HIV:早期の抗レトロウイルス療法はSIVリザーバーの確立を制限し、治療後のウイルスリバウンドを遅延あるいは阻止する
Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0130-7
サル免疫不全ウイルス(SIV)の抗原を発現するアカゲザルサイトメガロウイルス(RhCMV)ベクター(RhCMV/SIV)を用いてアカゲザルに予防的ワクチン接種を行うと、ワクチン接種を受けたサルのほぼ50%で高病原性のSIV感染を厳しく制御する免疫応答が誘導され、続いて感染が見かけ上消失する。本論文では、これとは対照的に、あらかじめSIVに感染させ、感染後4~9日目に継続的な抗レトロウイルス薬併用療法(cART)を開始したアカゲザルでは、治療目的でRhCMV/SIVをワクチン接種しても、RhCMV/対照のワクチン接種とは異なり、600日以上のcARTの経過観察期間にわたってSIVリザーバーの測定可能な消失は見られなかったことを示す。しかし、RhCMV/SIVワクチン接種およびRhCMV/対照ワクチン接種の両グループについて、感染後4日目あるいは5日目にcARTを開始した6頭のサルの中に、経過観察9か月後までcART後のウイルスリバウンドが認められたものはなかった。これらのサルのウイルスリザーバーは、経過早期に予防的なRhCMV/SIVの接種を受け、感染が防御されたサルのものに最もよく似ていた。さらに、剖検を行ったところ、これらのアカゲザルには複製可能なSIVが存在する証拠がほとんど、あるいは全く見られなかった。これらの結果は、早期に形成されるSIVリザーバーは持続性が限られていること、また、この重要な期間に薬理学的あるいは免疫学的な抑制によりウイルスの複製や拡散を効果的に阻止すれば、リバウンドを起こし得るウイルスのおよそ2年間にわたる減少、さらには消失につながる可能性があることを示唆している。