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アミロイドタンパク質線維における多光子吸収
Nature Photonics 7, 12 doi: 10.1038/nphoton.2013.282
ペプチドの線維化によってアミロイド線維が形成され、アミロイド線維が大きな凝集体になると、アルツハイマー病やパーキンソン病などの原因となる。今回我々は、線維化していない天然タンパク質には見られない強い非線形光学吸収を、アミロイドが示すことを明らかにしている。Z-スキャン実験とポンプ-プローブ実験によって、インスリン、リゾチームβ-アミロイド、α-シヌクレイン線維が、光の波長に依存して、2光子吸収過程、3光子吸収過程、それ以上の多光子吸収過程のいずれかを示すことが分かった。観測された多光子吸収の増強は、線維構造内に密に充填された励起状態の芳香族アミノ酸が空間を介して双極子結合する協同的機構によるものであると、我々は提案する。今回の知見から、非線形光学技術を発展させてアミロイド構造を検出し調べる機会が得られるであろう。さらに、ナノテクノロジー、フォトニクス、オプトエレクトロニクス分野の特定の応用向けに、強い多光子吸収を示す新しいタンパク質系材料を設計できる可能性も示唆される。