Perspective
女性の健康:ライフコース・アプローチによる女性の非感染性疾患への取り組み
Nature Medicine 30, 1 doi: 10.1038/s41591-023-02738-1
女性の健康には十分な保健・医療サービスが提供されてきたとはいえない。それは女性特有の性と生殖に関する問題にとどまらない、より広範な健康ニーズを適切に把握できていなかったからである。非感染性疾患は、世界中のほぼ全ての国で女性の主要な死亡原因となっている。その中でも、死亡原因の多くを占めるのは、心血管疾患(心疾患や脳卒中など)とがんである。非感染性疾患のリスクは女性の人生の各ステージにあるが、その予防と管理に関して女性特有のニーズが認識されるようになったのは比較的近年のことであり、いまだ完全ではない。こうした疾患は、いったん診断されると、治療には多くの費用がかかり、治癒も望めないことが多い。そのため、疾患の誘因をそれぞれ特定し、費用対効果の高い対策を講じることで遅滞なくリスク曝露を最小限に抑えられるようにする、戦略的かつ革新的なライフコース・アプローチが必要となる。この総合的なアプローチを女性の健康に対して実際に適用するに当たっては、社会的な側面と医療的な側面の双方に大きな障壁が存在する。これらの障壁を認識し、それらを実践的なアプローチによって克服することは、女性の健康格差是正を進めるための合理的な手段であり、最終的には社会全体の利益となる。