Perspective
組織再生のための幹細胞ニッチの調節
Nature Biotechnology 32, 8 doi: 10.1038/nbt.2978
再生医療分野は、現在難治性の疾患の治療に関して期待が大きい。細胞移植戦略を組織再生に採用しようとする研究者が多いが、治療には、幹細胞の微小環境(ニッチ)を操作して内因性の幹細胞による修復を促進する方法もある。ニッチは極めて動的で、介入の機会が多い。その例として、低分子、生物製剤、または生体材料を使用することによって細胞同士および細胞と細胞外基質との相互作用のようなニッチの特異的側面を狙い、幹細胞の増殖または分化を刺激したり、分化細胞を幹細胞へと脱分化させたりすることが挙げられる。しかし、治療を目的とするニッチへの作用にはさまざまな課題があり、特に、送達および応答の特異性を実現することが困難である。再生医療による治療の成功には、幹細胞およびニッチ細胞を標的とする因子のさまざまな組み合わせを、幹細胞・ニッチ相互作用の力学に従って、回復をもたらすべくさまざまな時点で用いることが必要と考えられる。