Rap1の2つの機能がT細胞の恒常性を維持し大腸炎の発症を抑制している
Dual functions of Rap1 are crucial for T-cell homeostasis and prevention of spontaneous colitis
2015年12月4日 Nature Communications 6 : 8982 doi: 10.1038/ncomms9982
Rap1-GTPは接着分子インテグリンの1種である白血球機能関連抗原1(LFA-1: leukocyte function-associated antigen-1)を活性化し、高内皮細静脈(HEV)上でリンパ球の停止を引き起こす。今回我々は、Rap1-GDPが、テザー形成の阻害により、末梢リンパ節アドレッシン(PNAd: periphral lymph node addressin)、Pセレクチンおよび粘膜アドレッシン細胞接着分子1 (MadCAM-1: mucosal addressin cell adhesion molecule-1)上でのT細胞のローリング現象を抑制することを示す。従って、T細胞特異的にRap1を欠損させたマウスは、ナイーブT細胞の末梢リンパ節へのホーミングが障害され、TH17細胞およびTH1細胞の大腸へのホーミングが促進されるため、腫瘍を伴う大腸炎を自然発症する。Rap1-GDPは、静止状態のT細胞においてERMタンパク質(エズリン、ラジキシン、モエシン)をリン酸化するLOK: lymphocyte-oriented kinaseと結合して活性化を引き起こす。リン酸化を模倣させたエズリンはRap1欠損T細胞のローリングを減少させることで、大腸へのホーミング減少をさせる。一方、ケモカインは数秒以内に細胞膜でRap1を活性化し、Rap1-GTPがフィラミン(FLN: filamin)に結合すると、FLNとLFA-1のβ2鎖との結合が消失し、その結果LFA-1が活性化される。このRap-1依存性のT細胞循環の調節は大腸炎の発症を防止している。
Sayaka Ishihara, Akihiko Nishikimi, Eiji Umemoto, Masayuki Miyasaka, Makoto Saegusa & Koko Katagiri