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中空コアファイバーにおける高エネルギー多次元孤立状態
Nature Photonics 14, 12 doi: 10.1038/s41566-020-00699-2
多次元孤立状態(MDSS)、すなわち自己保持波束は、さまざまな物理学分野において新たな関心を集めている。MDSSは、非線形光学において、なかでも多モードファイバーにおける超短パルスの非線形伝搬に特に重要であり、不安定であることが多いにもかかわらず、豊富な時空間的モード間相互作用とダイナミクスがある。今回我々は、分子ガスで満たされたラージコア中空コアファイバーにおいて、非常に安定な多次元孤立状態の形成を観測したことを報告する。我々は、マルチミリジュールのサブピコ秒近赤外パルスと根底にある物理によって、MDSSの形成を実験的かつ数値的に実証する。我々は、強いモード間非線形相互作用によるラマン増強に起因して、MDSSが、中空コアファイバーの出力においてまれな負の二次のスペクトル位相を伴う広帯域赤方偏移スペクトルを持つことを見いだした。MDSSは空間的・時間的に局在しているので、溶融石英中を単に線形伝搬させることによって、出力時に広がったパルスを10.8 fsまで圧縮できるようになる。MDSSの空間的・時間的な質の高さが、高調波生成によってさらに検証された。今回の結果から、高エネルギー領域における多モード時空間ダイナミクスを調べる新たな機会が得られた。また、今回の研究は、ピコ秒イッテルビウム技術に基づく、時空間的に設計された新タイプのチューナブルな小型高エネルギーコヒーレント光源への道も示している。