2007年6月号Volume 4 Number 6
Editorial
News Features
透明マントの使い道
昨年、身につけた人の姿が見えなくなる「透明マント」を作れるかもしれないというニュースが報じられた。確かに透明マントは好奇心をそそられる話だが、その材料となる「メタ物質」が実際に応用されるのは、もっと地味な分野になりそうだ。Katharine Sanderson記者が報告する
ゴアの軍隊
地球温暖化の危機を訴えるアル・ゴア前米副大統領のメッセージを広めるため、多くの一般市民が行動を開始している。Amanda Haag記者がゴアの「歩兵」たちに会った。
Author
マイクロ流体工学で、液体中の微小質量
水には、凝固点より数度上で膨張し始めるという特殊な特性があるが、過冷却水に関する研究から、この特異な挙動がある温度以下で変化することが示唆された
Japanese Author
糖尿病発症のかぎを握るアディポネクチンの受容体機能を解明! (門脇 孝)
食生活の欧米化が進むなか、日本の糖尿病患者・予備群合わせた数は、1620万人にも達するといわれる。患者の多くは、肥満や遺伝的な素因が複雑に関与する2型糖尿病。門脇孝教授は、東京大学大学院医学研究科糖尿病・代謝内科において臨床に携わる一方で、肥満と糖尿病発症の関連についての研究を進めている。今回、そのかぎを握るアディポネクチンの受容体だと思われる2種のタンパク質を同定し、それらが確かに機能していることを明らかにした。この成果はNature Medicine2007年3月号で発表された。
News & Views
脳内の掃除屋
ミクログリア細胞は脳内の免疫を担っており、疾患や損傷によって活性化する。これらの細胞にスイッチが入って、損傷した細胞や細胞の残骸を除去するようになる仕組みが、新たな知見によってわかってきた。
Business News
医薬品管理をめぐる中国の深刻な問題
中国の医薬品安全管理当局のトップが、収賄の疑いで取り調べられている。はたして中国の成長著しい製薬産業にどう影響するのか、David Cyranoskiが報告する。
Japan News Feature
夢の新素材、カーボンナノチューブの実用化研究が加速
飯島澄男博士によるカーボンナノチューブの発見から16年。本号の竹内薫氏の記事(p.21)にもあるように、その特性の多様さは多くの研究者の興味を引きつけ、世界中で基礎および応用研究が精力的に行われてきた。現在のところ、まだ商品化はされていないが、ここ数年で量産化への見通しがある程度立ったことから、実用化への進展が速まりそうだ。
News
果物vsビタミンC剤
ビタミンCだけでは体を守れないことが実験から明らかになった。
モーツァルトを聴いても頭はよくならない
ドイツ政府が「モーツァルト効果」の神話に取り組むことを決意した。
Snapshot
天にも昇る心地
ガリレオは美術の教育も受けていたが、その心は現代の科学者とまったく同じであった。彼は新しい技術にすぐに飛びつき、同業者に先を越されることを極端に恐れていた。
Special 20th Anniversary Features
Nature とともに20年
1987 年、マクミラン出版社(MacmillanPublishers Ltd.本社・ロンドン)の日本法人として出発したネイチャー・ジャパン株式会社(2006 年、商号をNPG ネイチャーアジア・パシフィックに改称)は、今年をもって設立20 周年を迎えました。これを記念し、Nature Digest 6月号はページ数を通常号の2倍に増量させた特別編集でお届けいたします。
創刊138 年、Natureの輝ける軌跡
1869年に創刊されて以来、科学雑誌Natureは時代に合った科学情報や発見を世界に伝えるため、その姿を常に変ぼうさせてきた。現編集長フィリップ・キャンベルとともに、この138年間を振り返りながら、今後のNatureのあるべき姿を考える。
日本からアジア・パシフィックへ
今から20年前、Nature東京特派員の若きスコットランド人を中心にたった3名のスタッフで立ち上げられたネイチャー・ジャパン株式会社。今では、50名の社員を抱えるまでになり、出版事業のターゲットは日本のみならず、アジア・パシフィック地域全体に広がった。その間、Nature誌自体もその主力を印刷版から電子版へと移し、大きく変ぼうを遂げた。ディビッド・スウィンバンクスが設立からこれまでを回想する。
新事業へのチャレンジ
2006年以降、NPG ネイチャー アジア・パシフィックでは科学技術の進展に合わせ、新しい出版事業に精力的に取り組んでいる。その中から主なものを紹介する。
この20年の科学、その偉大なる発展を振り返る Part 1 — 物理科学分野
この20年は、科学にとっていったいどんな年月だったのか。最も偉大な発見や研究について、その軌跡を追ってみよう。Part 1では、宇宙・地球・物理・化学・テクノロジーなど物理科学分野の発展を、科学作家としてテレビや出版界で活躍中の竹内薫氏が概観する。
この20年の科学、その偉大なる発展を振り返る Part 2 — 生物科学分野
「21世紀は生物学の時代」といわれて久しいが、この20年間はゲノム科学を中心に、まさにその序盤戦ともいうべき数々の偉大な発見があった。Part 2では、遺伝子・進化・免疫・脳・薬学・医学など生物科学分野の発展を、生理学研究者として知の統合化をめざしている、水谷治央氏が概観する。
21世紀に科学の向かうところ — 野依 良治
この20年間の科学技術の躍進は研究の高度化・複雑化をもたらしたが、科学の本質を見極める力はますます重要になってきた。一方、アジアの台頭が価値の多様化を生み、成熟した社会は科学の文化的素養を必要としている。2001年度ノーベル化学賞受賞者で理化学研究所理事長の野依良治博士に、科学と科学者のあり方について、冬野いち子が話を聞いた。
ネットワークを生かした研究推進をめざして
近年のアジア・パシフィック地域における科学研究の進展にはめざましいものがあるが、それに対する世界的な認知度はなお低いままである。この問題を解決するにはどうしたらよいのか、ディビッド・スウィンバンクスが提案する。
英語でNature
鳥の翼の風洞実験で明らかになった飛行の極意
昔から、空を飛びたいと願う人は常に鳥に目を向けてきました。レオナルド・ダビンチもそのひとりで、鳥の翼や飛行のメカニズムの研究の記録が残されています。しかし現在でもなお、鳥の翼を使った実験データが、戦闘機などの最先端技術に応用されています。今回は、鳥の中でもいちばんの飛行の達人ともいえる、アマツバメの翼を使った実験について読んでみましょう。
Advertisement