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アテローム性動脈硬化症:インターロイキン1βはマウスの進行したアテローム性動脈硬化病変でアテローム予防性作用を発揮する
Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0124-5
後期アテローム斑の安定性を制御する過程の解明は、数十年来の研究にもかかわらず、ほとんど進んでいない。有力な仮説は、進行したアテローム斑の安定性は炎症の軽減により改善される可能性があるというもので、これは心筋梗塞後の被験者にIL-1β抗体を投与するCANTOS(Canakinumab Anti-inflammatory Thrombosis Outcome Study)試験で最近検証された。今回我々は、進行性のアテローム性硬化が見られる平滑筋細胞系譜追跡Apoe−/−マウスに、抗IL-1β抗体、もしくは対照抗体のIgGを投与するという介入研究を行った。意外にも、西洋型食餌で飼育されているマウスで、18~26週の間にIL-1β抗体を投与すると、平滑筋細胞量とコラーゲン含量の顕著な減少が誘導されたが、繊維性被膜内でのマクロファージの数は増加した。さらに、IL-1β抗体投与は病変のサイズには影響を及ぼさなかったが、有益な外側向き血管リモデリングを完全に阻害した。また、IL-1受容体タイプ1をコードするIl1r1を平滑筋細胞特異的にノックアウトすると、平滑筋細胞がほとんどなく繊維性被膜を欠く、より小さな病変が見られるようになるが、マクロファージ選択的にIL-1R1を喪失させても、病変のサイズや組成には全く影響がなかった。まとめるとこれらの結果は、IL-1βは、マウスの後期アテローム性動脈硬化において、外側向き血管リモデリングの促進、ならびに平滑筋細胞やコラーゲンに富む繊維性被膜の形成と維持など、複数の有益な効果を持つことを示している。