Research Highlights
金属有機構造体:持続可能な冷却
Nature Nanotechnology 2019, 119 doi: 10.1038/s41565-018-0353-2
環境制御システムはエネルギーを大量に(例えば、米国の家庭で使われる総エネルギーの44%以上を)消費するため、持続可能な吸着式ヒートポンプ(AHP)が早急に必要になっている。水は、ハイドロフルオロカーボンに代わる理想的な冷媒であると考えられているが、吸着効率が低く現行のAHPのサイズが大きいため、開発が妨げられている。金属有機構造体(MOF)は相対湿度の全範囲で水の取り込みを正確に制御できるため、最近AHPにMOFを利用することに関心が集まっている。今回MITのDincǎたちは、より低い熱源温度で効率が高く等温線を調節できるMOFに基づくカスケードAHPについて報告している。さらに、唯一の冷媒として水を用いている。
著者たちは、Ni2Cl2BBTA(BBTAは1H,5H-benzo(1,2-d),(4,5-d′)-bistriazole)を選んでAHPを作り、Ni2Cl2BBTAの吸脱着性能が高く、単段AHPで温度を25°C上昇できることを見いだした。一般的に多段カスケードサイクルは、投入熱エネルギーを再生に2度利用できるため、性能がより優れている。そこで著者たちは、Ni2Cl2BBTAともう1つの熱力学的に調節できるMOF吸着剤Co2Cl2BBDDをタンデムにして使っている。細孔の小さいNi2Cl2BBTAと細孔の大きいCo2Cl2BBDDは水の等温線が重ならないため、ずっと高い効率で連続冷却が可能になる。その結果、127°Cという低い駆動温度で、性能計数1.63が達成された。