Between Bedside and Bench 微生物相を使って病原体を殺す:Clostridium difficile感染症治療のための微生物相の定着 2014年3月1日 Nature Medicine 20, 3 doi: 10.1038/nm.3492 さまざまな抗生物質が存在するにもかかわらず、クロストリジウム属の細菌Clostridium difficileによるものなど、一部の感染症の再発はいまだに臨床上の難題となっている。この問題の根源は、腸内共生微生物叢の働きや構成に対して抗生物質が悪影響を及ぼすところにある。C. difficileの治療抵抗性や感染再発に対処するために、健全な微生物相がこの病原体を食い止める仕組みの解明や、防御に寄与する微生物種の特定、ブロバイオティクスを使い標的を絞った治療法の開発などが現在試みられている。BEDSIDE TO BENCHではY TaurとE Pamerが、糞便微生物移植(FMT)の可能性について論じ、その有効性を説明する機構を詳しく検討している。C. difficileの芽胞の発芽には胆汁酸が関与している。健全な微生物相は胆汁酸を変化させるが、これは抗生物質の投与によってマイクロバイオームが減少すると病原体の過剰な増殖につながることの説明になるかもしれない。BENCH TO BEDSIDEではR Leyが、抗生物質投与後に腸内共生微生物によって徐々に放出されるシアル酸が、C. difficileの増殖亢進に大きく関与している可能性を示唆した最近の研究を検討している。C. difficile感染症を治療もしくは予防するには、FMTを用いて腸内のC. difficileがシアル酸を摂取できなくする方法や、もっと具体的にいえば、シアル酸を分解などによって迅速に取り除いてC. difficileが使えないようにする改変型プロバイオティクスを使う方法が有効となりそうだ。 Full text PDF 目次へ戻る