幹細胞：p38 MAPKシグナル伝達は老齢マウス骨格筋で幹細胞自己複製の細胞自律的低下の基盤となっている

骨格筋の老化は骨格筋の量やその機能、また再生能を徐々に低下させ、これらはサルコペニア（筋肉減少症）や死亡率増加につながることがある。筋肉減少の根底にある機序は分かっていないが、筋肉再生には骨格筋幹細胞、すなわち骨格筋衛星細胞が必要である。従って、加齢の間に衛星細胞の機能に影響を与えるシグナル伝達経路を明らかにすることは、サルコペニアの治療標的についての手掛かりにつながる可能性がある。本論文では、老齢マウス由来の衛星細胞では繊維芽細胞増殖因子受容体１、p38αおよびp38βマイトジェン活性化プロテインキナーゼシグナル伝達の変化を介して自己複製能が細胞自律的に失われることを示す。また、これらの経路の薬理学的操作によって加齢に関連する自己複製障害を軽減できることが分かった。つまり、今回の結果は加齢に関連して衛星細胞恒常性ネットワークの脱調節が起こることをはっきり示しており、進行性の筋萎縮を治療できる可能性を明らかにしている。