Research Highlights
応答性材料:遠隔的に流出油を除去する
Nature Nanotechnology 2015, 215 doi: 10.1038/nnano.2015.15
流出油を除去する材料にはさまざまなものがあるが、それらの多くは現場でしか機能しない。汚染水が作業員の安全を害する可能性がある極端な場合には、遠くから利用できる材料が必要である。北京服装学院などのY Zhaoたちは今回、海産イガイに着想を得て、さまざまな油を効率よく吸収できる磁気応答膜を開発した。
Zhaoたちは、電界紡糸法によって繊維状のポリフッ化ビニリデンの膜を作り、ドーパミン(イガイの接着タンパク質に含まれる化合物)を用いて、磁性鉄酸化物ナノ粒子をこの繊維の表面に固定した。得られた複合材料は、磁気に応答し、大豆油、ディーゼル燃料、ガソリンなど、さまざまな粘度の油を水から吸収する。ナノ粒子を含む膜は、ナノ粒子のない膜より優れた油吸着能を示した。これは、ナノ粒子によって膜の表面粗さが増して、水を弾き、油を吸着する能力が高まったためである。油を含む膜は、磁石を用いて容易に分離でき、遠隔的に流出油を処理する方法が得られた。さらに、吸着された油は、押し出したり遠心分離したりして膜から除去できる。また、この膜は再利用でき、今回の研究で調べた5サイクルにわたって吸着能に明らかな変化はなかった。