2007年5月号Volume 4 Number 5
Editorial
News
棚氷の消えた南極海の生態系
この10年あまりの間に、南極半島の東側では大きな棚氷が2つ崩壊し、数千年にもわたって氷に隠されていた海底の一部に日光が届くようになった。1月下旬に終了した10週間の調査では、この海の生物学に光明が投じられ、この海域から約1000種の試料が収集されたが、その一部は新種ではないかとみられている。
News Features
われら地球家族、真の「家系図」を求めて
生命の系統樹を更新して精度を高めていくには、進化生物学のスキルとゲノム解析研究で得られたデータの両方が必要だ。しかし、両者とも正念場にありながら、互いを無視しているのが現状である。John Whitfieldが報告する。
究極の光
物理学者たちは、時空の織物を引き裂く強力なレーザーを開発しようと計画している。Ed Gerstnerが報告する。
祖国を離れたイラク人学者たち
多くのイラク人学者が、死の脅威から逃れるために国外へ脱出している。しかし、彼らの経験や資格は亡命先で受け入れられず、脱出先の入国管理当局の扱いも冷たいという現実が待ち受ける。Jim Gilesが話を聞いた。
Author
ショウジョウバエの交尾行動を制御するフェロモン受容体
ウィーンにある分子病理学研究所のBarry Dicksonたちがショウジョウバエの交尾習性の研究に取りかかったのは、5年ほど前のことだ。彼がめざしていたのは、行動を制御する脳内の神経回路を解明することで、その出発点として交尾行動は格好の材料に思えたのである。「交尾行動は安定した行動の1つで、ショウジョウバエはこの行動を実に上手にやってのける」とDicksonはいう。
Japanese Author
臨床試験が進む、がんの再発予防ワクチン療法 (田原 秀晃)
東京大学医科学研究所の田原秀晃教授は、同研究所の中村祐輔教授との共同研究によって複数種がんワクチンを開発し、順次、第1相臨床試験を始めている。これらのワクチンは、がん細胞の遺伝子発現解析データをもとに開発されたもので、患者ごとのがんの種類や性質に合わせたオーダーメード的なワクチンである。実用化されれば、これまで完治の見込みのなかった患者に新たな可能性が開けることになり、手術後の再発も減らすことができると期待されている。
News & Views
ヨウ素原子にタキシードを着せる
ヨウ素原子に分子の上着を着せることで、単純な炭素鎖を、ヨウ素を含む複雑な分子へと転換する反応を制御できるようになる。このような反応は、以前は酵素にしかできなかったものである。
News
アンデス山脈が高いわけ
プレートテクトニクス研究によって、未解明だった一部の山の高さの謎が解けるかもしれない。
Snapshot
太陽の新たな横顔
現在、太陽の活動を鮮明に捉えた画像が、我々の手元に続々と届けられている。これらの画像は、科学の謎を解明する手がかりになると同時に、新たな謎を投げかけてもいる。
英語でNature
万人向けの血液を作り出す
日本人は、血液型の話題にとても敏感だといえるでしょう。血液型による占いや性格診断を信じるかどうかは別として、少なくとも大多数の人がすぐに自分の血液型をいえるのではないでしょうか。また、血液型による親子関係の判定や、異なる血液型の間で輸血可能かどうかということも、比較的よく知られています。 今回は、どんな血液型でもO型に変えてしまう酵素が開発されたことを報告したNEWS記事を取り上げます。全体の流れはとらえやすいので、まずはざっと目を通してから、語句解説を頼りにもう一度読んでみましょう。
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