1年を振り返って

各号の中から特に印象深かった記事を紹介します。オンライン版Nature ダイジェスト購読者の皆様は、全てのHTML記事(2011年〜)にアクセスいただけます。特別公開記事は、購読されていない方でもご覧いただけますが、ご登録(無料)が必要です。

2022

2022年も、人類はCOVID-19から解放されませんでした。このパンデミックはいつ終わるのか?2003年のSARS、2012年のMERS、そしてCOVID-19を引き起こすSARS-Cov-2の流行からも、コロナウイルスの脅威はこれでおしまい、とはいかないように思えます(2017年9月号「コロナウイルスの自然宿主はやっぱりコウモリ!」)。

薬やワクチン開発を支えている人類の科学は完璧ではありませんし、たとえ良いワクチンや薬ができても、貧富の格差が分配を妨げます。それに、こうした感染症が頻発する根本には、野生動物と人との接触機会の増加があります。森林破壊問題に各国が連携して取り組む必要があることは明らかですが、この問題の根底にも、やはり貧困があります。2022年のNatureには、貧困や不平等に切り込む記事が多く掲載されました(「エビデンスに基づく教育」で遅れを取り戻す〔8月号〕、貧困を減らす方法を求めて〔9月号〕、人にも地球にも「ヘルシー」な食生活とは?〔3月号〕)。

さて、小誌ですが、3月号から「Research Highlight」セクションを拡充しました。さまざまな雑誌から集めた珠玉の科学ニュースをお楽しみください。またウェブ版には、話題のトピックごとに記事を集めた「コレクション」も新設しました(トピックは今後も増やしてまいります!)。持続可能な世界を実現するために科学の力が求められる昨今、皆さまのアイデアを刺激する「コレクション」となれるよう努めます。

  • 1月号

    1月号

    数千億円の「脳地図」から見えてきたこと

    「宇宙から地球を観察して、人間の会話を盗み聞きするようなもの」。そうたとえられる脳地図作りに、世界中の科学者たちが力を合わせて取り組んでいる。脳の細胞同士のつながりを把握することで脳が働く仕組みを理解し、医療につなげることが目的だ。各国の予算を合わせると約9000億円にもなるが、その取り組みは、脳神経科学に既に新たな視野をもたらしている。

    2022年 1月号

  • 2月号

    2月号

    ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、宇宙へ

    その構想から30余年、ハッブル宇宙望遠鏡の後継「ウェッブ」が2021年12月25日に打ち上げられた。2022年1月9日には主鏡の展開が完了し、1月25日には地球から150万km離れた観測場所に到達した。ウェッブが狙うのは、ハッブルが捉えた深宇宙の更なる深淵、つまり、宇宙が誕生したとされる138億年前だ。

    2022年 2月号

  • 3月号

    3月号

    人にも地球にも「ヘルシー」な食生活とは?

    栄養が十分に取れて地球環境の脅威にならないこと。私たちが目指さねばならない食生活だ。2019年、栄養学者や生態学者らが「EAT–Lancet食」を発表した。それは誰もが実践できる内容ではなかったが、持続可能な食が注目されるようになった。そして現在、地域ごとに「最適な食物」を見定めるための研究が、世界各国で行われている。

    2022年 3月号

  • 4月号

    4月号

    尿のリサイクルが世界を救う

    尿は、栄養素に富んだ「価値ある資源」だ。下水から尿を分離することで、難しい環境問題のいくつかが緩和され、持続可能な形で肥料を供給することも可能になる。そうした取り組みは何十年も前から行われてきたが、普及に至っていない。「排泄」は生活の基本的な側面であり、そのやり方を根本から変える必要があるからだ。この障壁を越えるにはまず、トイレや尿そのものに対する見方や考え方を変える必要がある。

    2022年 4月号

  • 5月号

    5月号

    心臓と頭部の結び付きの謎

    頭はどのように生じたのか? ヒトと同じ哺乳類であるマウスで、頭部に分化する胚の細胞が、心臓に分化する細胞と同じ集団と分かったのは2010年のことだ。一方、脊椎動物に最も近い無脊椎動物は、手足もなければ頭もないホヤと明らかになり、生物学界に衝撃がもたらされたのは2006年。現在、ホヤをはじめとする尾索動物から脊椎動物のボディープランの進化に関する手掛かりが得られ始めている。

    2022年 5月号

  • 6月号

    6月号

    アルツハイマー病を発症前に治療する

    認知症全体の約3分の2を占めるアルツハイマー型認知症。その社会的な影響の大きさから治療薬の開発が強力に推し進められているが、明確な効果を示すものは得られていない。臨床試験が行われている薬の多くは脳のアミロイド斑を標的としているのだが、試験参加者の病が進行し過ぎていたために効果が得られなかった可能性があるという。そこで現在、発症前の人に薬を投与する試験が進められている。

    2022年 6月号

  • 7月号

    7月号

    タンパク質構造予測AIによる革命と「その先」

    タンパク質のアミノ酸配列からタンパク質の立体構造を予測する、ディープマインド社の「AlphaFold(アルファフォールド)」。深層学習の手法でトレーニングしたニューラルネットワーク(脳回路を模した機構)を用いた、人工知能(AI)プログラムである。2021年7月に公開されてから1年足らずで、早くも生物学に大変革をもたらしている。

    プラスチックのリサイクルに最適な酵素

    ポリエチレンテレフタレート(PET)廃棄物は食品包装に適した材料に再生可能だが、現在そうしたリサイクルは飲料用のPETボトルなどに限定されている。今回、リサイクル原料の選択肢を大きく広げる酵素が、機械学習を用いて開発された。

    2022年 7月号

  • 8月号

    8月号

    「エビデンスに基づく教育」で失われた学習機会を取り戻す

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行は、史上最大の教育崩壊を引き起こし、世界の教育格差を露わにした。子どもたちが学習の遅れを取り戻すにはどうしたらいいのか? 過去20~30年にわたり世界中で蓄積されてきたエビデンスから、実はすでに、最も効果的な戦略が明らかになっている。

    2022年 8月号

  • 9月号

    9月号

    脳の守護者たち

    科学者たちは長い間、脳は免疫細胞集団から完全に遮断されていると考えてきた。しかし近年、脳の境界部には免疫細胞が豊富に存在していて、脳と免疫系は密接であることが分かってきた。ミクログリアをはじめ、さまざまな免疫細胞たちが脳を監視し、保護していることは、新たな常識となりつつある。

    2022年 9月号

  • 10月号

    10月号

    腸内細菌はがん治療を強化できるか

    患者自身の免疫系を解き放つがん免疫療法。強力な治療法だが、がんは抵抗性を獲得する。この抵抗性の打破に役立つと期待を集めているのが腸内細菌だ。免疫療法が奏効した人や健康な人の腸内マイクロバイオーム、つまり糞便を患者に移植したところ、一部の人では治療の効果が強化されたのだ。現在、がんとマイクロバイオームとの関係に照準を定めた複数の臨床試験で検証が進められている。

    2022年 10月号

  • 11月号

    11月号

    COVID-19罹患後症状と微小血栓の謎 Free access

    新型コロナウイルス感染症は多くの場合、時間とともに症状が軽減していくが、疲労感や頭痛、動悸、筋肉痛などのつらい症状が続く人がいることが分かってきた。COVID-19罹患後症状、いわゆる後遺症だ。原因はまだ明らかではないが、微小な血栓が関わっている可能性が指摘され始めている。同時に、効果が証明されていない治療法に患者が飛びつくことが懸念されている。

    2022年 11月号

  • 12月号

    12月号

    求められる性差分析、実現への壁

    研究資金配分機関や出版社は、性差が果たす役割を考慮して研究をデザインすることを研究者に求めるようになった。再現性と厳密性を向上させるだけでなく、1つの性を調べていただけでは発見できない解決策や疑問が見つかるという大きな利点があるものの、複数の性を正しいやり方で研究に組み込むのは簡単ではない。

    レカネマブはアルツハイマー病新薬となるか

    レカネマブの有望な試験結果を製薬企業が発表した。それを受けて、研究者たちは慎重でありながらも期待を持って成り行きを見守っている。

    2022年 12月号

2021

今年も、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染に歯止めがかかりません。COVID-19による死亡者数は11月に500万人を超え、患者数は延べ3億人に迫ろうとしています。ワクチン接種が進む富裕国でも、第5波により、1日の新規感染者数がこれまでの記録を塗り替える事態に。

ベータ株やデルタ株、そして現在感染が急拡大中のオミクロン株は、低所得国での感染爆発を経て生まれた変異株です。低所得国での感染を抑えなければ収束しないことは以前から分かっていました。低所得国にワクチンを配分するための世界的な合意「コバックス(COVAX)」もあります(2021年4月号「COVIDワクチンの公平な配分を成功させなければならない理由」参照)。しかし、貧困国の多くで2回接種完了率が1桁台の中、富裕国では3回目の接種が始まりました。

デマやフェイクニュースも依然、飛び交っています。こうした状況では、一人ひとりがワクチンや感染防止、収束について、確かな知識と考えを持ち、実行する必要があります。それを痛感し、役に立ちたいと思う毎日でした。2021年に小誌に掲載した新型コロナウイルス関連記事は約50本。こちら(Natureasia COVID-19特別翻訳記事サイト)でまとめてご覧いただけます。

  • 1月号

    1月号

    Alexa、私、いま病気?

    スマートフォンのアプリに声を聞かせるだけで、声の主がCOVID-19や認知症、うつ病などに罹患しているかどうかを知ることはできないだろうか。音声に表れる疾患特有の「マーカー」を見つけ出し、それを幅広い疾患の特定に役立てようと、実用化に向けた研究が進められている。

    2021年 1月号

  • 2月号

    2月号

    微生物感染がアルツハイマー病の引き金に?

    微生物と認知症の発症とを結び付ける考え方は、数十年前からあったが、主流から外れるとされてきた。しかし今、研究者たちはこの関係を探り始めている。アミロイド仮説と感染症仮説を結ぶ研究結果が報告され出したからだ。

    2021年 2月号

  • 3月号

    3月号

    水のパラドックスと生命の起源

    水は生命にとって不可欠な物質だが、生命の基礎となるタンパク質や核酸などの高分子を分解してしまう。地球で最初に生まれた細胞は、危険だが不可欠なこの物質に、どのように対処したのだろう? 人類はこの問いの答えを見つけようと、地球の表面や海底のみならず他の惑星にも赴き、探査を始めている。

    翼竜類の進化的起源を示す近縁動物

    恐竜類に近縁な既知最古の飛行性脊椎動物として知られる翼竜類だが、その進化的起源は2世紀にわたり謎に包まれてきた。今回、一連の化石標本の詳細な解析から、この謎に対する1つの答えが導き出された。

    2021年 3月号

  • 4月号

    4月号

    科学を変えた10のコンピューターコード Free access

    現代の科学的発見を支えるコンピューター。プログラムとプラットフォームの進歩は、FortranやBLASTなどを誕生させ、生物学、気候科学、物理学を新たな高みへと導いてきた。Nature は今回、過去数十年の間に研究を一変させた主要なコードについて、その開発経緯と共に科学に何をもたらしたかを探った。

    2021年 4月号

  • 5月号

    5月号

    腸内細菌はどのように脳を変えるのか

    腸脳軸や脳腸相関という言葉を耳にしたことがあるだろうか。腸内細菌が脳の神経系に影響を与え、疾患を引き起こしたり、その経過を変えたりすることが、この数年で急速に明らかになってきた。脳に作用を及ぼす細菌を突き止めるマッピング研究の功績が大きく、ここからパーキンソン病などの疾患で治療に使える可能性が浮かび上がってきた。

    2021年 5月号

  • 6月号

    6月号

    永久凍土に眠る炭素爆弾

    北極域の永久凍土の融解が進んでいる。永久凍土は、陸域最大の炭素シンクだ。炭素源は、植物や動物の死骸だけではない。凍土の下の泥炭には未知・未培養のものも含めてさまざまな微生物が眠っていて、凍土の融解とともに活動を再開し、炭素を含んだガスを大量に放出する可能性があるのだ。

    室内という、最も危険な感染ホットスポット Free access

    換気が不十分だと、室内にウイルス粒子が集積して感染リスクが高まるが、「十分な換気」の基準や効果的な換気方法については、まだ明確な答えが得られていない。科学者たちは室内を安全にするために、さまざまな検討を行っている。

    2021年 6月号

  • 7月号

    7月号

    ヒトとネズミで発生のペースが違う理由

    発生のペースが、マウスとヒトで異なるのはなぜか。そのカギを握ると見られるのが、分節時計と呼ばれる、細胞内のタイムキーパーだ。分節時計の遺伝子は1990年代にニワトリ胚で特定されたが、ヒト細胞で研究が進み出したのは2019年。驚いたことに、ヒトの分節時計は、他の動物よりも進みが遅かったのだ。

    2021年 7月号

  • 8月号

    8月号

    マイクロプラスチックは有害なのか?

    海洋動物や私たちの体内にも見つかる微小なプラスチック片。生態系や人体にどんな影響を及ぼすのか、実は、まだ分かっていない。プラスチックは毎年約4億t生産されるが、分解されるまでには何十年もかかる。蓄積する一方の「時限爆弾」は危険なのか、リスクはそれほどないのか、研究者たちは大急ぎで調査を行っている。

    2021年 8月号

  • 9月号

    9月号

    古代人はいかにして数を数えられるようになったのか?

    数を表すことのできる動物はヒトだけだと考えられている。では、ヒトはそれをいつから始めたのか? 記数法の発展について、現在、考古学や認知心理学などに基づきさまざまな仮説が提案されている。もしかすると、ネアンデルタール人もそれを編み出していたかもしれない。

    2021年 9月号

  • 10月号

    10月号

    新型コロナウイルスが細胞に侵入する仕組み Free access

    感染拡大に歯止めがかからない新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)。このウイルスは、なぜ、これほどの感染力を持つのか。その理由が明らかになってきた。このウイルスは、感染細胞から出ていく際に既に、インフルエンザウイルスなどの他のエンベロープウイルスよりも一歩進んだ状態にあるのだ。

    ディープマインド社のAIがヒトのほぼ全てのタンパク質の構造を予測

    ニューラルネットワーク「AlphaFold」が、35万種類以上のタンパク質の構造を収録した革新的なデータベースを生成した。

    2021年 10月号

  • 11月号

    11月号

    mRNAワクチン完成までの長く曲がりくねった道 Free access

    新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミック下において、大きく飛躍したmRNAワクチン。この研究は、実は何十年も前から行われていて、数百人もの科学者によって一歩一歩積み重ねられてきた。というのも、RNAは著しく不安定で、ワクチンとして利用することは不可能だとされてきたからだ。

    2021年 11月号

  • 12月号

    12月号

    21世紀末の世界人口を予測する

    今世紀末、地球にどれだけの人間がいるか? 複数の研究グループが、さまざまな方法で推定を行っている。国連の研究チームの予想は110億人。一方、88億人とした論文が議論を呼んでいて、LANCETに掲載されたこの論文に、人口統計学者170人が署名付きで疑問を呈した。この数字が、なぜそれほど重要なのだろう。それは、何十年も先の「将来の」人口は、各国の「現在の」政策を左右するからだ。

    2021年 12月号

2020

1月号はNature 創刊150周年特集です。Nature の歩みとともに科学の進歩を追いました。「新分野を拓いたNature 論文10選」ではDNAの構造、太陽系外惑星の発見、モノクローナル抗体の作製、オゾンホールの発見など、世界に衝撃を与えた10のNature 論文を紹介しました。Nature のデザインや書体も、この機会に刷新されました。

しかし、この年の1月、重篤な肺炎を引き起こす新興感染症が中国武漢市などで報告され始めました。後にWHOがSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群)と命名するウイルスによる感染症COVID-19です。このウイルスの特異な点は、その感染力の強さだけでなく、発症前であっても伝播されることと、後に分かってきました(2020年4月号「新型コロナウイルス感染が拡大しやすい理由」)。以降、COVID-19の話題が続きます。

  • 1月号

    1月号

    ゼロから誕生した遺伝子

    進化の過程では、古い遺伝子に手を加えて新しい遺伝子が作り出されると長い間考えられてきたが、自然選択はそれよりはるかに創造的なことが分かってきた。

    2020年 1月号

  • 2月号

    2月号

    投稿前スクリーニングで不正を防ぐ

    故意や過失による研究不正を未然に防ぐため、所属科学者の論文原稿のスクリーニングを独立の機関に有償で依頼する研究機関が出てきた。

    2020年 2月号

  • 3月号

    3月号

    100万年以上続いた後期三畳紀の長雨

    乾燥しきった三畳紀のさなかに極めて湿潤な時期があったという説は、発表から30年を経て今ようやく受け入れられつつある。世界各地の岩石で発見されているこの長雨の痕跡は、この事象が地球上の生命の大きな転換期となり、恐竜類の隆盛にもつながったことを示唆している。

    2020年 3月号

  • 4月号

    4月号

    「フォース」を感知するタンパク質を求めて

    細胞が接触や圧力を感知する仕組みは数十年にわたって謎に包まれていたが、近年になって、そこに関与するタンパク質の解明が大きく進んだ。

    2020年 4月号

  • 5月号

    5月号

    遺伝子編集の新機軸として脚光を浴びだしたRNA編集

    RNA編集はCRISPRに代わる遺伝子編集技術として、可逆的で融通が利く治療法をもたらしてくれそうだ。

    2020年 5月号

  • 6月号

    6月号

    中性子星の奇妙な核心に迫る

    中性子星は、宇宙で最も謎めいた天体の1つだ。その核は超高密度で、直径20kmほどの球体の中に太陽2個分の質量が詰め込まれている。近年、さまざまな観測装置での研究が進み、多くの事実が明らかになろうとしている。

    2020年 6月号

  • 7月号

    7月号

    オピオイド危機と闘う科学者

    神経科学者であるノラ・ボルコフ(Nora Volkow)は、依存症と脳の関連を示す数々の発見と共に、依存症は心の弱さではなく脳の疾患であるという考え方を浸透させたことで知られる。ロシアの革命家トロツキーの孫でもある彼女を突き動かしているのは、依存症患者が差別を受ける社会を変えたいという思いだ。

    米国物理学会の初のバーチャル学術大会に過去最多の参加者 Free access

    新型コロナウイルス禍のため、米国物理学会の4月の大会はオンラインで開催された。

    2020年 7月号

  • 8月号

    8月号

    変わる大学

    新型コロナウイルスによるパンデミックの最悪の状況が過ぎ去ったとしても、その影響は、科学者の働き方や研究内容、そして彼らが手にする研究資金の額を永久に変えてしまう可能性がある。

    2020年 8月号

  • 9月号

    9月号

    太陽に最も近い場所で撮影した太陽のクローズアップ写真

    核融合で輝くその星は謎だらけだ。太陽圏を覆う、コロナから吹き出す太陽風。太陽表面の温度は6000度程度であるのに対し、コロナは100万度以上と推測されている。太陽観測衛星「ソーラー・オービター」が捉えた、太陽表面で躍動する多数のミニチュアのフレアは手掛かりになりそうだ。

    原子レベルの分解能を達成したクライオ電子顕微鏡技術 Free access

    クライオ電子顕微鏡法の解像度の向上により、タンパク質の機能をこれまでにない詳細さで調べられるようになった。

    2020年 9月号

  • 10月号

    10月号

    冥王星の「裏側」が見えてきた!

    冥王星への驚異の接近通過を2015年に成功させた、NASAの探査機「ニューホライズンズ」。冥王星の「裏側」は低解像度でしか撮影できなかったものの、その画像の解析が進み、液体の水の兆候や、不可解な巨大な氷の刃、そして、極寒の惑星の誕生を巡る新しい理論が見えてきた。

    2020年 10月号

  • 11月号

    11月号

    動物は実際、何を考えているのか

    神経科学者たちは、おびただしい数のデータを精査して、攻撃性や欲求などの心の状態および感情を脳が生み出す仕組みを明らかにしようとしている。

    芳香環から出発しない型破りなアニリン合成法

    ベンゼン環などの芳香環を含む有機化合物の合成では、既存の芳香環を構成要素として、そこから分子を組み立てることが多い。今回、芳香環を反応の過程で形成するという革新的な方法で、極めて有用なアニリン類を合成できることが示された。

    2020年 11月号

  • 12月号

    12月号

    遺伝子系図を使った犯罪捜査への期待と懸念

    系図データベースGEDMatchを利用した捜査で凶悪犯罪が次々と解明されている。その後、プライバシーに関する懸念からDNAや系図情報を利用した捜査に議論が勃発。捜査利用には制限が課されるようになった。しかし、犯罪を減らせることへの期待から、DNAから個人を詳細に描き出す技術は次々と開発されている。

    2020年 12月号

2019

2019年前半は、2018年11月に報告された「ゲノム編集ベビー」に関する議論が続き、WHOの諮問委員会は、ヒトゲノム編集に関わる研究に登録システムが必要だとする見解を示しました(6月号「遺伝子編集ベビー問題に本腰を入れるWHO」)。また、フィリピンのルソン島で未知の人類が発見されたことも話題になりました(6月号「フィリピンの洞窟で発見された未知のヒト属」)。グレタ・トゥーンベリさんが地球温暖化対策を大人にもとめて「学校ストライキ」を始めたのもこの頃です(6月号「地球温暖化対策を訴える「学校ストライキ」を科学者らが支持」)

また、Nature は2019年11月に創刊から150年を迎えました(特設サイトはこちら)。それに合わせて小誌でも5月号から、Natureが力を入れてきた科学の発信と議論の促進、若手研究者の支援、Natureの役割について、特別記事を毎月用意いたしました(ネイチャー・ジャパンの特設サイトはこちら)。

  • 1月号

    1月号

    数の力で健康リスクを予測

    ヒトゲノムの構成に基づく健康予測は大きく前進している。しかし、こうした予測の指標の1つとして使われ始めた多遺伝子性リスクスコアについては、まだ大いに議論の余地がある。

    2019年 1月号

  • 2月号

    2月号

    生命を1から組み立てる

    細胞をボトムアップ式に作り上げる過程で生命と非生命の境界が見えてくるに違いない――人工細胞、つまり外部と自身を区画化する膜を持ち、増殖し、進化する系を作ろうという試みは、20年以上前に始まった。この分野はマイクロ流体技術の進歩で急速に発展していて、細胞様の物体を作ることや、簡単な人工の代謝系を構築することにも成功している。

    2019年 2月号

  • 3月号

    3月号

    惑星形成理論の最前線

    ガスと塵に包まれたままの、生まれたばかりの惑星を捉えた画像が、従来の惑星形成理論に異議を申し立てている。

    アドレナリンがサイトカインストームを促進する

    抗腫瘍免疫応答を増強する治療では、サイトカインストームと呼ばれる有害な炎症応答が引き起こされることがある。今回、こうした有害な応答を防ぐのに役立つ可能性がある新しい知見が得られた。

    2019年 3月号

  • 4月号

    4月号

    周期表の発展を支えた女性科学者たちの物語

    新元素の発見から既知元素の特性評価まで、周期表を形作る上で重要な役割を果たしてきた女性科学者たちに、化学史学者のBrigitte Van TiggelenとAnnette Lykknesが光を当てる。

    2019年 4月号

  • 5月号

    5月号

    フッ素化合物を追跡する

    水も油もはじく有機フッ素化合物は、焦げ付かないフライパンからレインコート、消火剤まで、私たちの生活で大活躍だ。一方で、健康問題との関連が明らかになった一部は、国際的に使用が禁止されたり、曝露限界値が設けられたりした。その便利さ故、代替のフッ素化合物が続々と開発され、環境中に放出されているが、それらの構造は不明で、安全性評価は難航している。

    2019年 5月号

  • 6月号

    6月号

    細胞内の秘密の会話

    タイプの異なる細胞小器官同士が結合していることが30年前に報告された時、誰もが「何かの間違い」だと思った。だが、ライブイメージング技術の進歩で、異なる細胞小器官同士が結合して物資を交換する様子が捉えられるようになると、風向きが変わった。さらに最近では、細胞小器官同士をつなぐ繋留因子がさまざまな疾患と関連することも分かってきた。

    2019年 6月号

  • 7月号

    7月号

    ブラックホールを初めて撮影

    ブラックホールの姿が初めて撮影された。この観測は、アインシュタインの一般相対性理論のこれまでで最も強固な確認の1つになった。

    2019年 7月号

  • 8月号

    8月号

    系統樹を揺さぶるトリックスター

    アーキアと呼ばれる微生物群の一部には、北欧神話に出てくるロキなどの神にちなんだ名前が付けられている。この仲間は謎が多く、ヒトなど複雑な生物の起源を巡る論争の火種にもなっている。

    2019年 8月号

  • 9月号

    9月号

    造血幹細胞を実験室で安価に大量増幅させる新技術

    液体のりの成分を用いると、マウス造血幹細胞を未分化の状態で大量に増幅できることが分かった。

    2019年 9月号

  • 10月号

    10月号

    深海底鉱物資源開発のジレンマ

    深海底に眠る鉱物資源の開発はそれらの供給不足を解決するものとして 大いに期待されているが、一方で、人間の活動域から遠く離れた生態系で大規模な絶滅を引き起こす恐れもある。

    6人プレイのポーカーでAIがプロに勝利

    中国と米国の研究チームがそれぞれ、16本ある酵母の染色体を再編成して、1本ないし2本まで融合することに成功した。意外なことに、こうした酵母の見た目や増殖には異常が見られなかった。

    2019年 10月号

  • 11月号

    11月号

    結晶作りの2人の巨匠

    物質・材料研究機構の谷口尚と渡邊賢司が作り出す、極めて高品質の六方晶窒化ホウ素結晶が、近年目覚ましい発展を遂げているグラフェンのエレクトロニクス研究を支えている。

    2019年 11月号

  • 12月号

    12月号

    日本の再生医療がもたらすもの

    日本は再生医療の規制緩和へと大きく舵を切った。この政策は国際的な広がりを見せているが、世界中の患者が代償を払う羽目になる危険性もはらんでいる。

    2019年 12月号

2018

2018年は、ゲノム編集が1塩基レベルで可能になったという報告(1月号)があった一方で、11月には重大な倫理違反があり、世界に衝撃が走りました。忠実度に課題があるCRISPR-Cas9系(9月号)が臨床に用いられたことも問題ですが、子々孫々と受け継がれる生殖細胞系列の遺伝子が編集されたヒトが、監視の目をすり抜け誕生してしまったのです。現在、関連学会が新制度の設立に向け動いています。

2018年11月に国際単位系の改定案が承認され、2019年5月から、秒やm、kgなどの多くの単位の定義が変わることも、見逃せません(1月号)。「好き過ぎてつらい博士課程」(3月号)では、博士課程学生が研究生活に満足しつつも不安を抱え苦しんでいることが分かり、教育機関の課題が浮き彫りになりました。新コンテンツ「学術界サバイバル術入門」の連載も始めました。Nature Research Academiesの講師ジェフリー・ローベンズが、学術出版の重要性や効果的な出版方法などを伝授します。

  • 1月号

    1月号

    AI時代の仕事と雇用

    ロボット工学やクラウド・コンピューティング、モバイル技術などのデジタル技術は、この10年で著しく進歩した。特に、人工知能(AI)と呼ばれる機械学習システムの進歩は、世界の労働者のあり方に革命をもたらすといわれる。AIは、良きパートナーとなるのか、人間の雇用を奪うのか?

    2018年 1月号

  • 2月号

    2月号

    ヒト遺伝子のヒット・ランキング

    ヒト遺伝子2万7000個のうち「最もよく研究されている遺伝子」のランキングから、分子生物学の黎明期からその変遷、注目される遺伝子の特徴が浮かび上がってきた。

    2018年 2月号

  • 3月号

    3月号

    好き過ぎてつらい博士課程 Free access

    博士課程学生を対象とするアンケート調査から、不確実な未来への不安や、指導教員への不満が強い一方で、博士課程全般に対する満足度は高く、研究者としての就職を望んでいることが分かった。

    2018年 3月号

  • 4月号

    4月号

    見て見ぬふりをされてきた病

    筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)の研究には苦難続きの過去がある。しかし、ここにきてようやく、研究の足掛かりが見つかりそうな気配だ。

    2018年 4月号

  • 5月号

    5月号

    若者の危険行動を科学する

    青年期の危険行動は単に反抗心から生じるものではないようだ。神経科学による取り組みから、若者の危険行動には、彼らを取り巻く濃密で繊細な人間関係が関わっていることが明らかになってきた。

    2018年 5月号

  • 6月号

    6月号

    細胞内の「相分離」に注目

    工学や化学、物理学の分野では基本的な概念である「相分離」が細胞内で観察されて10年。細胞が内部を浮遊する分子をどのように分離・分配しているかを説明できる可能性があるとして現在注目を集めている。

    グラフェンをずらして重ねると超伝導体に!

    2枚のグラフェンシートを、「魔法角」と呼ばれる特定の角度だけ回転させて積層すると、抵抗なく電子が移動するようになることが明らかになった。

    2018年 6月号

  • 7月号

    7月号

    認知症に脳の炎症の影

    脳の免疫系が、アルツハイマー病などの神経変性疾患を引き起こしている可能性が次々と報告されている。科学者たちはそれを食い止めることができるだろうか?

    2018年 7月号

  • 8月号

    8月号

    気付いてないのはPIだけ? Free access

    研究室の文化がその健全性にどう影響しているかを独自に調査した結果、研究室の主宰者(PI)と他のメンバーとの認識の隔たりや、PIの指導力に対する不満が見えてきた。多くのPIが、管理や指導などのリーダーシップに関する訓練を受けないままその地位に就くからだ。

    2018年 8月号

  • 9月号

    9月号

    AIに公正な判断はできるか?

    公的機関で導入が進むAI。だが、AIは人が入力した過去のデータを基に予測する。つまり入力データやアルゴリズムにバイアスが存在すれば、不公正な判定につながったり、既存の不公平を強固にしたりする可能性がある。公正かつ透明性が確保されたツールは実現できるだろうか。

    CRISPR法は想定外のDNA再配列を引き起こす

    遺伝子改変に用いられるDNA切断酵素は、ゲノムを大規模に欠失させたり、複雑な再配列を引き起こしたりすることが示された。

    2018年 9月号

  • 10月号

    10月号

    「ヒト胚の育成」入門編

    ヒト初期発生は、動物や希少な組織試料を参考に推し量るしかない状況が数十年と続いていた。だが、ヒト受精卵を研究室で13日を超えて培養できる手法が開発され、神経系の発生が開始する14日目以降をどうすべきか議論が始まっている。

    出芽酵母の16本の染色体をつなげて1本に

    中国と米国の研究チームがそれぞれ、16本ある酵母の染色体を再編成して、1本ないし2本まで融合することに成功した。意外なことに、こうした酵母の見た目や増殖には異常が見られなかった。

    2018年 10月号

  • 11月号

    11月号

    感染したインフルエンザの亡霊

    さまざまな亜型が出現するインフルエンザのうち、どの亜型に感染しやすいかは、その人の出生年に流行していた亜型がカギを握っているようだ。免疫学的刷り込みと呼ばれるこの現象を解明すれば、インフルエンザの万能ワクチン開発に利用できる可能性がある。

    石油流出事故の大半に人的ミス Free access

    タンカーの運行や事故に関する記録は、本質的な理解を妨げる内容であることが多く、これが研究や法律にゆがみを生じさせている。今後優先的に進めるべき研究を3つ提案する。

    2018年 11月号

  • 12月号

    12月号

    発見されたガリレオの手紙から新事実

    1回目の異端審問で証拠とされたガリレオの手紙には版が2つある。ガリレオは、主張の柔らかい方が原本で、裁判所には手が加えられたものが送られたと周囲に話していたが、事実は異なるようだ。

    2018年 12月号

2017

2017年は革新的な報告に富んだ1年でした。人工知能(AI)研究では、アルゴリズムを訓練することで皮膚がんを専門医と同程度の精度で識別できること(5月号)や、人間からの情報提供なしに囲碁を独習できるAI(12月号)が報告されました。また、重力波検出にノーベル物理学賞が贈られると発表された10月、中性子星の合体を重力波と可視光で観測したことが報告され、天体現象を多角的に調べる「マルチメッセンジャー天文学」の幕開けとして世界中が沸きました(12月号)。一方で、科学軽視の政権に混乱する米国、科学研究の根本を揺るがす偽造試薬や論文捏造などの問題の対処に追われる中国(8月号、9月号)、科学における国際的競争力の低下が浮かび上がった日本(11月号)など、各国の科学政策に厳しい目が注がれた1年でもありました。
なお小誌は10月号から、新セクション「TOOLBOX」の掲載を開始しました。研究者のための便利ツールを紹介してまいります。

  • 1月号

    1月号

    「致死的変異」の正体を見極める

    6万人以上のタンパク質コード領域(エキソーム)の塩基配列データベース「ExAC」とその解析結果が報告された。ExACは無料で利用できることから、臨床検査室では患者の治療方針を検討する際にまずExACを当たるようになってきている。

    2017年 1月号

  • 2月号

    2月号

    反水素原子の分光測定に成功 Free access

    物理学者の離れ業により、反物質原子による光の吸収が初めて測定され、基礎物理学の前提となっている理論が検証された。

    2017年 2月号

  • 3月号

    3月号

    CRISPRの謎

    世界はバイオテクノロジーに革命をもたらす遺伝子編集ツール「CRISPR」に群がっているが、それがどのように働き、何に由来するのかという基礎的な問題は、今なお大きな謎となっている。

    2017年 3月号

  • 4月号

    4月号

    クルクミンの効果に化学者が警鐘

    香辛料抽出物クルクミンは広範な評価試験でニセの反応を示す分子であると、注意を呼びかける論文が発表された。

    2017年 4月号

  • 5月号

    5月号

    ホットでクールな太陽熱冷房

    大量のエネルギーを消費するエアコン。この需要が高まっている今、一部の人々は、暑さの原因である太陽熱に問題解決のカギがあると考えている。

    恐竜系統樹の枝ぶりが変わる? Free access

    74の分類群に属する多様な恐竜について、骨の解剖学的特徴を細かく調べた研究から、主要な系統群の間に新たな類縁関係が浮かび上がった。恐竜の分類に関する長年の定説を根本から覆す今回の新説で、「教科書の書き換え」が必要になるかもしれない。

    2017年 5月号

  • 6月号

    6月号

    がん発症原因の大半はDNAの複製エラー Free access

    環境要因や遺伝要因が、がんリスクに及ぼす影響は、研究者が考えているほど大きくないかもしれない。

    2017年 6月号

  • 7月号

    7月号

    ループ形成の謎に挑む研究者たち

    DNAはなぜ絡まずに収納されるのか。これはゲノム高次構造に関する最も悩ましい問題の1つだが、「ループ状ドメイン」の形成がその1つの答えとなりそうだ。ただし、ループ形成を推し進めているものの正体については見解が分かれている。

    2017年 7月号

  • 8月号

    8月号

    偽造試薬と戦う中国

    偽造試薬の一大市場となっている中国。その製造・供給ルートには、近所の印刷店など予想だにしない人々が関与していることが分かってきた。中国のニセ試薬は国内にとどまらず、科学界全体に波及し始めている。

    2017年 8月号

  • 9月号

    9月号

    研究助成金獲得の秘訣

    Nature は米国立衛生研究所(NIH)の助成金交付データと獲得熟練者の話をもとに、助成金獲得に有効な戦略や、よくある助言のうち無視すべきものを探った。このたびの調査結果は、世界中のどの助成金申請にも当てはまり、特に若手研究者やキャリア初期の研究者にとって役立つはずだ。

    2017年 9月号

  • 10月号

    10月号

    細胞に魅せられた科学者

    塩基配列解読技術の進歩によって微量なRNAも解析できるようになり、細胞集団を単一細胞レベルで調べることが可能になった。この分野を切り開き、現在ヒト細胞アトラスを主導するAviv Regev氏の素顔に迫る。

    トポロジカル物質の未来

    ごくありふれた物質の中に、奇妙なトポロジー効果が隠れているかもしれない。こうした効果を見つけることで、新粒子の発見や超高速トランジスターの実現、ひいては量子コンピューティングの開発に弾みをつける可能性がある。

    2017年 10月号

  • 11月号

    11月号

    エルニーニョ現象で熱帯の森林が二酸化炭素の放出源に

    強いエルニーニョ現象による高温や干ばつで、熱帯の森林が放出する二酸化炭素量が大きく増加していたことが分かった。

    2017年 11月号

  • 12月号

    12月号

    細胞をつなぐナノチューブ

    1999年に報告された、細胞から細く長く伸びるワイヤー状の管。これまで評価されていなかったこの細胞間連絡は、がん細胞や細菌にも利用され、それらが広がるのを助けている可能性が出てきた。

    独習で最強になった囲碁AI

    人工知能プログラム「アルファ碁ゼロ」は、人間の棋譜を学ぶことなく、短期間で囲碁を独習した。

    2017年 12月号

2016

2015年初夏に熱帯太平洋に出現したエルニーニョ現象は、2016年春には終息したものの、観測史上最強規模にまで発達し、スーパーエルニーニョやゴジラ・エルニーニョと呼ばれました。また、iPS細胞は、その樹立報告からちょうど10年という節目の年を迎えました。iPS細胞の出現により世界がどう変わったのか、「iPS細胞の10年」で振り返っています。10月3日には、オートファジー研究の開拓者、大隅良典氏のノーベル医学・生理学賞単独受賞が発表され、日本中が喜びにわきました。大隅氏は会見で、「役に立つ」という観点で科学を捉える現在の社会に危機感を抱いていると語り、基礎研究の大切さを訴えたことが話題となりました。

  • 1月号

    1月号

    炭素を大気から取り出す技術が事業化目前

    大気中の二酸化炭素を直接捕捉して資源として再利用することは不可能ではないが、事業化はコスト面から困難だとみられていた。このほど2つの企業が、炭素捕捉・再生を行うプラントの拡大と改良を発表した。

    2016年 1月号

  • 2月号

    2月号

    遺伝子ドライブでマラリアと闘う

    マラリア原虫に対する耐性遺伝子を持つ蚊をマラリアに苦しむ地域に迅速に広めることができれば、この感染症を永久に根絶できる可能性がある。このほど、遺伝子ドライブでそれが実現でき得ることが示された。

    酸化ストレスはがんの遠隔転移を抑制する

    活性酸素は、細胞にストレスを与え、がんのイニシエーション(発がんの第一段階)を促進すると考えられてきたが、今回、がんの転移を防ぐという有益な作用も持っていることが明らかになった。

    2016年 2月号

  • 3月号

    3月号

    がんの主な原因は「不運」?

    がんの発生に大きな影響を及ぼすのは環境要因なのか内的要因なのかをめぐり、研究者の間で論争が起きている。

    人工知能が囲碁をマスター

    人間の思考をまねた人工知能が、囲碁でプロの棋士に勝利した!

    2016年 3月号

  • 4月号

    4月号

    品質保証ブームを巻き起こせ!

    ラボでの日々の実験に「品質保証」を取り入れてほしい。お金と時間を費やしてでも積極的に取り組む価値がある。それを知ってもらおうと奮闘している研究者がいる。

    2016年 4月号

  • 5月号

    5月号

    アルツハイマー病マウスで記憶が回復

    アルツハイマー病の患者でも記憶を形成できることを示唆する研究結果が発表され、新たな治療への期待が膨らんできた。

    2016年 5月号

  • 6月号

    6月号

    p値の誤用の蔓延に米国統計学会が警告

    科学者によるp値の誤用を止めるため、米国統計学会(ASA)が異例の声明を出した。

    2016年 6月号

  • 7月号

    7月号

    がんの進化を利用した治療戦略

    他のあらゆる生物と同じく、腫瘍にも自然選択が働いている。がんの治療法の開発にこの進化の原理を利用しようという動きが現在高まっている。

    たるんだ肌を若返らせる薄膜

    塗布するだけで、たるんだ皮膚に若々しい弾性がよみがえる、透明なシリコンポリマーが開発された。

    2016年 7月号

  • 8月号

    8月号

    ヒト胚の体外培養で最長記録達成

    ヒト胚を受精後13日目まで培養できる方法が編み出された。この手法を用いて、ヒトの初期発生を知るための手掛かりが得られそうだ。

    2016年 8月号

  • 9月号

    9月号

    iPS細胞の10年

    人工多能性幹(iPS)細胞は、医療革命の訪れを告げる使者だと考えられた。しかしその発見から10年経った現在、iPS細胞はむしろ生物学の研究を大きく変えるツールとなりつつある。

    琥珀に恐竜時代の鳥類の翼

    白亜紀の幼鳥の翼が、琥珀の小片の中からありのままの姿で発見された。その特徴の数々は、この原始的な鳥類が、現生鳥類とさほど変わらぬ翼を持っていたことを物語っている。

    2016年 9月号

  • 10月号

    10月号

    「温故知新」で医薬品開発

    創薬コストの高騰を受け、既存の承認薬や開発が途中で中止になった化合物を対象に、新たな適応疾患を探し出して製品化する「ドラッグ・リポジショニング」と呼ばれる取り組みが盛んになっている。

    2016年 10月号

  • 11月号

    11月号

    太陽系から最も近い恒星に、地球に似た惑星

    プロキシマ・ケンタウリの周りを公転する地球サイズの惑星には、液体の水があるかもしれない。もしかすると生物もいるかもしれない。

    2016年 11月号

  • 12月号

    12月号

    天才児の育て方

    並外れて優秀な児童の成長を長期にわたって追跡する研究から、21世紀をリードする科学者を育てるために必要なことが見えてきた。

    2016年 12月号

2015

社会を大きく変え得る技術がいくつも登場し、議論が巻き起こった1年でした。その1つが、医療用麻薬モルヒネをその前駆物質まで生合成できる酵母です。医療現場では需要が高まっており、安価に供給可能になるという利点がある一方で、違法薬物をフラスコ1つで大量生産できることから、デュアルユース技術の悪用をどのように防ぐかが問題です。もう1つは、ゲノム編集がヒト胚で実施されたことです。生殖細胞で実施すれば後世に影響を及ぼすにもかかわらず、法整備が追い付いていない現状が浮き彫りになりました。嬉しいニュースもありました。オンコセルカ症治療薬となった抗生物質を産生する細菌を発見した大村智氏にノーベル医学生理学賞が、ニュートリノ振動を見出した梶田隆章氏にノーベル物理学賞が贈られました。

  • 1月号

    1月号

    被引用回数の多い科学論文トップ100

    1900年から今日までに発表された科学論文の中で「被引用回数トップ100」に入っているのは、どのような論文なのだろうか?

    2015年 1月号

  • 2月号

    2月号

    認知行動療法の効果を検証するには

    認知行動療法は最もよく研究されている精神療法だが、この治療法がうつ病患者に効く仕組みはいまだに解明されていない。

    2015年 2月号

  • 3月号

    3月号

    ゲーム理論がポーカーを「解いた」

    最も一般的な種類のポーカーである「テキサス・ホールデム」を基本的に完全に攻略したコンピューター・アルゴリズムが開発された。

    2015年 3月号

  • 4月号

    4月号

    アルカリ金属の爆発の秘密が明らかに Free access

    アルカリ金属を水に入れると派手に爆発する。化学の授業でおなじみのこの実験の反応機構が、実は長く誤解されてきたことが、ハイスピードカメラを使った研究で判明した。

    2015年 4月号

  • 5月号

    5月号

    知覚情報をもとに自ら学習する人工知能

    コンピューターゲームのプレイ方法を、深層学習と強化学習によって自ら学習する人工知能が開発された。この人工知能は、古典的な49種類のコンピューターゲームのうち29種類でプロのゲーマーと同等以上の成績を収め、人工知能がさまざまなタスクに適応可能なことを実証した。

    2015年 5月号

  • 6月号

    6月号

    ヒトの生殖系列のゲノムを編集すべきでない Free access

    ヒトで世代を超えて伝わるような遺伝的改変は重大なリスクをもたらす一方で、その治療的利益はほんのわずかだとして、研究者らが警鐘を鳴らしている。

    2015年 6月号

  • 7月号

    7月号

    細胞が重力でつぶれない仕組みを発見

    体が扁平になる奇妙なメダカの変異体が発見された。どうして扁平になるのか — 10年余りにわたる探索の結果、ようやくその謎が解かれた。普通のメダカの細胞には、重力に押しつぶされないような仕組みが働いていたのだ。その仕組みが存在しなかったら、ヒトはもちろん地球上の生物の大部分は、今の形をしていなかったかもしれない。

    2015年 7月号

  • 8月号

    8月号

    モルヒネ合成酵母の完成が間近

    グルコースからモルヒネの前駆物質を生合成できる酵母株が作り出された。

    2015年 8月号

  • 9月号

    9月号

    オキシトシンの基礎研究は始まったばかり

    オキシトシンが脳に与える影響は複雑なものであることが、この数年で明らかになってきた。その結果、この物質を単なる「抱擁ホルモン」とする見方を一刻も早く改めるべきだという考え方が研究者の間で広がりつつある。

    2015年 9月号

  • 10月号

    10月号

    オルガノイドの興隆

    臓器に似た立体構造体「オルガノイド」を作る研究が熱を帯びている。培養皿の中にシグナル分子を投入するだけで、細胞が自分で組織を形作るのだ。こうしてできたミニ臓器は、単一細胞の分析よりも多くの情報をもたらす場合があるだけでなく、薬の効果や副作用を調べるのにも役立つことが分かってきた。

    2015年 10月号

  • 11月号

    11月号

    硫化水素が最高温度で超伝導に

    ごくありふれた物質が、これまでで最も高い温度で超伝導状態になることが分かった。最高温度の更新は21年ぶりで、この意外な実験結果に今、追試や理論研究が次々と行われている。

    2015年 11月号

  • 12月号

    12月号

    分子マシンの時代がやってきた

    化学者たちは、生物から着想を得て、スイッチやモーター、ラチェットとして機能するさまざまな分子部品を創り出してきた。そして近年、これらの微細な部品を使ったナノスケールの機械が続々と発表されている。

    2015年 12月号

2014

2014年は「世界結晶年」。国連が定めた国際年の1つで、産業の発展を支えてきた結晶学を広く伝え、再確認することを目的として制定されました。4月号では結晶学の歴史と、X線回折現象を発見したラウエの功績について特集しています。そして、青色LEDの発明と実用化に貢献した3氏(赤﨑勇・名城大学教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二・カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)にノーベル物理学賞が贈られました。地球温暖化による影響が次々と報告される昨今、スウェーデン王立アカデミーは「21世紀はLEDによって照らされる」と賞賛したことが印象深かったです。また、iPS細胞を使った臨床試験が世界に先駆けて日本で行われ、世界中から大きな注目を集めました。

  • 1月号

    1月号

    脳科学で心が丸はだか?

    脳活動のパターンをスキャン装置で捉え、その情報を解読することで、その人の考えや見た夢、さらには次に何をしようとしているかまで、読み取れるようになるかもしれない。

    2014年 1月号

  • 2月号

    2月号

    東北地方太平洋沖地震を引き起こした断層の性質が明らかに Free access

    11年の東北地方太平洋沖地震における地震規模と津波の背景に、薄くてもろい粘土層の存在があったことが、震源海域での掘削により明らかになった。

    2014年 2月号

  • 3月号

    3月号

    医療用アイソトープが不足する!

    世界の原子炉の老朽化により、近い将来、医療用アイソトープは深刻な供給不足に陥ると考えられている。それに備え、原子炉を使わない医療用アイソトープ製造法を模索している革新的な企業がある。

    2014年 3月号

  • 4月号

    4月号

    微小世界の謎を解く–結晶構造解析100年の歩み–

    アドイツの科学者マックス・フォン・ラウエは、結晶によるX線の回折現象を発見し、1914年にノーベル物理学賞を受賞した。現在では、X線回折を利用して、単純な鉱物からグラフェンなどのハイテク材料、ウイルスなどの複雑な生物構造体に至るまで、さまざまな物質の構造が解明されている。

    2014年 4月号

  • 5月号

    5月号

    様変わりする世界の霊長類研究

    欧州の研究者は、動物保護活動家による激しい攻撃から霊長類研究を守るための政治的勝利をようやく勝ち取った。だが、一部の地域では、それが骨抜きにされようとしている。

    2014年 5月号

  • 6月号

    6月号

    「1000ドルゲノム」成功への軌跡

    米国政府は、ヒトゲノム配列の解読コストを待望された目標レベルまで低下させることに成功した。その成功のカギは、政府肝煎りのプログラムにあった。

    2014年 6月号

  • 7月号

    7月号

    長い低迷期を抜けた免疫療法

    免疫系はがんと闘うための強力な武器となり得る。これを利用する免疫療法の世界に「免疫チェックポイント阻害剤」という新機軸が登場したことで、免疫療法が盛り返してきた。

    2014年 7月号

  • 8月号

    8月号

    天然痘の監視は終わらない

    史上最大級の恐ろしい疫病の名残が、冷凍のミイラや、手紙に同封されたかさぶたに含まれているかもしれない。この感染症がゾンビのように蘇ったとき、私たちは十分に対処できるのだろうか。

    2014年 8月号

  • 9月号

    9月号

    忘却の遺伝子

    アルツハイマー病の有力な遺伝的リスク因子が20年余り前に報告されたが、研究者の多くはそれをほとんど無視してきた。しかし、その風潮がようやく変わろうとしている。

    2014年 9月号

  • 10月号

    10月号

    核融合発電に挑むベンチャー企業

    今、トカマク型に代わる新方式の核融合炉に熱い視線が注がれている。その研究開発を支えているのはベンチャーキャピタルと人々の夢だ。

    2014年 10月号

  • 11月号

    11月号

    南極大陸の秘密の湖

    南極大陸の氷床の表面下800mにある氷底湖から採取したサンプルに数千種類の微生物が含まれていることが明らかになった。未知の巨大な生態系の存在が示唆される。

    2014年 11月号

  • 12月号

    12月号

    科学界を去ったPhD

    将来のスター科学者と目されていた優秀な大学院生が、博士号取得後に科学者にならずに別の道に進むことは少なくない。彼らはどんな人生を歩んでいるのだろうか。

    2014年 12月号

2013

2013年、脳機能解明を目指す巨大プロジェクトを、欧州委員会と米国がそれぞれ立ち上げました。欧州委員会が1月に発表した「ヒト脳プロジェクト」では、脳をコンピューター上でシミュレーションすることを目指しているのに対し、米国が4月に発表した「BRAINイニシアチブ」は、神経回路のニューロン1つ1つの活動に基づいた脳地図を作成し、脳がヒトの行動をどのように制御しているかを明らかにすることを目指しています。2013年9月には、ボイジャー1号がすでに太陽圏(太陽磁気圏)を出て、人類未踏の地である星間空間に到達していたことが報告されました。また、ユーリ・ミルラー氏をはじめとする大富豪たちが出資する「ブレイクスルー賞」が創設されたのもこの年です。

  • 1月号

    1月号

    ミトコンドリア病を予防する核の入れ替え技術

    異常のあるミトコンドリアを持った卵(らん)から核を取り出し、正常なミトコンドリアを持った卵に移し替える技術は、サルにおいて確立されていたが、ヒトでも適応可能であることが示された。この技術により、ヒトのミトコンドリア病と呼ばれる遺伝性難病のリスクを低減できる。

    2013年 1月号

  • 2月号

    2月号

    灼熱の水星で、大量の氷を確認

    水星探査機メッセンジャーにより、水星の北極付近に純粋な水の氷が存在することが確かめられた。

    2013年 2月号

  • 3月号

    3月号

    コンピューターの高性能化は熱との戦い

    超小型回路は小型化すればするほど高温になる。技術者たちはコンピューターの新しい冷却法を模索し続けている。

    2013年 3月号

  • 4月号

    4月号

    人間は、儀式をするサルである

    人間集団には、祈り、戦い、踊り、詠唱などの儀式がある。 そして、その儀式の違いが、過激な集団と平穏な集団の違いを生んでいるらしい。 儀式はまた、文明の誕生とも深く関係する。

    2013年 4月号

  • 5月号

    5月号

    環境にやさしいセメント

    古代ローマの時代から現代の建築構造物に至るまで、 セメントは人類文明に不可欠な建築資材としてあり続けてきた。 しかし、セメントの製造では大量の温室効果ガスが排出されてしまう。 それを削減するには、この複雑な材料を徹底的に理解する必要がある。

    2013年 5月号

  • 6月号

    6月号

    ニセの論文誌にだまされるな! Free access

    実在の論文誌をかたった詐欺事件が起こり、科学者が論文掲載料を巻き上げられた。

    2013年 6月号

  • 7月号

    7月号

    精神障害はひとつながり

    これまで病態に応じて区切られ分類されていた精神障害が、実は1つのスペクトラム、つまり、さまざまな病態が連なった1本の軸として表せることが、近年の研究によって示唆されている。 しかし、精神障害診断の最新の改訂版DSM-5では、その採用は時期尚早として見送られた。

    2013年 7月号

  • 8月号

    8月号

    遺伝子組換え作物の真実

    遺伝子組換え作物の導入により、スーパー雑草は本当に誕生したのか?インドの農民は自殺へと追いやられているのか?導入遺伝子は野生種にまで広まっているのか?遺伝子組換え作物をめぐるこれら3つの疑惑に対して、その真偽を検証する。

    2013年 8月号

  • 9月号

    9月号

    21世紀のノーベル賞?

    このところ、ノーベル賞より高い賞金の科学賞が相次いで新設されている。一晩で億万長者になる科学者が出るのは結構なことだが、一握りの研究者に巨額の賞金を授与しても、その研究分野が本当に活性化するかどうかはわからない。

    2013年 9月号

  • 10月号

    10月号

    脳科学の世紀

    米国と欧州が相次いで、数千億円の資金を投入して脳が働く仕組みを解明する構想を打ち出した。 しかし、その実現に必要な技術はまだ十分に整っていないのが現状だ。

    2013年 10月号

  • 11月号

    11月号

    星間空間に達したボイジャー1号

    ボイジャー1号の周囲の空間の電子密度が急上昇したことが分かり、同号は2012年8月に太陽圏を出たことが確認された。

    2013年 11月号

  • 12月号

    12月号

    自家製ソフトウエアの誤りを、誰がチェックする?

    科学の世界では、研究や解析のために、多くの自家製ソフトウエアが作られている。しかし、それが本当に正しいのかどうか、査読の手続きさえ存在していない。

    2013年 12月号

2012

Nature で東日本大震災に関する特別編集記事が組まれたことから、Nature ダイジェスト 初の別冊「震災復興特集号」を発行しました。Nature の視点からみた東日本大震災ということで、国内のニュースとは少し違った視点で記事が書かれています。その他、論文の詳細を公開すべき否かで長らく議論のあった、ヒト-ヒト間で伝搬するH5N1鳥インフルエンザウイルスに関する報告や、山中伸弥先生のノーベル賞授賞、ヒッグス粒子の発見、NASAの火星探査ローバーが無事に火星に到着したことなど、興味深い科学ニュースが盛りだくさんです。

  • 4月号

    4月号

    米国を超えるアジアの科学技術投資

    日本を含むアジアの10の国と地域が、研究開発投資総額において、2009年にすでに米国に追いついていたことが明らかになった。

    2012年 4月号

  • 5月号

    5月号

    南極の氷底湖についに到達

    南極の氷の底にあるボストーク湖をめざして1990年代から掘削を進めてきたロシアチームが、とうとう、この湖に到達した。

    2012年 5月号

  • 6月号

    6月号

    成人女性の卵巣から幹細胞

    成人女性の卵巣から卵を形成する幹細胞が見つかった。これにより、不妊の新しい治療法や生殖可能年齢の延長への道が開けるだろう。

    2012年 6月号

  • 7月号

    7月号

    哺乳類間で感染する鳥インフルエンザウイルス

    鳥インフルエンザH5N1ウイルス由来の赤血球凝集素(HA)タンパク質をもとに、遺伝子改変インフルエンザウイルスが作成され、わずか4つの変異によってフェレット間で伝播するように変わることが明らかになった。このことは、ヒトでのパンデミックが鳥から生じる可能性を強く示唆している。

    英国式新PhD教育

    英国では大学に博士トレーニングセンターを設置し、将来の研究室運営や学術機関以外でのキャリアに備えた教育が行われている。

    2012年 7月号

  • 9月号

    9月号

    ヒッグス粒子の発見と今後 Free access

    ヒッグス粒子がとうとう発見された。しかし、この粒子のスピンの値を確定したり、約125GeVという質量と整合性のある理論を導いたり、解決しなければならない課題は山積みとなっている。

    2012年 9月号

  • 10月号

    10月号

    火星探査ローバー「キュリオシティー」が無事に着陸!

    2012年8月6日、火星探査ローバー「キュリオシティー」は、複雑な降下過程を完璧にこなして火星のゲール・クレーターに着陸した。科学チームは、まずはローバーをどちらの方向に動かすべきか、検討を始めている。

    2012年 10月号

  • 11月号

    11月号

    幹細胞バンクの構築で治療法開発の道を開く山中教授

    山中教授が、臨床試験に用いる人工多能性幹細胞の備蓄を計画している。

    2012年 11月号

  • 12月号

    12月号

    マウスの幹細胞から卵子を作製 Free access

    幹細胞(ES細胞とiPS細胞)から実験室で卵母細胞が作製された。卵子に成熟させることにも成功し、人工受精で誕生した仔マウスには繁殖能力もある。

    36年目のボイジャー、太陽系の果てを探索中

    初めて訪れた「太陽系の端」は、科学者が予想していた以上の謎に満ちていた。

    2012年 12月号

2011

2011年3月11日に発生したM9.0の巨大地震。この規模の地震が三陸沖で起こり、巨大津波が沿岸を襲うことは、全くの想定外でした。Nature ダイジェスト ではこの年、地震や福島第一原子力発電所事故関連の記事を多く取り上げています。この年、沖縄科学技術大学院大学(OIST)本格始動しました。多くの優秀な研究者が集まっており、学際的研究を推進する旗手として期待がかかっています。なお、1月号から3号にわたって掲載した「フランシス・クリックの手紙」は、『二重らせんの物語』について、その当時のようすが鮮明に描かれており、ご好評をいただきました。興味のある方はぜひご覧ください。

  • 1月号

    1月号

    フランシス・クリックの手紙(上)

    DNAの二重らせんモデルで名高い、フランシス・クリック。彼がワトソンと共に、このモデルを構築するまでの経緯については、既に多くの書籍が出版されている。このほど、そうした経緯を新たに彩るクリックの書簡が発見された。そこからは、『二重らせんの物語』に秘められた登場人物たちの個性と緊迫した微妙な人間関係が、鮮明に浮かび上がってくる。Nature ダイジェスト では、今回初公開となるこれらの書簡について、3号にわたって掲載する。

    2011年 1月号

  • 2月号

    2月号

    古代機械は何を語る

    アンティキテラ島で発見された古代機械。多数の歯車で動き、太陽や月をはじめとする天体の運行の計算に用いられたと考えられている。古代ギリシャ人は、幾何学的宇宙観をこの機械で表現したのだろうか。それとも、この歯車機構からインスピレーションを得て、その宇宙観を発達させたのだろうか。

    2011年 2月号

  • 3月号

    3月号

    女の涙はセックスアピールにはならない Free access

    女性の涙には男性の性的興奮を減退させる化学物質が含まれている。

    2011年 3月号

  • 4月号

    4月号

    Twitterによる審判

    発表された論文が、わずか数日で、ほかの研究者のブログやツイッター上で激しく批判されるケースが増えている。研究者らは、こうした批判にどのように対応するべきか、戸惑いを感じている。

    2011年 4月号

  • 6月号

    6月号

    培養下で哺乳類の精子形成に成功

    未成熟なマウスの精巣組織を培養して、成熟精子の形成に成功した。

    揺りかごから墓場まで―英国コホート研究

    1946年3月。まだ寒さの残る英国で、ある1週間に生まれた赤ちゃん数千人の追跡調査が開始された。そして2011年、赤ちゃんたちは65歳の誕生日を迎えた。これほど大規模なコホート調査(同一集団統計調査)は類を見ず、その科学的価値は計り知れない。

    2011年 6月号

  • 7月号

    7月号

    PhD大量生産時代 Free access

    世界では、これまでにないハイペースで博士号(PhD)が生み出されている。この勢いに歯止めをかけるべきなのだろうか。

    2011年 7月号

  • 9月号

    9月号

    いざ、沖縄へ! Free access

    沖縄は、自由な研究で、日本の学際的研究を推進する旗手となる。

    広がるオープンアクセス出版

    登場から20年近くになるオープンアクセス出版は、緩やかな安定成長期に入った。

    2011年 9月号

  • 10月号

    10月号

    東北地方太平洋沖地震の真相

    3.11東北地方太平洋沖地震の観測データは異例なほどよくそろっているため、早くも、地震前、地震時、地震後の地殻変動の詳細が明らかになってきた。その一方で、地震と津波の危険を評価するためのモデルは、完成にはほど遠い水準にある。

    2011年 10月号

2010

Nature ダイジェスト は、2010年4・5月合併号から書店販売を開始しました。デザインもリニューアルし、新たな科学ニュースマガジンとして生まれ変わりました。特に、世界の中で存在感を高める日本の科学や技術、また科学政策に対して、「世界がどう見ているか」を意識しながら記事選択をするよう心がけています。また、6月号の『「脳トレ」を検証する』など、一般の方々にも馴染みやすく、面白く読んでいただけるようなNews記事も取り上げるようにしています。この年は、「はやぶさ」の帰還に日本中が湧きました。2003年に打ち上げられた「はやぶさ」がさまざまな困難にも負けず、はるか離れた小惑星「イトカワ」からサンプル採取に成功して持ち帰ったことに、多くの方が感動したことと思います。

  • 1月号

    1月号

    新型インフルエンザウイルスに関する3つの重大課題

    H1N1新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)に対して全世界が緊急体制をとっている今、研究者たちも、このウイルスに関する差し迫った問題に答えを出そうと努力している。米国の疾病管理予防センター(CDC)の病理学者たちは、新型インフルエンザウイルスが死をもたらす仕組みを調べている。ニューヨークのある研究室では、感染が広まる仕組みを調べている。フランスのあるバイオセーフティーレベル4(BSL-4)施設では、新型インフルエンザウイルスがH5N1鳥インフルエンザウイルスと遺伝子再集合を起こす可能性を調べている。

    脳外科手術は、脳研究の最前線

    神経外科医はヒトの脳に最も近づくことができる人たちだ。彼らは基礎研究者とチームを組んで、脳の何が「人間らしさ」をもたらすのか、解明しようとしている。

    2010年 1月号

  • 2月号

    2月号

    大きく切られた日本の科学技術予算

    内閣府に新設された政府の諮問機関が科学事業に対する予算の大幅カットを提言したため、日本の科学界は騒然となっている。

    2010年 2月号

  • 3月号

    3月号

    2020年 科学の旅(前編)

    これから10年間、科学はどう展開していくのだろうか。今月号と来月号の2回に分けて、最先端の研究者と政策立案者からの展望を紹介する。

    2010年 3月号

  • 6月号

    6月号

    「脳トレ」を検証する

    パソコンを使った「脳トレ」で知的能力は向上しないという研究成果が発表された。

    DNA鑑定の落とし穴

    DNA鑑定は科学捜査における究極の判定材料だと考えられている。しかし、犯罪現場に残された極めて微量のDNAを同定することに対して、疑問が投げかけられている。DNA鑑定はどこまで信頼性があるのだろうか。

    2010年 6月号

  • 8月号

    8月号

    はやぶさ、帰還する

    小惑星探査機「はやぶさ」は、今後のサンプルリターン・ミッションに貴重な財産を持ち帰った。

    2010年 8月号

  • 12月号

    12月号

    ノーベル化学賞に巧妙なカップリング触媒

    医薬品製造によく使われるパラジウム系化合物を触媒とする 有機合成反応を開発した3人の化学者に、栄誉が授けられた。

    未来のリーダーを育てる10週間

    世界中から選ばれた優秀な学生たちに未来学の思想を教え、世界をリードする人材を育てようとするサマースクールがアメリカ西海岸にある。大胆な主張と、優れた頭脳と、ハイテク装置が出会い、独特の高揚した雰囲気が生まれている。

    2010年 12月号

2009

この年は、気候変動やクリーンエネルギーに関する記事を多く取り上げています。これは、2008年の洞爺湖サミットでの環境・気候変動が主要テーマであり、関連の研究分野が活性化したことによるものです。その他、特殊なライトを当てると毛根、皮膚、血液が緑色に光るサルの画像や映像を覚えている方もいらっしゃるかもしれません。日本の研究チームが、トランスジェニック霊長類の作製に世界で初めて成功したのです。また、中国の研究チームが、iPS細胞からマウスの個体を作製することに成功したのもこの年のことです。

  • 3月号

    3月号

    次世代望遠鏡が約束する新しい眺め

    1609年、イタリアの科学者ガリレオ・ガリレイは手製の望遠鏡で月を見上げた。そのちょうど400年後にあたる今年は、世界天文年である。今後40年間は、既存のどの望遠鏡をもはるかにしのぐ性能を備えた次世代望遠鏡が続々と建設されてくるだろう。Jeff Kanipeがそのうちの4基を紹介する。イラストはLynette Cookによる。

    2009年 3月号

  • 4月号

    4月号

    記憶力のよさは母親ゆずり?

    豊かな生活を送った母親から生まれた子どもは記憶力に恵まれるらしい。

    2009年 4月号

  • 6月号

    6月号

    ジョン・マドックス(1925~2009)

    2009年4月12日に死去したジョン・マドックスは、1966~73年と1980~95年に Nature の編集長を務めた。それまで科学研究の評価の点でもジャーナリスティックな報道活動の点でも、仲間意識や素人くささが抜けなかった Nature は、彼が編集長に就任したことをきっかけにして、挑発的で専門的な学術誌へと大きく変貌した。

    2009年 6月号

  • 7月号

    7月号

    100歳を迎えたレビ-モンタルチーニ女史

    リータ・レビ–モンタルチーニは、間違いなく、20世紀を代表する科学者の一人だ。あえて女性科学者と強調する必要もない。1950年代に彼女が格闘した神経成長因子(NGF)の発見と単離によって、その後の生命科学は、大きな新しい道が開かれた。神経細胞は成長して複雑なネットワークが形成されていくが、「なぜ、どのように?」という根本的な問いかけが、彼女の仕事から始まったのだ。共同研究者S.コーエンとの成果がいかに偉大であったかは、今日隆盛をきわめる脳科学・神経科学が明快に物語っている。いわゆる成長因子はその後、さまざまなものが発見され、それらの受容体も含めて、精妙な細胞間の相互作用の仕組みが解明されつづけている。2人は1986年にノーベル医学生理学賞を受賞した。2009年4月22日に100歳の誕生日を迎えたリータ。戦前に女性が学問の道に進むこと、ムッソリーニの時代にユダヤ人として過ごすこと、アメリカで厳しい研究競争に打ち勝つこと、いずれも想像を超える苦闘があったはずだ。そしていま、イタリアの“国の宝”として尊敬を集め、上院終身議員の地位にある。100歳を超えて現役をつづける彼女の生き方は、私たちに限りない希望と勇気と教訓を与えてくれる。(編集部)

    2009年 7月号

  • 8月号

    8月号

    トランスジェニック霊長類の誕生

    世界で初めて、導入された外来遺伝子を子孫に継承できる遺伝子改変(トランスジェニック)ザルが作り出された。この成果は、これまで限界があったトランスジェニックマウスを用いたヒト疾患治療の研究にとって大きな一歩となるだろう。

    2009年 8月号

  • 9月号

    9月号

    新型インフルエンザウイルスは1918年流行のものと似ている?

    インフルエンザの世界的大流行に1度遭遇すると、その後の大流行に対する防御力が得られるのかもしれない。

    読み書きからナノファブリケーションまで

    2009年4月に開校した新設高等学校、横浜市立サイエンスフロンティア高等学校には、電子顕微鏡やDNAシーケンサーから天体観測ドームまで備わっている。これほど科学設備の整った高校はほかに類がない。ここから未来の科学者が巣立っていくことが期待される。David Cyranoski が取材報告する。

    2009年 9月号

  • 10月号

    10月号

    iPS細胞からマウス個体を作製

    人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、実際に完全な哺乳類個体を作製することに成功した。

    2009年 10月号

  • 11月号

    11月号

    バージェス頁岩発見の歴史

    Charles Doolittle Walcottがカナダ・ブリティッシュコロンビア州のロッキー山脈で大量のカンブリア化石を発見してから、今年で100年。その化石が分類されるまでの多難な道のりを、Desmond Collinsが振り返る。

    2009年 11月号

  • 12月号

    12月号

    顎のない口から顎のある口へ

    ヌタウナギ類とヤツメウナギ類は、顎のない魚-無顎類として、現在まで生き残っているただ2つの分類群である。これらは、進化の謎の1つを解くカギとなるかもしれない。

    2009年 12月号

2008

2008年から、より内容を充実させるべく、これまで28ページだったページ数を36ページへと増やしました。この年は、日本人4人がノーベル賞を授賞するという快挙でした。下村脩先生が「緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と開発」によりノーベル化学賞を、南部陽一郎先生が「素粒子物理学と核物理学における自発的対称性の破れの発見」、小林誠先生、益川敏英先生が「クォークが自然界に少なくとも三世代以上あることを予言する、対称性の破れの起源の発見」により、ノーベル物理学賞を受賞しました。授賞は3人までと決められており、そのすべてを日本人研究者が独占したのは、これが初めてのことでした。なお、2012年にヒッグス粒子の発見という成果を挙げたCERNの「大型ハドロン衝突型加速器」が初稼動したのはこの年のことです。

  • 1月号

    1月号

    自然免疫研究をリードする静かなる日本人

    ノックアウトマウスの「生産工場」を擁する審良静男は、鋭い洞察力と静かな物腰で、世界の免疫学研究をリードしている。日本における最高レベルの研究センターを構築中であり、今、世界で最も論文が引用されている研究者を、David Cyranoskiが訪ねた。

    2008年 1月号

  • 2月号

    2月号

    過剰気味なポスドクの進む道

    ポスドク(博士号取得後の任期付き職)が数千人単位で増え、研究者の余剰という問題に取り組む日本の現状を、Heidi Ledfordが報告する。

    慈善後進国、日本

    日本人は慈善団体への寄付をほとんど行わない。寄付に消極的な日本の風潮を変えようと活動を続ける科学者や患者支援活動家を、David Cyranoskiが取材した。

    2008年 2月号

  • 3月号

    3月号

    大陸棚の延長をめぐる攻防

    海底をめぐる国家間の争いが激しくなってきた。国連海洋法条約に基づく大陸棚の延長の申請期限が迫っている各国は、その根拠として提出するための情報の収集を急いでいる。大陸棚の延長が認められれば、その部分の海底の天然資源を調査し、開発する権利が得られるからである。地質学者や地球物理学者も、この熱狂に巻き込まれている。Daniel Cressey記者が報告する。

    2008年 3月号

  • 4月号

    4月号

    サンゴを死に追いやる日焼け止め

    日焼け止めの成分がサンゴの共生藻類を死滅させる仕組みが明らかになった。

    2008年 4月号

  • 6月号

    6月号

    金融トレーダーの男性ホルモン値が景気を左右する?

    ホルモン値の変動が金融市場での成功に影響しているのかもしれない。

    iPS研究に参入するための基礎知識5か条

    人工多能性幹細胞は胚性幹細胞と瓜二つであるが、作製が容易で倫理上の大きな問題もない。この急激に進展している分野に関して「真」と「偽」を、David Cyranoskiが切り分ける。

    2008年 6月号

  • 9月号

    9月号

    戸塚洋二氏(1942-2008)

    スーパーカミオカンデ共同観測グループを率いてニュートリノ振動を発見。

    2008年 9月号

  • 10月号

    10月号

    二酸化炭素排出ゼロの発電所 - PART1

    現在、全世界の1年間の発電量は1万8000テラワット時に達しており、人類が消費する総エネルギーの40%近くを占めている。発電の過程で排出される二酸化炭素の量は、毎年、10ギガトン以上に上り、化石燃料に由来する二酸化炭素のセクター別排出量の中で最も多い。しかし、二酸化炭素の正味の排出量がゼロになるような発電技術は既に存在しており、太陽光発電や風力発電から原子力発電や地熱発電まで、多岐にわたる。

    2008年 10月号

  • 12月号

    12月号

    共同研究におけるチーム作りのコツ

    成功する共同研究チームはどこが違うのだろうか?巨大なオンラインデータベースとネットワーク分析を使って、共同研究を成功に導くチーム作りのルールを見いだそうとする研究をJohn Whitfield記者が取材した。

    2008年 12月号

2007

今ではすっかり「エコ」な方向に進んでいるF1ですが、2007年8月号の「環境にやさしいF1」の記事を読んでも、この頃から「エコ化」が論じられていることがよくわかります。そして、フジテレビ系の「発掘!あるある大辞典」の納豆ダイエットに関する捏造問題については多くの方の記憶に残っているのではないでしょうか。Nature Digest でもこの問題について取り上げました。そして、日本の叡智を結集した地球深部探査船「ちきゅう」が、初の調査に出たのがこの年です。今では東日本大震災の震源地や南海トラフの調査、海底資源の試掘調査などに大活躍です。なお、2007年、2008年には、スーパーサイエンスハイスクールに関する特集も組まれています。

  • 1月号

    1月号

    ただのゴミだと思ったら・・・

    埋め立て地がゴミであふれるころ、政府には新しいゴミ処理方法が必要になる。プラズマ技術でゴミをエネルギーに変える日本の施設をDavid Cyranoskiが取材した。

    幸福を測る物差し

    幸福とはいかなるものか。アリストテレスの時代から哲学者たちは、この問題に頭を悩ませてきた。科学者、心理学者、経済学者らが現在、この問題にどのように貢献できるのかを、Tony Reichhardtが取材報告する。喜びを数値で表せる段階まで、多少なりとも近づいたのだろうか。

    2007年 1月号

  • 2月号

    2月号

    不正と闘う科学誌

    科学論文の発表における不正行為をなくすための確かな一歩が踏み出された。2006年12月初旬、Science 誌は、今後は一部の「高リスク」論文を対象に、より重点的な精査を行っていくことを表明した。

    幹細胞治療は正しい方向に進んでいる

    幹細胞治療は、損傷したり変性したりした組織を回復させることができる治療法として有望視されている。幹細胞は現在、血液の入れ換えに本格的に用いられており、次は筋ジストロフィーの治療で成功を収めることになりそうだ。

    2007年 2月号

  • 4月号

    4月号

    日本のテレビ番組がデータのねつ造を認める

    マスメディアに対し、自身の研究について話す機会のある研究者らにとって、日本で取り沙汰されている最近のテレビ番組のねつ造事件は教訓となりそうだ。

    2007年 4月号

  • 8月号

    8月号

    環境にやさしいF1

    環境にやさしい自動車レースは可能だろうか?フォーミュラ1(F1)を主催する国際自動車連盟(FIA)のMax Mosley会長は、一般車にも使えるエネルギー効率のよい技術の開発を支援していきたいと考えている。この取り組みをどのようにして進めていくのか。Andreas Trabesinger記者が取材した。

    2007年 8月号

  • 9月号

    9月号

    試された地震国日本の原子力発電所

    原子力発電の将来にとって重大な時期に発生した、柏崎刈羽原発の地震被災。日本の対応は、原子力発電に関する明るい見通しと落とし穴の両方を浮き彫りにした。

    2007年 9月号

  • 10月号

    10月号

    日米に研究室をもつ幹細胞のエキスパート

    多能性の謎を解くため、太平洋を越えて「通勤」する山中伸弥教授。

    2007年 10月号

  • 11月号

    11月号

    震源への船出

    最新の装置を搭載した世界最大の科学掘削船「ちきゅう」が、科学調査のための初航海に乗り出そうとしている。巨大地震が起こる現場(南海トラフ)を押さえようとするちきゅうの船出をDavid Cyranoskiが報告する。

    2007年 11月号

  • 12月号

    12月号

    娘のDNA

    臨床遺伝学を修めたというのに、娘の体の異常がどこから来ているのかHugh Rienhoffにはいっこうにわからなかった。そこで彼はBrendan Maherにこういった。だったら自分で突き止めてやろう。

    2007年 12月号

2006

2006年、Nature Digest のオンライン版をスタートさせました。1月号からは「英語でNature」を開始しています。韓国の黄禹錫(ファン・ウソク)氏によるES細胞関連論文の捏造、日本のRNA研究に関する捏造疑惑が持ち上がったのが2005年の年末から2006年の年初にかけてのことでした。Nature では盛んに論文の捏造問題への対処法が論じられ、Nature Digest でもその記事を取り上げています。なお、2012年にノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥先生が、iPS細胞の作成に成功したのはこの年のことで、「Japanese Author」にご登場いただきました。また、この年の「Japanese Author」にはインフルエンザ研究で世界を牽引する河岡義裕先生にもご登場いただいています。

  • 1月号

    1月号

    中国における知的財産権

    中国の特許権に対する取り組みが大きな転換期を迎えている。David Cyranoskiが報告する。

    2006年 1月号

  • 2月号

    2月号

    自然災害が引き起こす大混乱

    この1年あまり、世界各地で自然災害が猛威をふるった。そして、その規模はこれからも拡大し続けると一部で予想されている。今後、大災害による被害増大が予測される世界の諸地域について、Quirin Schiermeierが検討した。

    2006年 2月号

  • 3月号

    3月号

    科学論文誌はねつ造論文を取り締まるべきか?

    科学論文誌の編集者たちは、査読で意図的な研究結果のねつ造を発見できるとは考えていない。しかし、スキャンダルは続いており、論文誌はねつ造論文を見つける方法を模索している。Emma Marrisが取材した。

    はやぶさを越えて

    日本の小惑星探査機「はやぶさ」は、遠く離れた小惑星のサンプルを地球に持ち帰る計画だった。しかし、サンプル回収という面では失敗に終わりそうだ。日本の宇宙開発は苦闘の途上にある。今回の経験は、日本の宇宙開発にどのように影響するのだろうか。冬野いち子が報告する。

    遺伝子からワクチンまで、インフルエンザウイルス研究で世界をリードする(河岡 義裕)

    東京大学医科学研究所の河岡義裕教授は、インフルエンザウイルスの研究で世界をリードしている。1999年にインフルエンザウイルスの人工合成法を開発し、つい最近では、インフルエンザウイルス増殖時の内部構造について発表した。日本とアメリカ、カナダを股にかけて活躍する河岡教授に、インフルエンザ研究の現状と今後についてうかがった。

    2006年 3月号

  • 5月号

    5月号

    ロンドンの惨事と「スーパー抗体」

    ロンドンの病院で今年3月、臨床試験に協力した6 人の健康な男性が多臓器不全で集中治療室に運ばれ、2人が危篤、4人が重症となる事件があった。この惨事の原因は、投与された薬そのものにあったことが明らかになった。いったい何が問題だったのか、この「スーパーアゴニスト」抗体による治療に将来はあるのか。Michael Hopkinが取材した。

    2006年 5月号

  • 6月号

    6月号

    核のゴミ捨て場の作り方

    世界の原子力発電の将来は、各地域の政治状況に左右されることになるのかもしれない。Geoff Brumfielが報告する。

    2006年 6月号

  • 8月号

    8月号

    1つの幹細胞から生まれた卵と精子

    技術の進歩によって、不妊で悩む人にも子どもができるようになるかもしれない。

    2006年 8月号

  • 11月号

    11月号

    宇宙のゆらぎを検出してノーベル物理学賞

    宇宙論を精密科学へと引き上げるきっかけとなった観測。

    ありふれた皮膚の体細胞から多能性幹細胞を作り出す(山中 伸弥)

    京都大学再生医学研究所の山中伸弥教授たちは、皮膚などにあるありふれた線維芽細胞にいくつかの遺伝子を導入することで、胚性幹細胞によく似た人工の多能性幹細胞を作り出すことに成功し、Cell 誌に発表した。この成果は世界中の幹細胞研究者が待ちわびていたもので、Nature 誌のErika Check記者は「山中はホームランを打ったようだ」とのコメントを出した。その山中教授に研究の経緯や今後の課題などについて、話をうかがった。

    2006年 11月号

2005

2005年、Nature月刊ダイジェスト は、Nature Digest と名称を変更し、付録から1冊の雑誌として独立しました。新セクションとして、オリジナル記事「Japan News Feature」、12月号からは「Japanese Author」をスタートさせています。この年には、初めてH5N1鳥インフルエンザのヒトの感染例が報告されたこともあり、鳥インフルエンザ特集を組みました。また、岐阜県神岡町のカムランドで、地球内部起源のニュートリノ(地球ニュートリノ)の観測に世界で始めて成功したことが、大きな話題となりました。ヒトとチンパンジーの塩基配列の違いは1%程度しかなかったというニュースが記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。チンパンジーのゲノムが解読され、Nature に報告されたのもこの年のことです。

  • 1月号

    1月号

    巨大な「炭素市場」が動き出す

    二酸化炭素などの温室効果ガスを企業が排出することを認める、排出権の売買がすでに始まっている。温室効果ガスを吸収するように計画されたプロジェクトで利益を得る企業も現れている。こうした排出権取引市場が活況を呈すれば、二酸化炭素の排出量を本当に減らすことができるのだろうか。Michael Hopkinが報告する。

    2005年 1月号

  • 4月号

    4月号

    拉致をめぐる日朝間の対立で燃え上がるDNA論争

    火葬された遺骨が1977年に拉致された日本人のものかどうかを判定する際に用いられたDNA鑑定をめぐって日本と北朝鮮の間に激しい論争が起こっている。

    最近まで活動的だったことを示す火星の画像

    火星探査機マーズ・エクスプレスに搭載された高解像度ステレオカメラによって撮影された画像から、火星の表面は水や溶岩や氷の流れによって、わずか数百万年前に形成されたことがわかった。

    2005年 4月号

  • 5月号

    5月号

    「百科事典」革命

    2001年1月、ウェブのパワーに刺激を受けたJimmy Walesは、仲間とともにオンライン百科事典「ウィキペディア」を立ち上げた。ウィキペディアとは、数多くの人々のコラボレーションによって多言語のリファレンスツール(事典)を作り上げるというプロジェクトである。ウィキ技術という自分のウェブサイト以外の特定のサイトをユーザーが自由に修正するための技術を利用して、ウィキペディアの特定のページを修正したり、まったく新しいページを加えたりしていく。news@nature.comの記者Roxanne Khamsiが、サンディエゴ(米国カリフォルニア州)で開催されたオレイリー社のEmerging Technology会議に出席していたWalesにインタビューした。

    2005年 5月号

  • 7月号

    7月号

    鳥インフルエンザ:備えはOK?

    東南アジアでやっかいな問題が起こっている。

    薬の備えは万全か?

    インフルエンザが世界的に流行した際に犠牲者の数を減らせる薬は確かに存在する。とはいえ、各国の備蓄量はあまりにも少なく、また、危機が目前まで迫っている国々での備えが最も遅れているのが現状だ。Alison Abbottが報告する。

    2005年 7月号

  • 8月号

    8月号

    中国の燃える野望が地球環境を脅かす

    中国の経済発展は、世界最多の人口を抱えるこの国を変ぼうさせている。しかし、エネルギー不足と環境汚染の激化が、奇跡の発展をはばむ課題として浮上してきた。とくに環境への影響は、地球全体の気候を大混乱に追い込む危険性もはらんでいる。Peter Aldhousが報告する。

    2005年 8月号

  • 10月号

    10月号

    チンパンジーゲノムの概要配列が完成!

    これまでに、一見、ヒトと大きく異なっているように見える生物が、実は驚くほど似ていることが、ゲノム配列情報によって数多く明らかにされてきた。

    2005年 10月号

  • 11月号

    11月号

    研究助成金を受け取るまでの悪夢

    自分の仕事の嫌なところを1つ挙げてもらうと、研究助成金の申請手続きだという科学者が多い。この手続きがそれほどに挫折感を抱かせるのはなぜか。どうすれば事態は改善されるのか。Nature の記者たちが研究者に問いかけた。

    2005年 11月号

  • 12月号

    12月号

    地震警報の発動をスピードアップ?

    地震発生の瞬間にその規模がわかるかもしれないことが、データの分析でわかった。

    2005年 12月号

2004

2004年、Nature 日本語版付録として「Nature月刊ダイジェスト」が創刊となりました。この年の記事を振り返ってみると、核や原子力についての記事を多く取り上げています。そのほか、DNAの二重らせん構造を発見したフランシス・クリックが逝去したこと、インドネシアのフローレス島で小型のヒト族「ホモ・フローレシエンシス」が発見されたことなども話題になりました。なお日本では、富士山のハザードマップが作られており、記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。今でこそゲノムの解読が容易になってきていますが、ラットの全ゲノムが解読されたのはこの年で、まだ当時は、ゲノム解読が難しい技術であったことがわかります。

  • 1月号

    1月号

    ライバルを出し抜け― 熾烈な研究競争

    細胞生物学や分子生物学などの競争の激しい分野では、第2位でゴールインした者に与えられる栄誉はない。しかし「ホット」な結果を一番に発表することに対する圧力は、科学の進歩をゆがめてはいないだろうか。激化する競争の現状をHelen Pearsonが報告する。

    果てを越えたか?

    2機のボイジャー探査機は太陽系の境界の外側に向かって飛び続けている。そして、今回ボイジャー1号が太陽風の「端」、つまり末端衝撃波面(termination shock)に遭遇した可能性がある。しかしこれには異論がないわけではない。

    2004年 1月号

  • 4月号

    4月号

    富士山 眠れる巨人の身震い

    富士山は日本文化のひとつの象徴であり、地質学的にも最も重要な日本の特徴となっている。しかし、数年前に富士山で地震が頻発するようになるまで、科学者たちは富士山にほとんど関心を払ってこなかった、とDavid Cyranoskiは言う。富士山は再び噴火しようとしているのだろうか。

    2004年 4月号

  • 5月号

    5月号

    ルネサンス時代を迎えたラット

    ラットはそのゲノム配列が明らかになり、遺伝子工学によって新たな系統ができると期待され、研究者のお気に入りの実験動物として名誉ある地位を回復しつつある。Alison Abbottが、この素晴らしい齧歯類(げっしるい)について紹介する。

    2004年 5月号

  • 6月号

    6月号

    月と火星の探査はロボットとともに

    ブッシュ米大統領は、月面基地を建設し、火星に人間を送るという大胆な将来構想を打ち出した。だが実現させるには、宇宙飛行士はさまざまな作業をロボットに助けてもらわなければならないだろう。米航空宇宙局(NASA)にはその技術があるのだろうか。Tony Reichhardtが報告する。

    2004年 6月号

  • 7月号

    7月号

    原子力に夜明けは来るか?

    地球温暖化とエネルギー需要の増大で、原子力が見直されている。しかし、原子力がエネルギー源として確固たる地位を占め続けるためには、さらに安く、クリーンで、安全なものにならなければならない。Declan Butlerが報告する。

    2004年 7月号

  • 10月号

    10月号

    クリック博士の遺志を引き継ぐ

    フランシス・クリックは、物事を極めて深く考える生物学者の一人だった。今、生物学の世界は、彼の死を悼んでいる。クリックが1970年に発表した未来学の小論文には、彼の先見の明が示されており、今日の理論研究者にとっての課題が示唆されている。

    ある日、私は「スパイ」になった

    芹沢宏明は米国に渡り、前途有望な生物学研究者として順調に実績を積んでいた。しかし、彼の研究者人生はある日突然、めちゃくちゃになった。親切心で友人に協力したことが、日本を利するための産業スパイ行為だったと米連邦捜査局(FBI)にみなされたのだ。事の顛末をのDavid Cyranoskiが聞いた。

    2004年 10月号

  • 11月号

    11月号

    インドネシア東部のフローレス島で出土した新しい人類化石の考古学分析と測定年代

    東インドシネシアのフローレス島にある石灰岩でできた大きな洞窟、リアン・ブア(Liang Bua)の発掘研究から、小柄なヒト族(Hominini)の化石人類集団がいたことを示す証拠が得られ、解剖学的見地からこの人類は独立種とするに十分な特徴を備えており、新しい種、Homo floresiensis(ホモ・フローレシエンシス)に分類された。

    2004年 11月号

  • 12月号

    12月号

    「予知」の封印を解く

    米国の地震研究者たちは長い間、「予知」という言葉を避けてきた。しかし、観測データの質が改善されたり、一般の認識が変化してきたりして、研究者のそうした決心も揺らぎ始めている。David Cyranoskiが地震予知をめぐる議論を追った。

    2004年 12月号