Research Highlights
再生医療:神経に架ける橋
Nature Nanotechnology 2019, 119 doi: 10.1038/s41565-018-0352-3
脊髄損傷(SCI)の治療への再生医療の取り組みには、神経の再生を促進すると同時に、天然組織の導電性と力学的性質を再現することを目的とした人工生体材料が必要である。この目的でさまざまな導電性ソフトヒドロゲルが作製されたが、その大半は非導電性のヒドロゲルに埋め込まれた導電性ポリマーのメッシュでできていた。そのため、導電性が最適とはいえず、生理的条件下で膨潤すると成分が浸出するリスクが生じる。
今回Zhouたちは、タンニン酸をドープして架橋したポリピロールでできた、導電性の高い細孔性ソフトヒドロゲルを合成している。この材料をSCIのマウスモデルに移植すると、脊髄組織に容易に接着し、損傷部位の遮断されていた電気信号が回復して、神経の再生が促進された。このヒドロゲルの細孔への細胞浸潤が組織再生に寄与しており、タンニン酸の抗炎症特性によって炎症が抑えられる。この導電性ヒドロゲル移植したマウスでは、6週間にわたって運動技能の回復に改善が見られた。