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がん:神経膠芽腫などの頭蓋内腫瘍の場合に見られる骨髄へのT細胞の隔離
Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0135-2
T細胞機能不全はがん患者で腫瘍免疫回避の一因となり、神経膠芽腫(GBM)では特に重篤である。これ以外の障害の中では、Tリンパ球減少が特徴的だが、これは治療が原因であることが多い。我々は、治療を受けたことのないGBM患者やGBMマウスでも、CD4細胞数がエイズレベルとなり、T細胞が欠如したリンパ器官の萎縮が起こることを明らかにした。減少したナイーブT細胞のかなりの部分は、骨髄に隔離されていた。この現象はGBMだけの特徴ではなく、他の多くのがんでも特徴的だが、観察されるのは腫瘍が頭蓋内部へ侵入した場合のみである。T細胞の隔離は、腫瘍が引き起こす、T細胞表面からのS1P1の欠失により生じ、これはS1P1のインターナリゼーションを阻害することで回復する。GBMのマウスモデルでは、S1P1のインターナリゼーションを阻害し、T細胞の隔離を回復させることで、これまでは効果が認められなかったT細胞活性化療法が有効となる。従って、骨髄へのT細胞の隔離は、腫瘍に適応化されたT細胞機能不全状態と言え、これを元に戻すことで免疫療法への付加的な効果が期待できるかもしれない。