2011年7月号Volume 8 Number 7

がんの転移理論に重大な疑惑

がん死亡患者の90%に転移が見られるという。つまり、がんで最も恐ろしいのが、別の部位への転移である。ところが、その転移の仕組みそのものについて、現在の理論に重大な疑問が投げかけられた。ポイントは、がんが移動能を持つようになる上皮間葉転換(EMT)のところだ。カリフォルニア大学の病理学者によると、数百万枚にも及ぶヒト病理組織切片に、このような細胞は全く観察されていない、という。ということは、転移の本質は別の仕組みにあるのかもしれない。いずれにせよ、待たれるのは、転移の現場をずばりと捕らえることだ。

Research Highlights

一部の動物種は、餌にならないような物になりすまし、捕食者に見つからないようにしている。こうしたカムフラージュは受動的なものではなく、そこには被食者と捕食者の間の特異な行動の変化がかかわっている、とエクセター大学(英国)のJohn Skelhornらは指摘している。

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News

睡眠不足のラットの研究から、睡眠は脳全体の現象というわけではないことがわかってきた。

研究開発をすべて自前で進める旧来モデルを捨て、製薬業界はオープンイノベーションへと舵を切り始めた。これによって学術研究機関の重要性が格段に大きくなろうとしている。

名門エール大学の機械工作室で、痛ましい学生の死亡事故が起こった。これを契機に、安全対策を強化するよう大学への圧力が増しているが、反応はかんばしくない。

がん転移の仕組みについて主流となっている仮説には、臨床上の証拠が不十分との指摘が。

宇宙起源を探る研究者と太陽系外惑星を探索する研究者が、宇宙観測ミッションについて話し合いを進めている。

iPS細胞バンクに向けた動きが各地で見られる。課題は、iPS細胞の作られ方のばらつきをきちんと取り扱うことと、多様な「多能性」を絶えず監視・追跡する体制を整えることだ。

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News Features

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世界では、これまでにないハイペースで博士号(PhD)が生み出されている。この勢いに歯止めをかけるべきなのだろうか。

現行の博士課程教育には問題が山積している。部分的に手直しするか、徹底的に見直すか、それとも完全に無視して時が過ぎるのに任せるのか。いずれにせよ、大学も個人もすでに、自然科学系大学院教育の改革に走り出している。

数十年前に開発された脳を電気刺激する手法で、学習能力を向上させられることが明らかになった。果たして、数本の配線コードと9Vの電池でできるこの手法に、どんな可能性があるのだろうか?

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Comment

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東日本大震災から約3か月半。5人の日本人地震学者が、今回の地震と津波から得た教訓について考察する。

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Japanese Author

真核細胞に共通して見られる細胞小器官の1つに、中心子がある。興味深いことに、どの生物の中心子も厳密な9回対称形をしており、その理由と作られ方が謎とされてきた。今回、東京大学大学院理学系研究科の廣野雅文准教授らは、中心子の前駆体中央部を構成するタンパク質の構造を詳細に解析し、普遍的な9 回対称形ができる仕組みの一端を解明することに成功した。

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News & Views

ヒトは高度な認知機能に基づいて協力行動をとることができる。こうした協力行動の進化の過程を解明するには、動物が共同作業をするときにどんなことを理解しているかを調べる必要がある。今回、大型動物の共同作業について、アジアゾウを用いた実験が行われ、興味深い成果が得られた。

光で傷を修復できるゴム状ポリマーが作られた。これを使えば、修復する必要のあるとき、必要な部分だけに光を照射すれば作業が終わるので、さまざまな分野で材料の長寿命化に貢献するはずだ。

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