2022年1月号Volume 19 Number 1

数千億円の「脳地図」から見えてきたこと

「宇宙から地球を観察して、人間の会話を盗み聞きするようなもの」。そうたとえられる脳地図作りに、世界中の科学者たちが力を合わせて取り組んでいる。脳の細胞同士のつながりを把握することで脳が働く仕組みを理解し、医療につなげることが目的だ。各国の予算を合わせると約9000億円にもなるが、その取り組みは、脳神経科学に既に新たな視野をもたらしている。

Editorial

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Publishing Academy

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News in Focus

電子が結晶化した状態である「ウィグナー結晶」は微小で壊れやすく、直接観察が極めて難しい。今回、デバイスをグラフェンで覆い、その上から観察することによって、この電子の結晶の顕微鏡での撮影が可能になった。

現生の家畜ウマの祖先については謎が多く、議論になっていた。このほど、古代ウマのDNA解析により、4000年前の西ユーラシアの草原に生息していたウマが遺伝的な起源であることが明らかになった。

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Features

クライオ電子線トモグラフィーなどの最新の顕微鏡法によって、細胞の内部を、本来の密集した状態のまま可視化することが可能になった。

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Japanese Author

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スキルス胃がんは進行が早く、発見されたときには手遅れのことが多い。それ故、研究用の検体を得るのが難しく、治療法の開発も遅れていた。今回、患者の腹水に含まれる細胞を用いることで、スキルス胃がんの網羅的ゲノム解析が初めて行われ、治療標的を見つけることに成功した。研究を行った国立がん研究センター研究所の間野博行所長と佐々木博己研究員に話を聞いた。

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News & Views

ヒトの脳の前頭前野は他の生物種よりも大きい。マウス、マカク、ヒトの脳の比較により、これらの違いの背後にある遺伝的・分子的要因のいくつかが明らかになった。

複数の電磁石を使って、磁性体でない金属物体に触れずに、金属物体を自在に動かすことができた。この方法は、SFの「トラクタービーム(牽引ビーム)」のように、宇宙でスペースデブリなどの危険な物体を動かす作業に使えるかもしれない。

ある種のがんは、人を消耗させ、衰弱させる悪液質という状態に陥らせる。今回、こうしたがんの悪液質マウスモデルにおいて、通常は筋肉の神経支配と量を保護している分子が、腫瘍によって阻害されることが示された。この発見は、致死的ながんを治療する方法につながるだろうか?

夜間を含んで長い絶食時間を作ると健康寿命が延びることが、ショウジョウバエを使った研究で示された。これは、夜間には、細胞内の物質が分解されてリサイクルされるオートファジーと呼ばれる過程が促進されることと関係している。

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Advances

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Where I Work

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Brother Guy Consolmagnoは、バチカン天文台長、バチカン天文台財団理事長。

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