク質を大量に産生している一部の患者でしか効果を示さない可能性がある。そこでSMCは、強力でありながら安全な「サイトカインストーム」を刺激する薬剤と相乗作用を示すのではないかと考えられた。本論文では、SMCで処理したがん細胞で、腫瘍破壊性ウイルスおよびpoly(I:C)やCpGなどのアジュバントが、インターフェロンβ(INF-β)や腫瘍壊死因子α(TNF-α)、TNF関連アポトーシス誘発性リガンド(TRAIL)の媒介する巻き添え細胞死を誘発することを示す。この併用療法により、2種類のがんマウスモデルで腫瘍が退縮して生存期間が延長した。こうしたアジュバントは臨床試験で安全性が証明されているため、SMCとの併用に関する臨床的有効性の検討は有意義と考えられる。