Research Highlights
SERS用基板:バラの花びらをラマン散乱に使う
Nature Nanotechnology 2015, 715 doi: 10.1038/nnano.2015.154
表面増強ラマン散乱(SERS)用の基板にはさまざまなものがあり、リソグラフィー・プロセスかバイオテンプレートを用いて作られるプラズモンナノ構造体の形をしていることが多い。しかし、こうした基板は、作製費用が高いことが多く、ホットスポットの密度が低いという欠点がある。国立台湾大学のH-L Chenたちは今回、新鮮なバラの花弁が、環境に優しく費用の掛からないSERSの代替基板となることを示している。
Chenたちは、直径100 nmの銀ナノ粒子の懸濁液を、新鮮なバラの花弁の上面表皮と下面表皮のどちらかに置き、乾燥させてから、検体であるローダミン6Gの液滴をナノ粒子で装飾した花弁に置いた。バラの花弁は疎水性なので、水滴と花弁表面の間の接触角が大きいため接触面積が小さくなり、水滴が蒸発すると、ナノ粒子が集合体を形成し、検体が濃縮されて表面に小さなスポットができる。この濃縮効果によってSERS信号の強度が増大し、この方法によって10−12 Mという検出限界が実現された。追加実験によって、白い花弁の下面表皮がSERS信号を最も強く増強することが分かった。他の色の花弁は背景信号を生じさせる。また、シミュレーション研究によって、上面表皮の微小乳頭構造よりも下面表皮の平面的なナノレベルのひだの上にナノ粒子がより効率的に分散することも分かった。