2011年5月号Volume 8 Number 5
第三の光受容細胞
眼の光受容器といえば、つい10年前まで、桿体細胞と錐体細胞だけと考えられてきた。現にウィキペディアなどでもなおそう記述されている。ところが現在では、第三の光受容細胞(ipRGC)の存在が明らかになっており、いま、視覚の世界で知識革命が進行中だ。例えば青い光を当てた被験者のほうが、音への反応時間が速くなるという報告も登場し、青色LEDなどの新しい照明器具が生体に及ぼす影響の研究も始まっている。
Editorials
歴史的な科学資料の保存と有効利用へ、ドイツの挑戦
歴史的な科学資料のコレクションが、ヨーロッパ各地の大学でほこりをかぶっている。このままにしておいてよいわけがなく、具体的で実行可能な提案がドイツから出された。
News
新方式のシーケンサー登場
第三世代シーケンサーは、1個の分子を検出してDNA配列を解読するようになる。
ペニスのとげはどうしてなくなったのか
ヒトはDNAを捨て、つるつるのペニスと大きな脳を手に入れた。
「歩くサボテン」は節足動物の親戚
昆虫やクモ類、甲殻類の関節肢がどのように進化したかを解明する手がかりが、新種の動物化石から得られた。
地球深部には珍しいタイプの硫黄が存在
ある種の珍しいタイプの硫黄が地下深部に多く存在しうることがわかった。これにより、初期地球に関する学説が塗り替えられるかもしれない。
科学界の男女格差を調査
科学界では、あからさまな男女差別はめったに見られなくなったが、女性に対する社会的障壁はまだ残っている。
研究を妨げる企業ライセンス
女児がかかる希少疾患のレット症候群。研究に必要な動物モデルの入手を阻むのは、企業が保有する超複雑な権利関係書だ。
News Features
もうひとつの地球はどこに
宇宙望遠鏡ケプラーは、米国航空宇宙局(NASA)が太陽系外の惑星を探し出すために2009年に打ち上げた。そして当初の期待を上回る成果をあげている。でも、本当にもうひとつの地球の発見に近づいているのだろうか。
見つめていたい
食事に関する研究では、被験者が食べるものをすべてスナップ写真に撮ることができれば、あやふやな記憶に振り回されずにすむはずだ。研究者たちは今、人間の生涯にわたる環境曝露(エクスポゾーム)を測定するべく、ハイテク装置の開発に力を入れている。
第三の光受容細胞
眼の光受容器といえば、10年前までは桿体細胞と錐体細胞だけだった。ところが第三の光受容細胞があることがわかり、いま、視覚における知識革命が起こっている。
Japanese Author
抗がん剤の効果を、蛍光イメージング技術で可視化! (宮脇 敦史)
細胞内の微細な構造や分子などを蛍光で標識し、可視化する「蛍光イメージング技術」。分化や発生などの基礎生物学領域から、創薬、がんの診断や治療といった医療分野まで、幅広い応用が期待されており、研究開発が急速に展開している。この分野の第一人者である理化学研究所の宮脇敦史チームリーダーは、このほど、独自の細胞周期プローブを使って、がん細胞の増殖動態を可視化することに成功。抗がん剤の濃度に依存した細胞応答の特性を、単一細胞のレベルで明らかにした。
News & Views
1つにつながった老化の理論
老化はさまざまな細胞成分に障害が起こる複雑な過程である。最新の研究成果によって、よく見られる老化関連疾患の発症原因とされている細胞老化についての統一的機構が示唆された。
細胞が外部に及ぼす力を三次元で可視化
移動する細胞は、環境に対して機械的な力を及ぼし、またそこからの力も受けている。今回、2つの技術を組み合わせることによって、こうした細胞と環境との相互作用のようすを詳しく調べることが可能になった。観測・測定の結果、細胞の「押し引き機構」によって、水平面内だけでなく鉛直方向にも力が及んでいることが初めて明らかになった。