Perspective
複合的な遺伝子損傷を有する骨髄悪性腫瘍マウスモデルのCRISPR-Cas9ゲノム編集による作製
Nature Biotechnology 32, 9 doi: 10.1038/nbt.2951
ヒトの悪性腫瘍では4個以上のドライバー遺伝子が変異している場合が多いことがゲノム塩基配列解読研究で示されているが、従来の育種で遺伝的にそれだけ複雑なマウスモデルを再現することは困難である。今回我々は、ゲノム編集のCRISPR-Cas9法を用いてこの限界を克服した。低分子ガイドRNA(sgRNA)とCas9の組み合わせをレンチウイルスベクターで導入することにより、単一のマウス造血幹細胞(HSC)で5個もの遺伝子を改変すると、クローンが大きく増殖して骨髄の悪性腫瘍が生じた。これにより、エピジェネティック修飾因子、転写因子、およびサイトカインシグナル伝達メディエーターをコードする遺伝子に協働的変異を持つ急性骨髄性白血病(AML)のモデルが作製され、患者に認められる変異の組み合わせが再現された。今回の結果は、レンチウイルスで導入されるsgRNA:Cas9のゲノム編集が、ヒト疾患の複雑性をさらに忠実に反映する幅広いin vivoがんモデルの作製に有用であることを示唆している。