2007年2月号Volume 4 Number 2
Editorial
News
不正と闘う科学誌
科学論文の発表における不正行為をなくすための確かな一歩が踏み出された。2006 年12 月初旬、Science 誌は、今後は一部の「高リスク」論文を対象に、より重点的な精査を行っていくことを表明した。
News Feature
動物実験をめぐる賛否のはざまで
動物実験について多くの研究者は、研究者ならではの微妙な意見をもっている。しかし、この問題を取材したEmma Marris によれば、研究者たちの声が表に出てくることはめったにないという。
Author
暗視カメラの顕微鏡版を作ってナノの世界を探る
サーモグラフィーの発想自体は新しいものではない。この技術を利用した暗視カメラは、物体が発する赤外線を検出して画像を生成するカメラである。Nature2006 年12 月7 日号(740 ページ)掲載の論文の著者であるYannick De Wilde は、この発想を一歩進めて、物質の表面から自然に発せられる赤外線を検出して画像を生成する顕微鏡を作り、原子サイズの世界を探ろうとしている。
Japanese Author
遺伝子からのニパウイルス合成に世界で初めて成功(甲斐 知恵子)
東京大学医科学研究所の甲斐知恵子教授らはリバースジェネティクスの技術を確立し、ニパウイルスの人工合成に世界で初めて成功した。ニパウイルスは、1994 年マレーシアに突如として現れた。以来、アジア各地で小さな流行を繰り返し、致死率が高い。今回のウイルス合成によって、病原性を発揮するメカニズムの解明やワクチン開発が進むと期待されている。
News & Views
幹細胞治療は正しい方向に進んでいる
幹細胞治療は、損傷したり変性したりした組織を回復させることができる治療法として有望視されている。幹細胞は現在、血液の入れ換えに本格的に用いられており、次は筋ジストロフィーの治療で成功を収めることになりそうだ。
Business News
目標はどこまでも高く
英国の大学から生まれた1 つの企業が、小型衛星メーカーとして確固たる地位を築き、さらなる飛躍を目指している。けれども、その前途には、多くの試練が立ちはだかっている。Geoff Brumfiel が報告する。
Japan News Feature
ロボット大国日本の新潮流
人と共存し、人の暮らしをサポートするロボットの開発が進んでいる。病人の心を癒すアザラシ型ロボットや、歩けない人を歩けるようにサポートするロボットスーツなど、最先端の研究現場を取材した。
News
長江の汚染で、カワイルカがついに絶滅?
中国の河川では魚の乱獲と船の騒音が水生哺乳類を死に追いやっている。
Snapshot
胎内の眺め
これは、見えざる世界の扉を開き、母なる大地ならぬ母なる胎内に息づく、ゾウ胎児の姿を捕らえた超音波スキャン画像である。画像は見やすいようにCGで調整してあり、写っているゾウ胎児は体重75 kg で、すでに足蹠部(足の裏部分)や長い鼻ができあがっている。
英語でNature
半水生哺乳類による水中での「匂い嗅ぎ」
モグラやモグラの仲間たちは非常に代謝がよく、しょっちゅう餌を食べていないと死んでしまいます。そのため水辺にすむモグラは、土や泥の中だけでなく、水の中でも餌を探しやすいような体の形状や機能を備えています。 今週は、北米にすむホシバナモグラとミズベトガリネズミが、水中で器用に匂いを嗅いでいることを報告した論文を取り上げます。全体の長さが短く、論理の展開が明快なので、語句解説や写真を参考に挑戦してみましょう。
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