Research Highlights

タコに着想を得たナノ吸盤:湿った粗い面にも吸着

Nature Nanotechnology 2017, 617 doi: 10.1038/nnano.2017.118

タコの脚は、センチメートルスケールの吸盤が周期的かつ密集せずに存在するため、海洋環境のさまざまな表面にくっつくことができる。しかし、タコに着想を得た既存の人工吸盤は、吸引システムとその動力源に頼っていたり、粗い表面や湿潤環境への適用性が低かったりといった欠点がある。Y-C ChenとH Yangは今回、乾燥環境でも湿潤環境でも微細粗面と平滑面の両方に吸着できる、ナノ吸盤吸着アレイの作製について報告している。

著者たちは、シリカコロイド結晶をスピンコーティングして、ウェハー上のトリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート(ETPTA)基質内に、密集していない六角形秩序パターンを作った。次に、このシリカ粒子をポリビニルアルコール(PVA)フィルムに埋め込んで、フィルムをウェハー上のETPTAから剥がした。シリカ粒子の型を取ったこのPVAフィルムは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)ナノ吸盤アレイを作る鋳型となる。作製された柔軟なナノ吸盤は、ファンデルワールス力と、ナノ吸盤を押して内部の空気を抜いたときに生じる負圧効果によって、乾燥と湿潤どちらの環境でも平らな表面もでこぼこの表面も密封できる。この吸着アレイは、複数サイクルの垂直力とせん断力の両方に対して大きな抵抗を示す。しかし、PDMSフィルムを通して空気が浸透し圧力差が低くなるため、時間とともに吸着力は低下する。

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