Research Highlights

バイオハイブリッド:ヒト細胞膜でできた生物活性小胞

Nature Nanotechnology 2019, 219 doi: 10.1038/s41565-019-0389-y

ヤヌスデンドリマー(JD)が自己集合してできた小胞は、室温において、リン脂質でできたリポソームよりはるかに安定である。そしてJDは、グラム陰性菌の大腸菌(Escherichia coli)の膜と共集合できる。今回Yadavalliたちは、JDが、脆弱なヒト細胞膜も安定化でき、ヒト細胞膜小胞とデンドリマーソームからなる安定な細胞様ハイブリッドを形成できることを見いだした。

まず著者たちは、選択したJDから巨大デンドリマーソームを作り、ヒト細胞を単に遠心分離することでヒト細胞膜小胞を作製した。次に、脱水–再水和法を適用して、作製した巨大デンドリマーソームとヒト細胞膜小胞を共集合させた。蛍光顕微鏡を用いた二色撮像によって、ハイブリッド小胞の形成に成功したことが立証された。この巨大ハイブリッド細胞は、緩衝液中で1年以上室温保存できる。細菌細胞膜とヒト細胞膜を両方持つハイブリッド小胞は生体適合性が高いため、著者たちはその生物活性をさらに調べた。彼らは、細菌細胞膜の接着タンパク質YadAを発現させることによって、HeLa細胞によって認識され細胞質へ送達され得る、デンドリマーソームと細菌細胞膜とでできたハイブリッド細胞様小胞を作製した。デンドリマーソームとヒト細胞膜を含むハイブリッド小胞にも生物活性があり、YadAタンパク質を持つ大腸菌細胞と結合し凝集することができる。こうしたハイブリッドプラットフォームは、認識、シグナル伝達、送達の用途に役立つ可能性がある。

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