COVID-19:SARS-CoV-2オミクロン株に感染した妊婦でのニルマトレルビル/リトナビルの使用 ─ 標的試験のエミュレーション
Nature Medicine 30, 1 doi: 10.1038/s41591-023-02674-0
現在までのところ、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染した妊婦で、抗ウイルス薬ニルマトレルビル/リトナビルの使用について調べた無作為化試験のデータはない。このリサーチ・ギャップの解決を目的として、本標的試験のエミュレーション研究では、症候性SARS-CoV-2オミクロン株に感染した非入院妊婦におけるニルマトレルビル/リトナビルの使用を評価した。2022年3月16日から2023年2月5日の間に診断された患者の中で、症状出現または新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断から5日以内に行われた外来でのニルマトレルビル/リトナビルによる治療を曝露と定義した。主要評価項目は、母体罹患・死亡指数(MMMI)、原因を問わない母体死亡、およびCOVID-19関連入院とし、副次評価項目は、MMMIの個別要因、早産、死産、新生児死亡、および帝王切開とした。ニルマトレルビル/リトナビル使用者と非使用者の間で、1対10で傾向スコアマッチングした後、クローニング、打ち切り、重み付けを行った。全体として、ニルマトレルビル/リトナビルを使用した妊婦211人と非使用の妊婦1998人が含まれた。ニルマトレルビル/リトナビルによる治療は、28日間のMMMIリスクの減少と関連していたが(絶対リスク減少率〔ARR〕= 1.47%。95%CI = 0.21%、2.34%)、28日間のCOVID-19関連入院には関連しなかった(ARR = −0.09%。95%CI = −1.08%、0.71%)。また、ニルマトレルビル/リトナビルによる治療は、帝王切開(ARR = 1.58%。95%CI = 0.85%、2.39%)や早産(ARR = 2.70%。95%CI = 0.98%、5.31%)のリスク低下と関連していた。母体と新生児の死亡、死産の事象は記録されていなかった。これらの知見は、ニルマトレルビル/リトナビルが、SARS-CoV-2オミクロン株に感染した症候性妊婦に有効な治療であることを示唆している。