Free access
2022年6月号Volume 19 Number 6
アルツハイマー病を発症前に治療する
認知症全体の約3分の2を占めるアルツハイマー型認知症。その社会的な影響の大きさから治療薬の開発が強力に推し進められているが、明確な効果を示すものは得られていない。臨床試験が行われている薬の多くは脳のアミロイド斑を標的としているのだが、試験参加者の病が進行し過ぎていたために効果が得られなかった可能性があるという。そこで現在、発症前の人に薬を投与する試験が進められている。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「排出ガスを工業用原料に変える改変微生物」「塩味が花粉媒介者を引き寄せる」「マダガスカルの巨大鉱山が生物多様性オフセットに成功」「ヘビは獲物の締め付けと呼吸を分けている」「膵島の凍結保存手法から糖尿病の治癒を目指す」他(2022年3月3日〜3月31日号)。
News in Focus
人の一生で脳の大きさがどう変化するかが明らかに
人の脳が年齢とともにどのように拡大・収縮するかを示す包括的な成長曲線が、初めて作成された。将来、日常的な臨床ツールとして使用されるかもしれない。
脳スキャンに基づく研究結果の多くは信頼性不足
脳画像の特徴を認知能力などの形質と関連付ける研究は、規模が小さ過ぎて信頼性が低い可能性がある。
Free access
何がCOVID-19の重症化を引き起こすのか
COVID-19重症化の原因に、手掛かりがもたらされた。新型コロナウイルスに感染した免疫細胞が炎症反応を暴走させていることが示唆されたのだ。
Free access
COVID対策規制の解除に科学者たちが思うこと
各国で規制の解除が進んでいるが、ペースは速過ぎないか? そもそも、規制解除には早過ぎるのではないか? 研究者の間でも意見は分かれている。
嫦娥5号が持ち帰った「月の石」から火山活動に新知見
中国の月探査機が人類の未踏領域から持ち帰った試料は月の進化に関する興味深い知見を続々ともたらしている。
著作権侵害訴訟でResearchGateに打撃
出版社が学術ネットワークサイトResearchGateを訴えていた裁判で、ドイツの地方裁判所は、ResearchGateはユーザーがアップロードする論文に対して責任を負うとする判決を下した。
放射性炭素年代測定法が絵画の贋作を見破る捜査ツールに
炭素14を測定する技術が進歩を遂げ、偽造美術品を見極めるためのツールとしての評価が高まった。
パルサーによる重力波検出に一歩接近
パルサーを使って重力波を検出する計画が世界各地の大型電波望遠鏡を使って進んでいる。検出に向けて重要な兆候が見えてきた。
Features
アルツハイマー病を発症前に治療する
脳内の有害なタンパク質を除去する目的で、発症前の人に薬を投与する試験が行われている。
ウイルス感染の長期的な影響
多発性硬化症という慢性疾患に、ウイルス感染が関わっていることが分かった。ウイルス感染が引き金となる慢性疾患は、ワクチンで予防できるのか? どうすれば、その効果を確認することができるだろう?
Japanese Author
Free access
運転技術とマナーを兼ね備えたAI、『グランツーリスモSPORT』で勝利
PlayStation®4︎の自動車レースゲーム『グランツーリスモSPORT』。新たに開発された人工知能(AI)が、このゲームの世界チャンピオンに勝利した。レースで勝つには、リアルタイムに車両を制御していく能力に加え、対戦相手に敬意を払って運転するマナーを学ぶ必要もあった。このAIの研究開発メンバーの1人、河本献太氏(株式会社ソニーAI)に話を聞いた。
News & Views
有機合成反応の課題を電気で解決
有機合成では、炭素–炭素結合の形成反応に遷移金属触媒を用いることが多い。今回、遷移金属触媒を一切必要としない巧妙な電気化学的手法が開発され、これまで困難だった反応の実現に向けて、道が開かれた。
スマートセンサーを日常生活に織り込む
感度と柔軟性を兼ね備えたハイブリッド設計によって、布地に編み込むことができる単繊維状の音響センサーが作られた。将来、健康や体力を管理するデバイスはウエアラブルになり、おそらく埋め込み可能にもなると思われる。
免疫細胞はがん細胞の遺伝暗号の解読を変化させる
がん細胞では、免疫細胞によってトリプトファン不足が引き起こされると、トリプトファンがフェニルアラニンに置換されたタンパク質が産生される。この知見から、遺伝暗号を解読する際の予想外の動態が明らかになった。
遺伝子調節の神託
生物学研究の長年の目標は、DNA塩基配列から遺伝子発現を予測できるようになることだ。人工知能の1つのタイプであるニューラルネットワークを、ハイスループット実験と組み合わせることで、この目標に一歩近づいた。
全ての生物はメタンを作るのかもしれない
酵素を使ってメタンを生成できる細菌が存在することは、教科書にも書かれている。今回、活発に代謝を行う全ての細胞で、酵素に依存しない別の方式によってメタンが生産されているという証拠が示された。
Advances
幻の指
6本目の指を生む異様な錯覚。
Where I Work
Advertisement