Research Highlights

電池:土壌細菌の害になる

Nature Nanotechnology 2016, 316 doi: 10.1038/nnano.2016.34

ニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)は、リチウム層間化合物の一種で、電気自動車に電力を供給するリチウムイオン電池のカソード材料として広く使われている。標準的な24 kWhの電池を搭載している電気自動車1台に、38 kgを超えるナノスケールのカソード材料が含まれており、2020年までに路上にある電気自動車は二千万台になると見積もられている。これらの数字は、こうした電池を埋立地に廃棄すれば、ナノスケールの金属酸化物が新たな環境汚染物質になる可能性があることを示している。ウィスコンシン大学マディソン校(米国)とミネソタ大学(米国)のC HaynesとR Hamerたちは今回、土壌や堆積物中の細菌Shewanella oneidensisの成長と呼吸をNMCが害することを報告している。

HaynesとHamerたちは、リチウムNMCの薄いシートを作り、培養したS. oneidensisにさまざまな濃度のリチウムNMCを加えた。その結果、細菌の成長と呼吸が、5 mg l-1のNMCで阻害された。誘導結合プラズマ発光分光分析法とX線光電子分光法を用いた実験によって、水媒体中のNMCナノ粒子は、リチウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオンを優先的に放出し、マンガンが豊富なナノ粒子が残ることが分かった。培養したS. oneidensisにニッケルイオンとコバルトイオンを入れると、NMCナノ粒子にさらしたときと類似した毒性作用が見られた。これは、マンガンが豊富な残りのナノ粒子ではなく、放出された遷移金属イオンが毒性の原因であることを示している。こうした予備段階の結果は、NMCが有毒なニッケルイオンとコバルトイオンの供給源となる可能性があり、こうした電池に有効なリサイクル戦略の開発により一層の努力が必要であることを示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度