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生体から着想を得たナノ構造体を用いた赤外光子による高速イメージングに向けて
Nature Photonics 6, 3 doi: 10.1038/nphoton.2011.355
既存の赤外線検出器は複雑な微細加工法と熱管理法に依存している。本論文では、虹色のモルフォチョウ鱗粉の構造から着想を得た低熱質量共振器という魅力的なプラットフォームを報告する。この共振器では、光共振器がその熱膨張と屈折率変化によって変調されると、中波赤外(3~8 µm)放射が可視の虹色へ変化する「波長変換」が起こる。モルフォチョウ鱗粉に単層カーボンナノチューブをドープすることによって、雑音等価温度差が18~62 mKで熱シンクを使わない応答速度が35~40 Hzの中波赤外検出を、我々は実現した。個々の「画素」のピッチはナノスケールで、熱質量がきわめて小さいため、既存の検出器を超える著しい改善が期待される。数値解析により、この熱応答の起源が説明され、生体から着想を得た概念的に新しい将来の熱イメージングセンサーの設計の指針が得られた。