Research Highlights

細胞工学:境界を作る

Nature Nanotechnology 2018, 718 doi: 10.1038/s41565-018-0212-1

真核細胞は、特定の反応を空間的に分離する区画化によって、高度な複雑性を実現している。細胞の他の部分から分離される必要がある貴重な生成物を生成する人工の非天然代謝経路を、タンパク質の自己集合によって作られる人工的な直交区画によって、同程度のレベルで制御できる可能性がある。しかし、原核生物とは異なり、真核生物には、そうしたタスクを自発的に行うことができるタンパク質がない。

今回Sigmundたちは、細菌のエンカプスリン・シェルと積み荷タンパク質のシステムをヒト胎児腎臓細胞に発現させ、この課題に取り組んでいる。この不慣れな細胞環境においても、このシステムは予測通りにふるまい、シェルタンパク質が自己集合して、天然の積み荷タンパク質を包むナノ区画を作るとともに、明らかな細胞毒性を示さなかった。このシステムは、さまざまな応用に役立つ。このナノ区画は、天然のフェリチンに似た積み荷を対象にすることによって鉄を隔離できるので、遺伝的に発現した磁気共鳴画像化法の造影剤や、電子顕微鏡の標識として機能する。さらに、このエンカプスリン・ナノ区画を部分的に変えたナノ区画は、不安定なタンパク質を対象にでき、プロテアソーム分解から保護できる。最後に、このナノ区画を利用して、細胞画像化に用いられる有毒代謝物であるメラニンを生成する反応などの閉鎖酵素反応を行うことができる。

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