Research Highlights
二次元半導体:発光を助ける
Nature Nanotechnology 2014, 1214 doi: 10.1038/nnano.2014.304
グラフェンとは異なり、単層金属ジカルコゲニドは、電子デバイスの実現に不可欠な電子バンドギャップを示す。さらにこのバンドギャップによって、光吸収やフォトルミネセンス発光が電子や正孔と電磁場の相互作用から生じるので、原理的には、発光ダイオードやレーザーなどの光電子デバイスに、こうした2D半導体を用いることができる可能性がある。しかし、原子1個分の厚さしかないため、発光効率と吸収効率が極めて低いことが欠点である。英国とロシアのS Schwarzたちは今回、適切に設計した光共振器中に金属ジカルコゲニドの薄膜を置くことで、フォトルミネセンス発光をかなり増強できることを示している。
Schwarzたちは、2種類の構成を調べた。最初に、MoS2薄膜とGaSe薄膜のどちらか一方を分布ブラッグ反射器の上に置いた。この分布ブラッグ反射器は、薄膜から下向きに放射される光を全て反射する。その結果、自立膜と比べて、放射されたフォトルミネセンスがかなり増強された。次の実験では、第二の分布ブラッグ反射器を薄膜の上に置き、完全な光共振器を作った。共振器の波長が薄膜の波長と一致するように、反射器の間の距離が調節された。その結果、フォトルミネセンス強度がさらに増強され、発光ピークが鋭くなった。フォトルミネセンスの時間分解測定によって、放射効率の向上も明らかになった。これは、光共振器によって半導体薄膜内のキャリアと電磁場の相互作用が強くなったことを裏づけている。