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神経疾患:内皮TREK1(TWIK-related potassium channel-1)は免疫細胞の中枢神経系への移動を調節する

Nature Medicine 19, 9 doi: 10.1038/nm.3303

血液脳関門(BBB)はNVU(neurovascular unit)の必須の要素である。NVUは、周皮細胞、平滑筋細胞と1層のアストロサイトのend footにより覆われた実質細胞基底膜上にあって、密着結合で相互接続された内皮細胞により構成される。白血球などの循環血液細胞がNVUを完成させる。BBBの破壊は、複数の神経疾患で共通して見られるが、これに関与する分子機構はほとんどわかっていない。我々は、TWIK関連カリウムチャネル1(TREK1、KCNK2にコードされる)の、ヒトとマウスの内皮細胞およびBBBにおける役割を解析した。内皮細胞では、インターフェロンγ(IFN-γ)や腫瘍壊死因子α(TNF-α)の投与によってTREK1の発現が減少した。TREK1の遮断は白血球の血管外漏出を増やすが、TREK1の活性化では逆の影響が見られた。マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼシグナル伝達の異常、アクチンリモデリング、細胞接着分子の発現増加が、TREK1欠損(Kcnk2−/ −)細胞で見られる白血球遊走増加の機構であるらしいことがわかった。Kcnk2−/−マウスでは、脳の内皮細胞で細胞接着分子ICAM1、VCAM1、PECAM1の発現増加が見られ、中枢神経系(CNS)への白血球移動が促進された。Kcnk2−/−マウスでは、ミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質(MOG)35-55ペプチドによる免疫で実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)を誘導した後、CNSへの白血球浸潤増加を伴う高いEAE重症度スコアが観察された。EAEの重症度は、筋委縮性側索硬化症の治療薬リルゾールを投与したマウス、あるいはTREK1活性化オメガ3脂肪酸であるα-リノレイン酸を含む亜麻仁油が豊富な食餌で飼育したマウスでは低下した。Kcnk2−/−マウスでは、このような効果が低下しており、TREK1活性化化合物がBBB機能不全が関わる疾患の治療に使用できる可能性が示唆された。

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