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2022年9月号Volume 19 Number 9
脳の守護者たち
科学者たちは長い間、脳は免疫細胞集団から完全に遮断されていると考えてきた。しかし近年、脳の境界部には免疫細胞が豊富に存在していて、脳と免疫系は密接であることが分かってきた。ミクログリアをはじめ、さまざまな免疫細胞たちが脳を監視し、保護していることは、新たな常識となりつつある。
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mRNAワクチンとmRNA治療薬:COVID-19の先にあるもの
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「広大な商業用植林がもたらす生物多様性の危機」「カーボンナノベルトにひねりを加えて『メビウスの輪』に」「植物の葉には虫のDNAが残されている」「動き回ってポンプにもなる、多才な折り紙ロボット」「わずかな温度変化を測定できる微小な温度計」、他
Publishing Academy
学術界サバイバル術入門 — OA出版②:助成金受給の要件としてのOA
OA出版は、研究論文を誰でも自由に閲覧できる状態にする出版方式で、人々に利益をもたらし、研究のインパクトにも影響を与え得るものです。今回は、助成金配分機関がそれを義務付けるようになった経緯と現状をお話しします。
News in Focus
鳥インフルエンザ集団発生、過去最大規模に
野鳥の集団感染は、この感染症に弱い種に深刻な影響を与える上、封じ込めが難しい。
キリンの首が長くなったのはモテるからかもしれない
このほど新種として記載された古代のキリン類動物の化石には、激しい頭突きを行うために進化した分厚いヘルメットがあった。
古DNAでたどる黒死病の起源
キルギス共和国の墓で発見されたペスト菌が、中世の黒死病パンデミックを引き起こした菌株の直接の祖先であることが示された。シルクロード沿いの街が、この歴史的大流行の発生源であった可能性がある。
アマゾンの密林が隠していた古代都市遺跡を発見
考古学の定説に反して、アマゾン川流域で初めて都市中心部の遺跡が発見された。
巨大テック企業のAI言語モデルにオープンソースモデルが挑戦状
このほど発表された大規模言語モデル「BLOOM」は、機械学習システムが訓練に使った文章を通して人のバイアスを受け継ぐという問題の解決を目指している。
データを共有すると言いながら共有していない研究者たち
論文上でデータ共有の意思を示しながら、実際には共有しない研究者は多い。その理由として、データ共有に関するインフォームド・コンセントや倫理的承認を得ていないことや、データの紛失などが挙げられている。
単細胞で1cm! 既知最大の細菌は構造も複雑
単細胞生物なのにセンチメートル級の細菌が見つかった。この細菌に「微生物」という用語は不適切だろう。
Features
貧困を減らす方法を求めて
科学者たちは、不平等や貧困への対策の効果を無作為化比較試験で検証してきた。その知見は、これらの問題に取り組む政府や支援機関の研究方法や実践方法を変えつつある。
脳の守護者たち
脳の境界部には、免疫細胞が豊富に存在していることが分かってきた。ここの免疫細胞たちが脳を監視し、保護していることは、新たな常識となりつつあるばかりか、治療法への光となりそうだ。
Japanese Author
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RNAの可逆的なリン酸化修飾を発見
遺伝子を基にタンパク質を合成する過程において、アミノ酸を運ぶ転移RNA(tRNA)。その機能を調節する「RNAの可逆的なリン酸化」という新たな種類の修飾が、鈴木 勉・東京大学教授が率いる研究グループにより発見された。tRNAがリン酸化修飾されると、タンパク質合成の耐熱性が大きく向上することから、RNAのリン酸化修飾は、RNA医薬などへの応用も期待される。
News & Views
生態系の経済的価値評価の25年間
世界の生態系がもたらす経済的な価値は、1997年に初めて見積もられたが、この研究にはさまざまな反響があった。生態系の経済的価値の評価はそれからどのように進んだのだろうか? そうした価値を意志決定に用いる最前線は今、どうなっているだろうか?
貴ガスの化学の60年
1960年代初頭、不可能と思われていたキセノンの化合物が初めて合成され、貴ガス元素の反応性の欠如に関する長年の神話が一掃された。この歴史的偉業によって大きく開かれた扉のその先で、貴ガス元素の豊かな化学についての研究は、今なお活発に続いている。
正確かつ完全なヒトゲノム塩基配列が完成
これまでに公開されたヒトゲノムの塩基配列は、反復配列を含んだDNA領域に配列未決定の部分がギャップとして残っていた。このたび、最先端の技術を組み合わせて使用することで、完全なヒトゲノム塩基配列が初めて得られた。
運動によって産生される分子が空腹感を失わせる
Lac-Pheと呼ばれる代謝物は、運動によって誘導される「筋肉の灼熱感」に関連している。この分子が、マウス・競走馬・ヒトにおいて運動後の食物摂取量を減少させ、肥満マウスでは体重減少を引き起こすことが分かった。
人工タンパク質を生細胞で合成する回路でがん免疫療法をより安全に
T細胞にカスタマイズ可能な人工受容体タンパク質を発現させて、柔軟な制御ができることが報告された。こうした人工タンパク質設計の枠組みが明確になったことで、がん免疫療法で利用できる可能性が高まった。
Advances
巻き貝のインスリン
イモガイの致死的な毒が救命薬のヒントになる可能性。