Free access
2022年5月号Volume 19 Number 5
心臓と頭部の結び付きの謎
頭はどのように生じたのか? ヒトと同じ哺乳類であるマウスで、頭部に分化する胚の細胞が、心臓に分化する細胞と同じ集団と分かったのは2010年のことだ。一方、脊椎動物に最も近い無脊椎動物は、手足もなければ頭もないホヤと明らかになり、生物学界に衝撃がもたらされたのは2006年。現在、ホヤをはじめとする尾索動物から脊椎動物のボディープランの進化に関する手掛かりが得られ始めている。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「夜に太陽光を利用する方法」「DNA鎖がブロックの自己組織化を促す」「ツタンカーメンの鉄剣は空からの贈り物 」他(2022年2月3日〜2月24日号)。
Publishing Academy
学術界サバイバル術入門 — 助成金を申請する⑤:申請書を仕上げる
ここまで、研究提案の練り方と申請書への書き方について説明してきました。今回は「助成金を申請する」シリーズの最終回です。申請書を完成させましょう!
News in Focus
ゲノムのある1塩基の変化が、小型犬・大型犬の違いに関与
イエイヌの体の大きさの多様性を説明する変異が見つかった。その遺伝的バリアントは、古代のオオカミに由来するものと考えられる。
核融合炉のエネルギー発生量で新記録
欧州トーラス共同研究施設が、核融合により発生したエネルギー量の記録を従来の2倍に更新した。
Free access
子どもはCOVID-19にかかっても抗体が誘導されにくい
子どもでは、COVID-19を罹患した際にSARS-CoV-2に対する抗体が不思議なほど誘導されない。子どもは、大人よりもはるかに迅速にこのウイルスを体から排除できるのがその理由と考えられる。
ブレグジットから1年:政治に翻弄される英国の科学者たち
EUの研究開発支援プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」への英国の参加を巡る交渉が難航する中、英国の研究者たちは政府によるセーフティーネット資金が途切れることを心配している。
激震、NIHが助成金受給者にデータ共有を要請
科学者たちは、NIHの方針は生物医学研究の新たな標準となるとみているが、その段取りや公平性については疑問を感じている。
CAR-T細胞療法実施から10年、白血病の再発がない患者の転帰
CAR-T細胞療法を受けた最初の2人の白血病患者は、10年以上が経過した今でも寛解状態を保っている。
Free access
COVID罹患後に糖尿病リスクも上昇
SARS-CoV-2感染後、それがたとえ軽度であっても、糖尿病を発症しやすくなる可能性があることが大規模研究から示された。糖尿病のリスクを抱えている人は、特に要注意だ。
Feature
心臓と頭部の結び付きの謎
手足もなければ頭もないホヤ。その研究から、脊椎動物のボディープランの進化理論が書き換えられている。
Japanese Author
Free access
ニューロン間の情報伝達は「押す力」でも引き起こされる!
ニューロンの樹状突起には「スパイン」と呼ばれる出っ張り構造が多数あり、スパイン頭部は長期記憶の形成に際して増大することが知られている。この現象を見いだし、スパインの可塑性と機能について研究を続けてきた河西春郎・東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構特任教授は、このほど、スパインの頭部増大で生じた圧力が軸索側のシナプス前部を押すことで、ニューロン間の情報伝達が行われることを突き止めた。
News & Views
原子干渉計で地下のトンネルを検出
超低温の原子を使った量子センサーで重力の変化を感知し、都市の道路下の地下トンネルを検出できた。この研究結果について、量子センシングと地球物理学の観点から3人の研究者が解説する。
最強磁場中で磁気単極子を探す
今回、CERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での鉛イオン同士の衝突によって、これまで宇宙で測定された中で最も強い磁場が生成され、単一の磁荷のみを持つエキゾチック粒子「磁気単極子」の探索が可能になった。
世界の主要作物の接ぎ木問題が解決
接ぎ木は、園芸や研究で、異なる植物体の組織を接合するのに古くから利用されてきた。今回、この技術を単子葉類という植物群に拡張する方法が考案され、イネやコムギ、トウモロコシやバナナなどの主要作物でも接ぎ木ができるようになった。
1型糖尿病の原因となるT細胞サブセット
自己免疫疾患である1型糖尿病を引き起こす、特定のT細胞サブセットが突き止められた。これは自己免疫疾患の発症を理解する手掛かりになり、また、新しい治療法への道を示す可能性がある。
脳のニューロンは腸の炎症を再燃させる
神経系と免疫系は双方向に相互作用する。体内の炎症によって脳細胞が活性化され、後にその脳細胞が再び活性化されると、それが引き金となって炎症応答が再発する可能性があることが明らかになった。
Advances
温暖化でアホウドリの離婚が増加
海水温上昇がアホウドリの“結婚”に冷や水を浴びせている。