Research Highlights

遺伝子編集:状況に応じた切断

Nature Nanotechnology 2018, 418 doi: 10.1038/s41565-018-0124-0

CRISPR–Cas9の送達系に組織特異性や細胞特異性がないことは、この遺伝子編集技術をin vivoで治療目的に応用する際の主要な障害となっている。標的化遺伝子導入向けにナノ粒子を設計すれば、この問題が部分的に解決されるが、誤標的化が解決されていないため、非標的細胞におけるCas9ヌクレアーゼのDNA切断活性に起因する副作用が懸念されている。

一般的には、編集機構の構成要素をコードするプラスミドや、Cas9の細胞発現を駆動するプロモーター遺伝子の形で、CRISPR–Cas9系を送達することができる。今回Luoたちは、古典的な汎用プロモーターを、マクロファージや単球においてのみCRISPR–Cas9の活性化を生じさせる細胞特異的プロモーターに置換している。この系は、カチオン性脂質支援ポリマーナノ粒子に封入されている。in vitroでは、さまざまな細胞がこの負荷ナノ粒子を吸収できるが、マクロファージと単球のみがCas9を効率よく発現できる。その結果、Nnt1に対するガイドRNAの存在下で観測されるように、遺伝子編集もこうした細胞腫に限定される。この遺伝子は、netrin-1タンパク質をコードしており、2型糖尿病向けにマクロファージの治療標的となる可能性がある。

著者たちは、in vitroでの細胞特異性を考慮して、マクロファージ特異的CRISPR–Cas9活性化が治療目的の遺伝子編集に有望かどうか、動物モデルで調べる実験も行っている。実際、Nnt1に対して開発した遺伝子編集系で治療した糖尿病マウスは、netrin-1濃度のマクロファージ特異的な減少を示すとともに、オフターゲット効果がごくわずかであり、in vitroでの結果を再現している。さらに、この糖尿病マウスは、血糖値が正常になり、インスリン感受性が向上した。

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