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Communications Medicine に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。
Article: 老化とCOVID-19の間の因果関係についての遺伝学的および表現型の解析
Genetic and phenotypic analysis of the causal relationship between aging and COVID-19
doi:10.1038/s43856-021-00033-z
Yingたちは、老化とCOVID-19リスクの間の関連を調べるために、複数の操作変数を用いたメンデル無作為化解析を行った。その結果、長寿に関与する遺伝的変動とCOVID-19感染や入院のリスク低下との間に関連が観察され、また、Notchシグナル伝達と免疫系の発達に関わる座位が老化に伴うCOVID-19リスクに重要であることが分かった。
Article: 渡航制限解除後の有病率が低い状況におけるSARS-CoV-2アウトブレイクのリスク
The risk of SARS-CoV-2 outbreaks in low prevalence settings following the removal of travel restrictions
doi:10.1038/s43856-021-00038-8
Sachak-Patwaたちは、マン島とイスラエルをケーススタディとして、渡航制限や他の非医薬品介入が解除された後の有病率が低い状況における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)アウトブレイク(集団発生)のリスクを推定した。分岐過程の数学モデルを用いて、集団の大部分がワクチン接種を受けた後でさえも、持ち込まれた症例からの地域的なアウトブレイクのリスクが残ることが分かった。
Article: COVID-19ワクチン接種を受け入れる意思に関する世界的な探索的研究
Exploratory study of the global intent to accept COVID-19 vaccinations
doi:10.1038/s43856-021-00027-x
de Figueiredoたちは、32か国を対象とした調査に基づき、COVID-19ワクチン接種の容認とその決定要因を推定するための世界的な探索的研究を行った。ワクチン容認の増加に関連する要因は、一部の例外はあるが、男性、65歳以上、高学歴、政府がパンデミックにうまく対処しているという信頼であることが分かった。
Article: SARS-CoV-2感染に対する抗体応答は症状を示した患者では少なくとも8か月間持続する
The antibody response to SARS-CoV-2 infection persists over at least 8 months in symptomatic patients
doi:10.1038/s43856-021-00032-0
LeviとUbaldiたちは、イタリア北部の医療従事者4735人からなるコホートにおいて重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の血清有病率を評価した。血清陽性者では、8~10か月間にわたって抗体が維持されること、この期間における抗体レベルの変化は症状の有無や特定の参加者サブグループと関連していることが分かった。
Article: COVID-19患者の剖検試料セットにおけるSARS-CoV-2および宿主侵入因子の分布の特徴
Characterization of SARS-CoV-2 and host entry factors distribution in a COVID-19 autopsy series
doi:10.1038/s43856-021-00025-z
Wangたちは、COVID-19患者6人の死後試料においてSARS-CoV-2ウイルスの感染と複製の組織分布や宿主細胞の侵入因子発現の特徴を明らかにした。肺組織や多数の非肺組織でSARS-CoV-2の感染と宿主侵入因子の共局在が報告された。
Article: 長期介護施設ではCOVID-19 mRNAワクチンの接種率が高いとSARS-CoV-2伝播が迅速に制御される
High coverage COVID-19 mRNA vaccination rapidly controls SARS-CoV-2 transmission in long-term care facilities
doi:10.1038/s43856-021-00015-1
De Salazarたちは、スペインのカタルーニャにある長期介護施設の入居者において、BNT162b2 mRNAワクチン接種が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の伝播と死亡に及ぼす影響を、統計学的モデル化を用いて定量化した。ワクチン接種率が高いと、入居者間の伝播が大幅に減少し、記録された感染やCOVID-19関連死の約4例のうち3例が予防されることが分かった。
Article: 乳がんにおける深層学習を用いたバイオマーカー状態や関連する形態学的特徴の決定
Determining breast cancer biomarker status and associated morphological features using deep learning
doi:10.1038/s43856-021-00013-3
GambleとJaroensriたちは、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色画像を用いて、乳がんのバイオマーカー状態を予測する深層学習系を開発した。これらのモデルにより、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)のスライドレベルおよび限局性組織領域レベルでの予測が可能になり、解釈可能性解析から、これらのマーカーに関連する特異的な組織学的特徴が明らかになった。
Article: in silicoでの症例対照臨床試験において個別化高位脛骨骨切り術は一般的なプレートと同等の機械的安全性を備えている
Personalised high tibial osteotomy has mechanical safety equivalent to generic device in a case–control in silico clinical trial
doi:10.1038/s43856-021-00001-7
MacLeodたちは、in silicoでの臨床試験において、高位脛骨骨切り術(HTO)用の3Dプリントによる個別化プレートの機械的安全性を評価した。この新しい方法論を用いることにより、個別化プレートで、従来のプレートと比較して、機械的破損のリスク上昇は見られなかったことから、個別化HTOによる治療を行った患者において臨床転帰を評価するためのさらなる研究を行うことが支持された。
Article: COVID-19における性別特異的なリスク要因や臨床転帰の解析
Analysis of sex-specific risk factors and clinical outcomes in COVID-19
doi:10.1038/s43856-021-00006-2
Junたちは、ニューヨークでCOVID-19により入院した患者からなる2つのコホートにおいて、性別により層別化した臨床転帰を評価した。両方のコホート[世界的大流行(パンデミック)の初期の患者コホートとその後の期間の患者コホート]において男性であることは転帰不良のリスク要因である一方、初期のコホートで観察された性別特異的なリスク要因の一部は、その後の期間のコホートでは観察されなかった。
Article: フランスにおける秋のロックダウンはSARS-CoV-2循環の減少を開始させる主要な要因ではなかった
The autumnal lockdown was not the main initiator of the decrease in SARS-CoV-2 circulation in France
doi:10.1038/s43856-021-00002-6
Pereda-Lothたちは、フランスにおける2020年秋の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の動態を調べた。ウイルス抑制の最初の引き金になったのは、政府が実施した「非常事態」と外出禁止令の対策で、その後のより厳しい制限のロックダウンではなかったことが分かった。