2024年12月号Volume 21 Number 12
抗肥満薬が幅広い疾患に効果
GLP-1受容体作動薬という新しい抗肥満薬は、アルコールやたばこなどの嗜癖を抑制し、心血管疾患、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群、パーキンソン病など多岐にわたる疾患に対して有効であることが示唆されている。しかし、その効果の作用機序はまだ完全には解明されておらず、研究が進められている。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「古い薬に新たな生命を吹き込む」「グリーンな牧場:牛肉のカーボンフットプリントの削減」「一般的なプラスチックの廃棄物を原料に変える安価な触媒」「アマゾンの配達員:湖を回遊するマナティーが植物の種子を散布」、他。
News in Focus
ブラジルの記録的な洪水で露出した化石の救出を急げ
断続的に降る雨の中、ブラジル南部の古生物学者らは、恐竜などの骨が損なわれないうちに発掘しようと作業を進めている。
「脳時計」によって脳の老化を早める要因が明らかに
大気汚染への曝露や社会経済的格差が大きな国での生活は、脳の老化が実際の年齢よりも早く進むことと関連している。
科学者が開発した「AIサイエンティスト」の実力は?
サカナAI社が開発したAIサイエンティストは、学術文献の検索から論文の執筆まで、科学研究のサイクルの全ての要素を遂行するAIシステムだが、限界もある。
気候変動に関する人々の考えを変えるには
気候変動に関する科学的コンセンサスを伝えることは人々の考えを変えさせる助けになるが、個人的な体験について会話することも必要である。
念願の「原子核時計」実用化へのカウントダウン
原子核内でのエネルギー状態の変化に基づいて時を刻む時計が、基礎物理学研究を一変させるかもしれない。
ノーベル医学生理学賞はマイクロRNAの発見に
遺伝子発現の転写後制御に重要な役割を果たす新しいクラスのRNA分子を発見したVictorAmbrosとGaryRuvkunが2024年のノーベル医学生理学賞を共同受賞した。
ノーベル物理学賞は機械学習の先駆者に
John HopfieldとGeoffrey Hintonの研究はニューラルネットワークの発展を可能にした。
ノーベル化学賞はAlphaFoldの開発者らに
創薬に革命を起こす可能性を秘めた人工知能ツールをたたえて、その開発に貢献した3人にノーベル化学賞が贈られる。
Features
南アジア出身者に心臓病が多いのはなぜか?
南アジア系の若者たちは心臓病や代謝性疾患にかかるリスクが高く、研究者たちはその理由を解明しようとしている。
抗肥満薬が肥満以外にも効く理由
新しい抗肥満薬は、肥満だけでなく、嗜癖やパーキンソン病など、幅広い疾患に効果があるようだ。その背後にあるメカニズムの研究が進んでいる。
Japanese Author
Free access
クロマチンの動きをクライオ電顕で解く
ヒト細胞中のDNAは、ヒストンタンパク質の芯に何重にも巻かれたクロマチンとして存在する。転写や組換えといった反応が起こるとき、酵素はどうやってDNAに近づき、それに働き掛けるのだろうか。この仕組みの解明一筋に研究を進め、近年次々と成果を上げている、東京大学の胡桃坂仁志教授に話を聞いた。
News & Views
損傷部位との境界細胞が心破裂のリスクを上昇
心臓発作の後、損傷した組織と健康な組織の境界に位置する心筋細胞が炎症反応を引き起こし、この炎症反応が近傍の細胞に広がって、心臓の壁が裂けやすくなることが分かった。
細孔によるタンパク質配列解読へ新たな一歩
生物学者は、文章の文字を読むように、あらゆるタンパク質分子のアミノ酸配列を読み取れるようになりたいと願っている。生物学的モーターがタンパク質を細孔から引き戻すシステムによって、この夢の実現に近づいた。
クォーク対の量子もつれを観測
陽子を非常に高速に加速して衝突させることにより、科学者たちは、クォーク対が量子もつれの現象を示すことを示した。この結果は、原子核を1つに結び付けている力の1つについての新たな理解につながる可能性がある。
Advances
読み書き障害をビデオゲームで抑える
アクション満載のビデオゲームが単語の認識能力を高める。
ファントムコスト
「うま過ぎる話」が敬遠される理由。
Where I Work
Bernd Seiser
Bernd Seiserは、オーストリア科学アカデミー(インスブルック)のテクニシャン。
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