2012年1月号Volume 9 Number 1

黒死病の全ゲノムが解読された

14世紀半ばのヨーロッパでは凶悪な「黒死病」が蔓延し、膨大な死者が出た。例えばロンドンでは、当時の市民10万人のうち、約1/3が死亡したとされる。この黒死病が何であったのか、これまでさまざまな研究が行われ、「ペスト説」が有力視されてきたが、確定したわけではなかった。今回、ロンドン塔付近の教会の墓地だった場所から発掘された遺骨をもとに、最新の次世代シーケンサー技術によって、当時流行したペスト菌の全ゲノムが解読された。なかでも驚きは、ペスト菌が今日まであまり変化(進化)していないこと、凶暴であった理由が見当たらないことだ。

Editorials

領有権争いの一方的な政治地図を、科学論文の中に紛れ込ませてはならない。研究者は、研究から政治的要素を取り除き、国家間の友好関係を維持するよう配慮すべきだ。

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News

最後の氷期以降に起こった大型動物の大量死は、さまざまな要素が重なったためであることが明らかに。

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ノルウェーの研究チームにより、 新たに福島第一原発事故で大気中に放出された放射性物質の総量が計算され、 政府が6月に発表した推定放出量よりもずっと多いという報告があった。

米国の財政赤字削減策の1つとして、連邦機関から研究助成金を受給している生物医学研究者の給与の上限が引き下げられるかもしれない。

マラリアは人類最大の敵とも言われ、今なお年間200万人が死亡するとされる。病原体はマラリア原虫で、キニーネなどの治療薬があり、蚊が媒介することもわかっているが、原虫が潜伏場所を変えること、耐性マラリアの登場、人間の免疫系と複雑な相互作用をすることなどにより、なお克服できないでいる。「マラリアが撲滅できたらノーベル賞」と言われながら、80年以上もマラリア関係でノーベル賞は出ていない。こうした中で、まだ完成を見ていないが、ワクチン開発が大きな課題となっており、そこから今回の出来事が起きた。臨床試験の途中で未完のデータを発表することに対して、専門家は疑問を呈している。(編集部)

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News Features

メコン川の主流に複数のダムを建設する計画が進められており、流域の環境に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。科学者たちは、環境影響評価が終わるまで、建設を延期するよう望んでいる。

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Japanese Author

半導体デバイス、マイクロマシン、ナノテクなど微細な世界の操作を得意とする日本。これらのノウハウを医療の場でも応用すべく、その基盤作りとして「ナノメディシン分子科学」のプロジェクトが始まった。高分子材料科学が専門の京都大学再生医科学研究所の岩田博夫所長は、これまで人工膵臓の研究開発を続けてきており、今回のプロジェクトにおいて「多点の弱い相互作用を利用した分子、細胞の制御」の研究代表を務める。いったいどんなアイデアで細胞を制御しようとしているのだろうか。

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News & Views

日本人に多い「福山型」の筋ジストロフィーが、予想外のスプライシング異常で発症することがわかった。さらにこの知見に基づく治療法に関して、マウスで有望な結果が得られ、患者にとって希望の光となるかもしれない。

ナノメカニカル共振器、つまり機械的な共振を起こすナノスケールの素子を、レーザー光を使って最低エネルギー状態にまで冷やすことに米国の研究者らが成功した。これにより、量子力学の原理を検証したり、量子情報処理に応用したりする道が開かれた。

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News Scan

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