Press Release

3種類の自己免疫疾患に共通する遺伝子スイッチ

Nature Genetics 35, 4 doi: 10.1038/ng1267

これまで長い間にわたって、各種自己免疫疾患には共通の原因があり、疾患に対する個々人の相対的感受性を決定する特定の遺伝子群があるという学説が提唱されていた。Nature Geneticsの12月号に掲載された2つの論文では、この学説の正当性が実証され、各種自己免疫疾患に共通する根本メカニズムに関する手がかりが示されている。

第1に、ワシントン大学(米国ミズーリ州セントルイス)のAnne Bowcockたちの論文では、乾癬に対する感受性の原因となる遺伝子スイッチの欠陥が特定されたことが報告されている。乾癬は、原因不明の慢性炎症性皮膚疾患で、先進国では50人に1人が発症している。

「乾癬に関係する人々が、この重要な研究の進展に希望を見出しています。特に私たちの財団のメンバーは、この重大な研究と発見のためにBowcock博士たちが利用したTissue Bankを創設し、その事業開始資金を提供できたことに満足しています。」こう語るのは、全米乾癬財団(National Psoriasis Foundation)の会長兼CEOのGail Zimmermanだ。

第2に、理化学研究所の山田亮たちの論文では、関節リウマチに対する感受性の原因となる遺伝子スイッチの欠陥が発見されたことが報告されている。関節リウマチは、関節内層の慢性炎症性疾患で、全世界で最大100人に1人が患者だとされている。関節リウマチの原因は判明していないが、遺伝要因と環境要因が両方とも関与している。関節リウマチ患者の兄弟姉妹が関節リウマチを発症する相対リスクは一般人の2〜17倍高くなっており、関節リウマチに対する感受性に遺伝要因が強く影響していることを暗示している。

以上の研究結果と昨年Nature Geneticsに掲載された狼そう(SLE)に関するMarta Alarcon-Riquelmeたちの論文(32, 666-669)を考え合わせると、自己免疫疾患全てに共通の根本メカニズムが存在するという学説が正しいように思われる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度